朝の事件
朝起きると、ノンが隆二を抱き枕のように抱きしめながら寝ていた。
「…………………冷静に考えよう」
隆二は仲がいい女子がいたかと問われれば幼馴染くらいだが、それでも高校生になってまで毎日話しているわけでもなく、最近はもう1か月に1回話すかどうかくらいだったので、異性と触れ合う機会が極めて少なかった、というか無かった隆二は現在の状況を冷静に考える。
ちなみに、隆二は元から女子には興味がない男なので、この状況を心底喜ぶような男ではない。
どこが問題かというと、ノンは背も隆二よりかなり低く言われれば小中学生に見えなくもない、というか見えるのでそういう年頃の女の子と寝ているということは、いささか問題なのである。
まあ、誰が見に来るわけでもないのでいいのだが、隆二がこういうのに慣れてなにのもあり、早急にこの状況を脱することが重要だ。
丁度いい時間だしついでに起こそうとノンの肩を揺すった。
その時。
キィ…!という音を立ててドアが開かれた。
「師匠!ノンちゃん!朝です……よ………」
入ってきたエミリーが隆二とノンを見て固まる。その後に入ってきたテミスも同様に固まった。
「どういう、状況ですか?」
「まさかリュウジさんが、ロリコンだったとは……」
エミリーは段々と顔が赤くなってきている。テミスにはありもしない疑惑を抱かれた。
人間とは本当にピンチな状況になったときには凄く冷静になる、というのを隆二は聞いたことがあった。
現在の隆二の状況がまさにそれであり、この期に及んで彼は、この世界にロリコンなんて言葉があるんだ、などと考えているわけである。
「ロリコンじゃないから。そして、ノンと一緒に寝ているのは部屋が空いていなかったからだ」
とりあえず、釈明をするためにありのままを話す。
「そうだったんですね。なら、師匠が床で寝ればよかったんじゃないですか?」
どす黒い笑みを浮かべながら、エミリーが問い掛けた。
「い、いやノンに一緒に寝ようって言われて…」
「それで?その提案を受けたと?」
「は、はい」
テロ集団やら暴力団と渡り合ってきた隆二でも、今のエミリーには体が震えるほど恐怖した。
数秒睨んでいたエミリーはやがて、は~、というため息をついたあと、
「もういいです。今回は見逃します。今日は城に急いで行かないといけませんから」
許してもらった?というより、見逃してもらった隆二は緊張が解けて、思わずため息が出た。
ちなみに事の発端であるノンは、むにゃむにゃと安らかに眠っていた。
「おい。ノン起きろ」
「んーあともうちょっとー……」
寝坊助の代名詞のような台詞を言うノンを見て隆二は、
「ぬがあああああ!!」
「いやあああああ!!」
布団を剥ぎ取り、放り投げる。布団を奪われたノンは、ベットの上でうずくまる。
「ほら!!早く起きろ!!」
「嫌です!!もう少しだけ寝させて!!」
このようなやり取りが数分続いた。
寝坊助を叩き起こし、朝食を食べ終えた隆二達は、城に到着した。
「お待ちしておりました」
そこで待っていたのは、昨日エミリーとテミスとノンに接触した、ストラスフォード国騎士団団長キエル・デュランダだった。
「あれ、これだけなのですか?関わった人たちは」
「そうです」
「意外と少ないんですね。結構ド派手な戦闘だったので、もっと人数がいると思っていたのですが」
そう言った後、キエルに連れられ城内を歩く。
城は廊下一面に赤いカーペットが引かれており、壁には絵画やろうそくなどがあった。
ザ・城!という具合の廊下を珍しそうに隆二とノンは歩いていると、目的の場所に着いたのか、キエルがあるドアの前で立ち止まる。
「この部屋の中にはストラスフォード国とステルダム国の王がいるので、勝手な言動は謹んでください」
特に隆二とノン、一般人を見ながら言った。
「さて、では入りますよ」
キエルの言葉に、ノンは身だしなみを整えた。




