出力操作のコツ
宿屋に着くと、宣言通りノンが待っていた。
「遅いですよー。なんか食べましょう。おなかペコペコです」
「ああ、そうだな。朝から何も食べてねえし」
毎度、料理を食べるときに隆二は思う。
この世界にはもう少し美味しい食べ物はないのか、と。城下町で売っている干し肉は美味しかったが、その他で美味しい物はなかった。決してまずいわけではなく、なんとも言えない味なのが反応に困る。
ちなみに今回食べているのは焼き魚だ。普通に思えるが、何か薄い茶色?みたいなソースがかかっている。
「おいしいですね、これ!明日もこれ食べようかな~」
隆二の正面でそれを食べているノンは本当に美味しそうに食べている。
少し疑いながらも、ノンを信じて隆二も焼き魚を食べている。
「ん……。び、微妙だな………」
ノンには聞こえないように小さな声で呟いた。
この料理もまた、まずいわけではないが、美味しいわけでもない。
というか素材、つまり魚の方は多分いい物を使っていると思う。
それをソースが台無しにしている、とも言い難い。絶妙に1部分が絡まっている気もしてならないからだ。
最初から『この世界』の住民であるノンが美味しそうに食べているということは、慣れてくるとこれが美味しく感じてくる時がくるのかもしれない。
「さて、俺は行く場所があるけどノンはどうする?」
食事を終えて、2人でくつろいでいる時に隆二はそう切り出した。
「どこ行くんですか?」
「会いに行く人がいてな。さっき聞きそびれちまったことがあるんだよ」
「ふーん………。暇だし私も付いていきます」
ノンの返事を聞き、ゴールドを机に置いて宿屋を出る。
歩きながらノンは隆二に質問する。
「誰に会いに行くんですか?」
「『情報屋』っていうヤツだ。さっきも会いに行ったんだが、もう1個の『用事』ですっかり忘れちゃってな」
ノンはこれをふーん、と言って流したが、隆二はノンの為に情報屋に情報開示の交渉をしていたのである。
数分歩くと、隆二には見慣れた路地裏に着いた。
「ここだ」
「なんか…、不気味ですね。というか薄汚い?です」
「言ってやんなよ。ここにソイツはいるんだから。遠回しに不清潔ってことだぜ」
路地裏に2人の歩く音が響く。
そこに座っている人影に隆二は話しかけた。
「さっきぶり」
人影は隆二を見て少し驚いた様な雰囲気を出したあと、
「どうしタ?またあの話カ?それとも別の話かナ」
「別の話だ。何ゴールド払えばいい?情報屋」
「話を聞いた後かナ」
立ち上がって顔を突き合わせたノンは、隆二の隣にいるノンに目を止める。
「ン?この子が今回のお客様カ?」
「違う、いつものごとく俺だ。ちっとばかし、ステータスのことについて聞きたいと思ってだな」
「じゃア、10デ」
「ほい」
隆二は10ゴールドを袋に入れて情報屋に渡した。
その手慣れたような作業を置いてけぼりのノンはポカーンと見ていた。
「ほら、ノン。コイツが情報屋だ」
突然隆二に自己紹介を促されたので慌てそうになりながらも、冷静さを保ちながら言う。
「ノン・マティスです。リュウジさんと一緒に行動しています」
「おウ!よろしくナ、情報屋ダ。本名は訳あって、非公開ダ。なにか知りたいことがあったらいつでも頼ってくレ。ゴールドさえ払ってくれれば答えるゾ」
「は、はあ」
情報屋という者と初めて接触したノンは、いまいち理解できなかったが使うこともないと思うので、よしとした。
「デ?ステータスで聞きたいことってのハ?」
「もし、俺の攻撃力が10000だったとして、この攻撃力は攻撃した時に全て反映されるのか?」
「本当にステータス通りの出力が出ているのか怪しいってことだナ?」
そう言うと情報屋は少し考える素振りを見せた後、
「ちょっと難しいところだガ……。簡潔に答えれば本当にステータス通りの出力が出ているか、と問われると答えはノー、ダ。人間ってのは無意識的に自分が出す攻撃やらの上限を決めていル。『本気で殴る』とか頭ん中で考えていたとしても、ステータス通りの出力が絶対に出るとは言い難い。まあ、戦闘中に本当に危ないと察知したのなら、勝手に本気が出てくれると思うゾ」
「出力は操作できない、ってことか?」
「できないことはないと思うガ……。『殴る』という1つの動作を取ると、力の入れ方次第で出力は変わル。まあ、大まかにだがナ。力いっぱい拳を握っても、出力が足りないってんなら、そいつは君が敵に遠慮しているからじゃないのカ?」
「遠慮だと?」
自分の命や仲間の命を狙ってくる敵に、果たして自分が手加減をするのか。
隆二のそんな考えも見据えていたかのように情報屋は続ける。
「無意識的に人間は上限を決めていると言っただロ?君も敵が必要以上に怪我を負ったり、死なないように無意識的に出力を抑えているんじゃないカ?」
自分が無意識的に行っている出力の増減をどうやって自分で調べればいいのか、と隆二は思ったが知りたいことは知れた。
怪しいところはあるが、なんだかんだ言ってこの情報屋は優秀だと隆二は感じた。
「そうかもしれない。少しこっちで色々試してみるよ。情報ありがとう」
「毎度」
ノンを連れて、隆二は路地裏を出た。




