49話 羽野の言葉
『どう?典貴とお話しできた?』
新瀬君のお母さんは笑いながらそう言った。どうやら私と新瀬君を二人きりにする為にわざと部屋を出てようだった。
『とりあえず皆の紹介をしました』
『あら、そうなの?私のことも言ってくれた?』
『はい』
私達が話していると新瀬君が興味深そうにその光景を見ていた。すると新瀬君は手を挙げた。
『ちょっといいですか?』
私達は同時に新瀬君を見た。
『どうしたの典貴?』
『あなたが僕の母親だと先ほど色乃さんから聞きました』
普通に下の名前で呼ばれていることに私は驚いたがここはそのまま流すことにした。
『しかしどうみても母親と思えるほど年齢が離れているようには見えません』
新瀬君がそう言うとお母さんは笑い出した。
『嬉しいこと言ってくれるじゃない?でもちゃんとあなたの母親よ』
『そうなんですね・・・・・・すいません・・・』
『いいのよ。親子なんだから』
その光景を見た時、私も将来あんなお母さんになれたらいいなと思った。その為にはこの呪いをどうにかしなければならないそう思った。
それから夕方羽野君とあってこれからどうするのか相談をした。羽野君には今のところ事故のあった日に怪我をして以来まだ何も起こっていないらしい。そこで私は羽野君にこれ以上迷惑をかけたくないと思ったのだ。
『新瀬君の記憶がなくなった以上、もう今これ以上羽野君が私に関わる必要ないと思うの』
それを聞いた羽野君が驚いた顔をした。
『どうして?』
『だって羽野君は新瀬君の為に一緒にいてくれてるんでしょ?だったらもういる必要ないじゃない。それに今何も起こっていないならそうした方がいいと思うの』
すると羽野君は少し悩んだ顔をして、それから背伸びをした。
『確かに佐久野さんの言ってることに一理ある』
『だったら』
私が言い返そうとした時
『あいつが絶対救うって言ったんだ。だったらあいつは必ず戻ってくる。だから俺も変わらないよ』
どうしてそこまで言い切れるのだろうか?私はわからなかった。新瀬君のお母さんも似たようなことを言っていた。すると羽野君が話を続けた。
『俺さ、あいつとは小さい頃から一緒だったんだ。今までもあいつ好きな子とかいたけど、自信がなくて何も言えずに終わっちゃったりとかよくしてたんだよ。その何も言うことが出来なかった新瀬がここまで強く救うって言ってるんだぜ?信じてやらなきゃ親友じゃないだろ?あいつが変われる姿を見れるだけで俺にとって十分価値のあることなんだ』
これが親友なんだなと私は思った。羽野君も葉月と同じだった。お互いがお互いを信じ合ってる。これが深い絆なんだろうか?それに比べて私はどうだろう?もし葉月からずっと連絡が来なくなったら葉月のこと信じ続けていられるかな?私は少し自分が嫌になった。
『とにかく佐久野さんはあいつを信じて待っててやってくれよ。何も心配しなくてもあいつのことよく知ってる人なら大丈夫だよ』
そうだ、新瀬君のお母さんも新瀬君のことをよく知っていたからあんな風に言っていたんだ。私だけ一人で心配しすぎていたのかな?
『とりあえず今日は家に帰ってゆっくり休みなよ?昨日もずっと新瀬につきっきりだったんだからさ。佐久野さんが体調崩したら意味ないからな』
『うん、ありがとう』
そして私は家に帰ったのである。それから今後どうするかもう一度一人で考え直したのである。




