77話 さようなら
俺は色乃が言った言葉を理解出来ずにしばらく固まっていた。すると色乃は再び声を出した。
『私は沢山の人に迷惑を掛けすぎたの・・・・・・だから今あの町にいることは出来ない』
そして俺はやっと色乃の言葉に思考が追いついた。
『な、何言ってるんだよ!せっかく呪いが解けてこれからじゃないか!』
『解けたと言っても本当かどうかまだ確実じゃない。それに何もなかったとはいえこの前起こったあの状況を皆記憶している。きっと私の呪いを知っている人がそれを聞いたらあれは私のせいだと言うに違いない』
確かにテレビや新聞では今もあの事件で持ちきりだった。
『ちゃんと説明すれば皆わかってくれるよ!だから』
『典貴君がそう思っても人の心なんて絶対じゃない。私を知っている人が一人でも違って今回のことを話せばきっとあなたにも迷惑が掛かるから・・・・・・だから私は一度この町を離れる』
『俺のことなら心配するな!何があっても大丈夫だから』
『私のことを全く知らない土地で呪いが間違いなく消えているとわかるまでここには戻らない!』
色乃は決して首を縦に振ることはなかった。
俺は町へ帰るとすぐに光馬の元へ急いだ。そして色乃との話を話すと
『たぶんそうした方がいいだろうな』
『お前まで何言ってるんだよ!これじゃ意味ないじゃないか!』
俺がそう言うと光馬が俺の胸ぐらを掴んだ。
『だから尚更ここは一度離れた方がいいって言ってるんだよ!色乃の気持ちも考えてやれよ!彼女がどんな気持ちでこれを言い出したと思ってるんだ!お前と同じかそれ以上に彼女も辛いに決まってるだろう!それでも離れるって言ったんだ!それがわからないようじゃお前はもう彼女の側にいる資格なんてねーよ!』
光馬は言い終わると俺から手を乱暴に離した。
『話は終わりだ』
そう言って扉を強く閉めた。俺はもう何をどうしていいのかわからずにいた。
何もわからずそのまま家に着いた。家に着くと母さんが出迎えてくれた。そして俺の顔を見るなり呆れた顔をしたのだ。
『何悩んでいるの!お母さんが聞くから話なさい!』
俺はもう誰に相談していいのかわからなかったので、そのまま今の状況と気持ちを全て母さんに話した。
全てを話し終わると母さんは笑い出したのだ。
『ははははっ!それはあなたが悪いわ!』
『な、なんでだよ!?せっかく一緒に入れるのにわざわざ離れる必要ないだろ!?』
すると笑っていた母さんは真面目な顔になった。
『今色乃さんは自分のせいではないとわかっていても凄く罪の意識があるの。それに今のところ何もないって思っても本当に呪いが消えたと証明するには時間が短すぎる。だから騒動が落ち着いてちゃんと呪いが消えたと自分で思い込めるまで一度あなたと離れるのよ』
『だから何でだよ!』
俺がそう言うと母さんはまた呆れた顔をした。
『あなたと対等に接したいからよ。たぶん彼女の中ではあなたに助けられた。そういう気持ちが消えないんでしょう。だから自分と一緒にいてもちゃんと安心だと言える状態であなたと向かい合いたいのよ。あなたよりよっぽどしっかりしてるわよ』
そうか・・・・・・ここで俺はようやく色乃の気持ちに気付くことが出来た。改めて思い直すと恥ずかしくなって慌てて自分の部屋にこもった。俺は色乃を守り続けれたらそれでいいと思っていたけどそうじゃないんだな。色乃もまたそうだということなのだ。俺は決心が出来た。
色乃が引っ越す日がやってきた。さすがに色乃の家でも引っ越すとなると少しもめたらしいが色乃の両親もちゃんと納得してくれたらしい。
家の中から荷物が全て積み込み終わりトラックが出て行った。そして俺は色乃と向かい合った。よく見ると色乃の目には涙が浮かんでいた。
『一旦さようならだね・・・・・・』
『そうだな・・・・・・』
俺はそれ以上言葉が出てこなかった。頭の中では理解したけど、実際ここまで来るとやっぱり離れるのが嫌だった。
すると色乃が笑顔を作り
『大丈夫だよ。私達は成長してまた会える。きっと運命で繋がってるから』
そう言った色乃目から涙がこぼれた。俺はそのまま色乃を抱きしめた。
『もし何かあったらすぐ連絡しろよ!俺は色乃がどこにいてもすぐに駆けつけるから』
『うん・・・・・・』
それから俺達は見つめ合い、キスをした。
そして再び見つめ合った時、色乃がもう一度笑顔を作り
『典君!大好きだよ!』
そう言って車の方へ走っていった。そして車が走り去っていった。俺はやられたと思いながら車が見えなくなるまで手を振り続けていた。




