66話 決断
佐久野はしばらく下を向いたまま考え込んでいたが顔を上げて俺を見た。
『新瀬君はもう決めてるの?』
佐久野は不安そうな顔をしたまま尋ねた。もちろん俺はもう決断出来ている。だから俺は大きく頷いた。
『俺は佐久野さんを助ける。それだけだ』
『死ぬかもしれないんだよ?別に私以外にも女の子は沢山いるじゃない!それなのにどうして・・・・・・新瀬君は・・・それに色君も・・・』
佐久野は自分を見捨ててしまえばいいのだと言っているように聞こえた。
『今ここで佐久野さんを見捨ててしまえば俺はこの先きっと他の誰かを好きになる資格なんてないよ。それに俺は佐久野さんじゃなきゃダメなんだ』
『そんなことない!だからってその為に自分の命をかけなける必要はないよ!今までは気をつけていれば死なないと思っていたけど今回は本当に死ぬかもしれないんだよ!?』
佐久野は今にも泣きそうな表情をしていた。
『だとしてもそれで俺がここで逃げてもいい理由になんてならない』
『私だって死にたくないよ!でも新瀬君まで死ぬ必要なんてないよ!だから私が誰かと関わるのを止めれば済む話だよ!』
佐久野はもう自分が何を言っているのかわかっていないのだろうかと思った。
『それだと生きていても死んでいても変わらないでしょ?ずっと家に閉じこもって生きていくつもりかい?』
『それは・・・・・・』
『それにもしここで諦めたら君の為に死んだ碇はどうなる?それこそ無駄死にじゃないか!』
言い返せなくなり佐久野は再び黙り込んでしまった。
俺は佐久野を絶対助けると碇に約束した。だから絶対実行しなければいけないのだ。とにかく佐久野を説得するしかなかった。
『碇は佐久野さんが生きて幸せになることを願っていた。だから俺は何があってもこの作戦を実行する。俺は碇と約束したんだ。それと俺、碇と親友になったんだぜ!』
佐久野はまだ黙って俺の顔を見ていたが少し表情が変わった。
『だから俺と碇を信じてやろう!』
『どうして皆私の為にそこまでしてくれるのよ・・・・・・』
佐久野はそう言って俺の手を握った。
『わかった。やるわ!新瀬君が一緒なら怖くない!私ももう逃げない!』
佐久野が意志の強い表情を見せた。俺は自然と笑顔がこぼれた。
『あとは実行する為の作戦だな!』
俺がそう言うと佐久野は頷いた。そして佐久野は自分の顔の前で手を合わせてこう言った。
『色君・・・・・・私達を助けて!』
それを聞いた瞬間俺は佐久野を抱きしめた。
『助けるのは俺だ。これから先ずっと俺が佐久野さんを幸せにする』
『・・・・・・そうだね。色君はサポートだね』
佐久野が涙を流しながらそう言うと佐久野の目から涙がこぼれた。
その涙が頬を伝い俺の手に落ちた。その瞬間俺の頭の中に大量の光景が流れ込んできた。




