71話 親友と急襲
俺は佐久野に近付いてそれは誰か尋ねた。
『私にも親友がいるんだよ!親友に何も言わずに勝手にそんなこと出来ないよ』
そう言った瞬間俺はそれが誰かわかった。佐久野の親友、葉月である。確かに彼女に何も言わないのも失礼だと俺も思った。
『しかし今日はもう時間が遅いから明日にしよう。場所はわかっているんだろ?』
俺がそう言うと佐久野は笑顔でうんと返事をした。とても可愛らしい笑顔は俺に勇気を与えてくれる。この笑顔を絶対取り戻すんだと俺は思った。
そして佐久野と別れ家に向かう途中俺は急に背筋が凍りつく感じがした。俺は無意識に足を止めた。すると次の瞬間目の前に大きな物が現れて、ドンという大きな音と共に地面に落ち飛散した。飛散した破片が顔に当たった。急に激痛が起こり俺は痛い部分をさわると手に大量の血がついた。俺は慌てて持っていたハンカチを出血部分に当てて落ちてきた物を確認した。それは看板だった。老朽化で壊れたのだろうかと思い俺は上を見た。しかしそんな考えが一瞬で吹き飛ぶくらい俺は恐怖した。
上に看板が付いていたような場所がなかったのだ。間違いない、これは呪いの影響だ。俺はそう考えると佐久野が危険だと思い佐久野の元へ引き返そうとした。しかし
『だ、大丈夫だ・・・・・・』
どこからか声が聞こえた気がしたのだ。でも辺りを見渡しても誰もいなかった。ただ間違いなくあの声は碇であった。俺はそう確信し佐久野は大丈夫だと思って今向かわなければいけないと思った場所へ急いだ。羽野の元だ。今の状況を考えると羽野に協力を得るのが一番だと考えたからだ。
俺が羽野の家に着くと羽野は何故か家の前で待っていた。俺はどうして羽野がそこにいたのかわからなかった。ただ偶然いたとは思えなかった。羽野は俺のことに気付くとこちらを向いて手を振っていた。
俺は訳のわからないまま羽野の側に近付こうとしたが何か違和感を覚え足を止めた。そして羽野に尋ねた。
『羽野か?』
羽野は何も言わずに首をかしげている。やはりおかしい。そう思い俺は
『お前は誰だ!?』
と大きめの声を出した。すると羽野の家の扉が開いたのだ。そして扉の向こうから声がした。
『誰だよ人の家の前で大声出してるやつは?』
それは間違いなく羽野の声だった。俺は瞬時に状況を理解し、
『羽野!俺がいいと言うまで家から出るな!死ぬぞ!』
すろとまた扉の向こうから声が聞こえた。
『新瀬か!何かあったんだな!わかった。絶対出ない!』
そしてそのまま開きかけた扉が閉じたのだ。その瞬間俺の目の前にいた羽野に見える者の姿が一瞬で消えたのだ。これも呪いの影響か?
そして俺は羽野を呼んだ。するとすぐに羽野は家から出てきて俺の前に立った。
『何があった!?』
『お前のドッペルゲンガーがここにいた』
『俺のドッペルゲンガー!?だから俺に出るなって言ったんだな、そうかサンキュー。それよりお前その傷どうしたんだよ!』
それから俺は羽野の家で手当をしてもらい、羽野に全ての事情を説明した。
『つまり明日佐久野さんの親友の葉月っていう子に会いに行くけど、このタイミングで呪いが襲いかかってきてるってことか・・・・・・碇はもう限界なのか?それより佐久野さんは大丈夫なのか!?』
『俺の前に看板が振ってきた後佐久野の元へ向かおうとしたら碇の声が聞こえた。何かあった場合あいつは佐久野さんを優先して守るだろうから大丈夫だと思う』
それを聞いて羽野は呆れた顔をした。
『お前もなかなか度胸があるな。聞き間違いかもしれないんだぞ?』
『いや、あいつは俺を信じてくれている。だから俺もあいつを信じるよ』
羽野はそうかと言うと真剣な表情になって座り込んだ。
『とにかく今日は泊まっていけ。家には連絡を入れればいい。それと明日俺も一緒に行く。だからお前俺の所に来たんだろ?何かあっても俺が助けてやるよ!』
自信に満ちた羽野の顔だった。こういう時の羽野は頼もしく見える。俺もこの顔に何回救われただろうか。
その後何も起こることはなく翌日を迎えた。そして俺は羽野と一緒に佐久野の元へ向かう途中に看板が振ってきた場所へ寄ったのだが、そこには何も起こらなかったかのように何もなかった。偶然この場所の目の前に住んでいる人が家から出てきたので尋ねて見ると
『昨日?何もなかったよ。ずっと家にいたけど大きな音なんてしなかった』
と言われたのだ。あれだけ大きな音がしたのに周辺の住民が知らないはずはない。俺は羽野と顔を合わせた。
『どうやらお前にしか影響が起こってないのかもしれないな』
そして俺と羽野はある仮説を立てた。佐久野の呪いが強くなっているのは影響を与える人間を限定しているからではないのかということだ。実際は強くなっているのではなく今まで分散していたのが一箇所に集中することによって強くなっていると感じるだけなのだろう。
つまり呪いに影響を受ける人間を増やせれば呪いは弱まるのではないかと思ったのだ。
『ただ俺を消そうとしたくらいだから俺はすでに影響に入っている人間なんだろうな』
そして最後に羽野がそう言った。
佐久野の家に着いた。すると佐久野が何事もなかったかのように家から出てきた。俺達はそれを見て安心した。やはり佐久野は碇に守られている。
しかし佐久野は驚いた顔をして俺達を見たのだ。
『新瀬君、その顔どうしたの!?それに羽野君も一緒だなんて』
それから俺は電車の中で佐久野に昨日別れた後に起こったことと俺達の推測を話した。
『そんなことが・・・・・・』
『だから葉月さんの家に着くまでの間も油断出来ない。だから常に気を配っているしかない。羽野に来てもらったのもその為だ。恐らく時間もあまりないかもしれない。今日にでも実行しなければいけないかもしれない・・・・・・』
覚悟をしていた佐久野も突然の出来事に不安を隠せない表情だった。
しかし、それから羽野が増えたことにより力が弱まったのかと思うくらい電車の中では何も起こらなかった。
そして俺達は葉月が住む地へやってきたのだ。




