再接触
ベルファントからテレポートでステルダム国に戻った隆二とノン。
「俺はちょっと寄る場所があるから、お前はギルド本部近くの宿屋を借りておいてくれ」
「はい。わかりました。宿屋の前で待っておきます」
数分歩くと目的の場所に到着した。
太陽の光が微かに当たる、少し薄暗い路地裏。
「よお。数日ぶりだな、『情報屋』」
路地裏に腰かけていた人影に話しかけると、聞いたことのある声が返ってきた。
「お久~。お望みの物は手に入れたかネ?」
「『限界突破』は別に俺が望んでいたわけじゃない」
「でもあっただろウ?歴史ってのは時間の経過とともに間違った情報が受け継がれてゆくのサ」
よっと、と言って立ち上がると情報屋は隆二を指差して言った。
「まさかその報告をするためにわざわざ来たわけじゃないだろウ?」
「意外とあっさりしてるんだな。てっきり限界突破を見せてくれとでも言うかと思ったが」
「そう簡単に、重要な物を見せる輩じゃないだろうウ、君は」
「まあな」
ただでさえ不気味な路地裏にさらに重い空気が漂う。
2人から発せられる気配が異様な物へと変わる。
「知りたい情報はある。それをお前が教えてくれるかどうかは別だがな」
「できる範囲でネ」
情報屋がそう答えた時、隆二の手が腰に伸びた。
握っていたのは短剣。
見る者が見ればわかる、ハルパーというものだ。
隆二がルイス・ハーンから奪った武器だ。
隆二はその剣を一瞬で情報屋の首に突き付けた。
「返答次第ではこっちも躊躇しねえぞ。知っていることを全て話せ。テメェが関わっていることはもう明らかだろう」
フードの奥から、光の反射によって光っている目が隆二を見ながら言った。
「どうしテ?」
「お前が未来を予知するスキルとかを持っているなら話は別だが、そうじゃないとしたらお前は『黒』だ。あの時点で俺が限界突破が必要になることは予想できないはずだからな」
「そうだナ。だが、証拠は?君の行く先々に私が手回しをしていると説明できるカ?」
短剣を情報屋に向かたまま、隆二は悔しそうに言った。
「それについては一切の証拠はない。敵ももうどこかに行ったからな」
「じゃあ、私を『黒』と決めつけるのは早イ」
「そうだな。だけど」
隆二が剣を持っている方の腕を下ろした。
「守らなきゃいけないモンができたんだ。初めてだから、何をどうすればいいのかもわかんねえ。でも、あいつの為にできるだけ安全を確保するためには、お前の知っている情報が必要なんだ」
両親も早くに他界した隆二には、『守るモノ』がなかった。
家に帰り、待っているのは殺風景な部屋。名目上の保護者である親戚は1年に1度くらいしか家に来ない。別に、両親が生きていたとしても守られるはずの存在であっただろうが、親を守りたいくらいの気持ちは持っただろう。
そんな彼に共に行動する仲間ができた、ということは安全を確保するのは当然だろう。元戦闘職というのもあって、警戒心が強い彼なら当然しないと気が済まないだろう。
「そうカ。守るモンができたのカ。そりゃあ、不安だろうが取りあえず私の情報を信じておケ。嘘は言わないし、騙すつもりもなイ」
「今回のことは大目に見てほしいってことか?」
「もみ消すつもりはないガ、私は言わないゾ。互いに無駄な時間を消費するだけダ」
隆二は腰にハルパーを戻した。
どうやら短剣用の鞘があるらしい。
後ろを振り返り、町中に歩き出しながら隆二は言った。
「なら、諦めるよ。アンタを一時的にだが、信じる」
「信頼を得られてなによりダ。またのお越し待ってるヨ」
(結局、情報らしい情報も得られなかった。だが、確かに情報屋が何らかの形で関与していることはわかった)
ノンの待つ宿屋へ足を進めながら隆二は思考を凝らす。
(何らかの形ってのが分かれば、全体像が見えてくるんだと思うんだけどな)
1つ、思い付いたことがある。
その、何らかの形での関与がもし、『隆二に情報を流すことで、隆二を操る』だったらどうだろう。
情報屋は『嘘は付かない』と言った。
しかし、その情報が本物だったとしてもその情報の行きつく先が安全とは限らない。
つまり、情報屋が教えた情報通りに隆二が動くと、なんらかの事件に巻き込まれるかもしれない、ということだ。
(これは1回、試してみるか)




