56話 二人の反応
私がしばらく考え込んでいると
『佐久野さん、大丈夫?』
新瀬君がそう言って私の顔を心配そうに見つめていた。私はどれくらい黙っていたんだろう。それより二人に話さなければ、そう思った。
『羽野君が言った夢でちょっと思い出したことがあるの』
私がそう言うと羽野君の表情が少し変化したのである。何か確信があって言ったのだろうか?とにかく私は説明を始めた。
『以前二人が病気で学校を休んだ後、私も病気で学校を休んだでしょ?その時に夢を見たの』
新瀬君は真剣な表情をして話を聞いていた。その時の記憶がないからだと思った。
しかしよく見ると羽野君の表情はどこか期待を持った表情に変わっていったのである。
そして私が夢の話を説明し終わると新瀬君が食い付くように話してきた。
『じゃあその夢で話しかけてきた誰かがわかれば呪いを解決する方法を教えてもらえるじゃないか!』
『確かにそうだけど夢の話だから本当かどうかなんてわからないよ?』
『でも夢の中の誰かが言ったことはこれまでほとんど当たっている。だから間違いないよ!』
新瀬君はとてもテンションが高くなっていた。先の見えなかったゴールが見えたかのような反応である。
『でもその人はいったい誰なんだろう?』
そう言って新瀬君は考え始めてしまった。しかし私にはこの夢の人物に心当たりがあった。ただもしわかったとしても会うことが出来ない人物なのだ。
だからその人物を言ったとしても二人には何も希望を持たせることが出来ない。そう思ったので私は言うことが出来なかった。
それと私の話を聞き終わってから羽野君はずっと考え込んでいたのだ。どちらかというと悩んでいる方が近いかもしれなかった。
私はどうしたのか気になったので羽野君に尋ねたのである。
『羽野君、さっきからずっと悩んでるっぽいけどどうしたの?』
すると羽野君は驚いたように私の方を見て大丈夫と答えた。私はそれがとても不思議に思えた。
『何か思い当たる節でもあるの?』
私は羽野君の発言や行動がどうしても気になった。彼は何か知っているのではないか。そう思ったのである。羽野君はもう一度私の方を見た。
『思い当たる節というか、ちょっと佐久野さんに聞きたいことならある』
私に聞きたいこととはいったい何なのだろうか?全くわからなかった。
『聞きたいことって何?』
『佐久野さん、その人物と会ったことあるんじゃないかな?でもそのことをあまり言いたくない感じがする』
私は驚いた。羽野君は予測ではない、間違いなく確信を得て尋ねてきている。
『やっぱり知ってるって顔だね。その人物が誰か』
『そうなの!?佐久野さん誰?』
ずっと考えていた新瀬君が話に入ってきた。期待した目で私を見ていた。羽野君は恐らくわかっている。私もこれ以上黙っていることは出来ないと思った。
『絶対この人っていう確信はないよ。ただたぶんこの人だと思うっていう心当たりはある』
『誰?』
『・・・・・・色・・・碇君』
私がそう言った瞬間新瀬君が驚いた顔をした。羽野君はやはりといった感じの表情をしたのだ。
『碇君って・・・・・・事故で亡くなった人だよね?』
新瀬君が申し訳なさそうに尋ねてきた。私は小さく頷いた。
『それじゃあ・・・・・・』
新瀬君はそれ以上何も言わずに一言ごめんとだけ言った。
それから羽野君は何かを決めたかのような顔になったのだ。
『二人とも聞いてくれ。大事な話があるんだ』




