47話 後遺症
新瀬君が間違いなく私の手を握り替えしている。私は慌てて彼の顔を見た。目は開いていない。
『佐久野さん!ナースコールを!』
羽野君がそう言ってナースコールを押した。
そしてすぐに担当の先生と看護師さんが部屋にやってきた。
『どうしたんだ!?』
先生が驚いた表情で私達に尋ねた。
『新瀬が佐久野さんの手を握り替えしたんです。もうすぐ起きるんでしょうか?』
声が出ない代わりに羽野君が先生に聞いてくれた。私は泣いたままだった。すると先生は少し残念そうな顔をして答えた。
『とても言いにくんだが、意識のない人でも何かに反応して手を握り返すことはよくあるんだよ』
『そんな・・・・・・』
『それでも何もないよりかは進歩しているかもしれない。今日は遅いからもう帰りなさい』
私達は先生にそう言われると新瀬君の病室から出された。新瀬君は目を覚まさなかった。
しかし私達が部屋を出た後
『ここは・・・?』
という声が聞こえた気がしたのだ。
家に帰るとお母さんが玄関まで走ってきた。
『色乃!今新瀬君のお母さんから連絡があったんだけど、新瀬君目を覚ましたそうよ!』
そう、やっぱり私達が帰る時に聞こえた声は新瀬君の声だったのだ。私はすぐに病院に行こうとした。しかしお母さんがそれを止めた。
『今日はもう面会が出来ないから明日来なさいって先生が言っていたそうだわ。気持ちはわかるけど今日は我慢しなさい』
『はい・・・』
私の声を聞いてお母さんが驚いた。
『色乃、声が出てないじゃないの!?どうしたの?』
『ずっと新瀬君を呼んでたから』
するとお母さんは私を抱きしめた。
『そっか、よかったわ。お母さん心配してたのよ。碇君が亡くなってからあなたから全く生気が感じられなかったから。またあなたがそんなに誰かのこと思えるようになったから安心したわ』
お母さんはそう言うと私を離した。そして笑顔を作った。
『尚更今は我慢しなさい。せっかく新瀬君目を覚ましたのに今のあなた見たら驚いちゃうわよ。今日はあなたもゆっくり休みなさい』
そして私はそのまま休んだ。
次の日私は朝一から新瀬君の病室を訪れた。羽野君はまだ来ていなかった。病室に行く前に担当の先生から呼ばれた。
『新瀬君に会いに来たんだね。彼は昨日君達が帰った後すぐに目を覚ましたんだ』
先生はそう言ったが、何故か表情がよくなかった。
『何があっても落ち込んではいけないよ』
どういう意味だろう?私はわからなかった。
そして新瀬君の病室に案内された。するとそこにはベッドに座っている新瀬君がいた。
『新瀬君!』
私は彼を呼んだ。すると彼はこちらを向いた。しかし様子がおかしかった。呼ばれた声に反応したというより声が方向を見たといった感じだった。
するとそこに羽野君もやってきた。
『新瀬!もう大丈夫なのか?』
羽野君がそう言ったが新瀬君は首をかしげていた。私達は新瀬君の横に座った。
『どうしたんだよ?何で何も言わないんだ?』
羽野君がそう言うと新瀬君は顔を反らした。
『あの・・・・・・すいませんがあなた達はどなたでしょうか?』
私達は驚いた。そして羽野君が立ち上がった。
『え?何・・・言ってんだよ?俺だよ、羽野だよ。羽野光馬。知らないはずないだろ?それにこっちは佐久野色乃さん』
しかし新瀬君は首をかしげた。
『ごめんなさい。わからないです』
どういうこと?私達は先生の顔を見た。先生は首を横に振ると
『彼の記憶がないんだよ』
そう言った。私達はそれを聞いて固まってしまった。新瀬君は記憶喪失になってしまったのだ。




