40話 拒絶
私が学校に行くのを止めた日の夕方、色君が私の家にやってきた。本当は会わない方がいいと思ったけど、何も言わないで突然学校へ行かなくなったら心配するよね。だから私はドア越しに色君と話した。
『どうしたんだよ?突然学校休みなんて』
色君の声は明らかに動揺していた。何が起こったのかわからないといった感じだ。
『ごめんね。いきなり休んだりして。でも私はもう学校へは行けない。誰にも会いたくない』
『なんでだよ!?俺のこと言ってんのか?俺は大丈夫だって言ってるだろ!』
『大丈夫って言われても最近色君に会う度にどんどん怪我が増えてるじゃない!私そんなの見たくない!』
私は大きな声できつく言った。するとしばらく色君は黙ってしまった。
『ごめん』
色君がそう言った。私は下を向いていた顔を上げた。
『確かに色乃の気持ちを考えたら辛いな。例え相手が違うって言ってくれても実際そうなってしまえば見てる方は辛いよな。今日は帰るよ』
そう言った足音が遠ざかっていくのが聞こえた。しかしその足音はまたすぐに止まって
『でも俺諦めないから』
色君がそう言うとドアの向こうから入っていく音が聞こえてきた。
諦めないとはどういうことなのだろうかと私は思った。
それから色君は数日に一度私の家を訪ねてきた。でも私は彼と会おうとは思わなかった。もし会って話してしまったら私はまた色君に会いたくなる。そして彼はさらに不幸になるであろう。そう思った。
それにいつか諦めてくれるだろうと思った。
しかし色君はそれからもずっと私の家を訪ねてきたのであった。
そして彼が帰った後お母さんが私の部屋をノックした。
『色乃、入るわよ』
そう言うとお母さんはドアを開けて私の部屋に入ってきた。
『今日もあの子来たわよ。碇君だっけ?すごく大きくて格好いい子よね。本当に会わなくて大丈夫なの?』
『だって会ったら彼が不幸になるもん。色君も葉月みたいになってほしくない』
私がそう言うとお母さんは黙ってしまった。私の両親はもちろん私の周りが不幸になっていることを知っていて、私の境遇も知っている。だから学校に行かなくなったことに対しても何も言わなかった。ただ
『色乃の好きにしたらいい』
そう言ってくれた。不思議なのが両親だけは私と一緒にいても何も起こらないのだ。これだけは何故なのかさっぱりわからなかった。
『わかった。じゃあまたご飯の用意が出来たら呼びに来るわね』
お母さんはそう言って部屋を出て行こうとドアを開けたがそこで足が止まった。
『ただね、自分がどんな目に遭ってでもあなたに会いたい、そう思ってくれてる人がいることだけは忘れないでね』
そしてお母さんは部屋を出て行った。
それから私はどうすればいいのか考え続けた。ずっとこのまま会わないでいれば色君はきっといつか諦めてくれる。でもやっぱり色君に会えないことが辛くて辛くてたまらなかった。彼に会いたい。そう思った。しかし会ったら彼が不幸になってしまう。
『私どうしたらいいの・・・・・・?葉月・・・どうして連絡してくれないの?』
この時の私はまだ葉月から連絡が来ない理由を知らなかったのである。
その日私はもう一度お母さんが部屋に呼びに来るまで泣き続けていた。




