39話 初恋と不登校
突然涙を流した私を見て色君が驚いた。
『え?どうしたの!?大丈夫?』
私は自分が泣いていることにこの時初めて気がついた。
『え?え?私どうしちゃったんだろう?』
私は慌てて涙を拭いた。そして色君にごめんと謝ると頭を下げた。そして側にいてもいいかという言葉に対して
『よろしくお願いします』
そう返事した。この時はもちろん友達としてという意味だったけど。
この時の色君の安堵した顔は今でも覚えている。
それから私達は基本的に毎日一緒に行動するようになった。
色君が転校してきてから1週間が過ぎた日の学校帰りの出来事である。この時まだ色君には大きな不幸と呼べることが起こっていなかった。
色君が突然悩んだ顔をして私にこう言ったのだ。
『名字に君、さん付けで呼ぶのも大変なんだなって今更思えてきた』
『じゃあどうするの?私は碇君のままでも構わないけど』
『それだとなんか余所余所しい感じがしてどうも・・・・・・』
色君は言って良いのか悪いのかそんな感じの表情をしていた。この時の私にはよくわからなかったがこの変な空気が嫌だったので
『わかった!じゃあ私は碇君のことを色君って呼ぶね!てことは私のことは色さん?なんか変だ』
私が悩んでいると
『普通に色乃って呼んで良いかな?もちろん嫌なら変えるけど』
他の友達は皆名前で呼んでいたからその方がいいなと思ったので私はいいよと答えた。
『よかった。駄目だって言われたらどうしようかと思った』
色君がそう言うと私は笑った。葉月と一緒にいた頃と似た感覚だった。なんて幸せなんだろうと私はずっと思っていた。
『色君だからいいんだよ。だって色君格好いいじゃない?』
私がそう言うと色君は普通の顔をして
『色乃だって可愛いじゃないか』
そう言われて私は顔が赤くなってしまった。恥ずかしくなり顔を手で押さえた。
そしてすぐにこれは葉月に抱いていた感情とは違う感情だということに私は気付いた。そう、私は色君に恋をしたのだ。これが私の初恋である。
しかし私は色君にその気持ちを伝えることが出来なかった。私だけ一方的にそう思っていてこの関係が崩れるのが怖かったからである。
でも色君と一緒にいる時間が増えれば増えるほどその感情は大きくなっていった。しかしそれに比例するかのように色君に起こる不幸は増していったのだ。
色君が転校してきてからさらに1ヶ月が過ぎようとしていた。朝学校に行くのに待ち合わせしている場所で色君に会うと彼は頭に包帯を巻いて、さらに目には眼帯をしていたのだ。私は驚いて色君に尋ねた。
『ど、どうしたの!?その顔!』
『ちょっと転んじゃって。でも大丈夫』
そうは言ったものの普通に転んだだけではそんな怪我をするはずがない。きっと私に気を遣ってそう話したのだろうと思った。それと同時に私の心は凄い痛んだ。
初めて出来た大好きな人が不幸になっていく。もちろん葉月が不幸な目に遭っていた時も心は痛かった。でも色君に対する痛さはもっと大きく感じたのである。
そして次の日、さらに次の日と色君の状態はどんどん酷くなっていった。私はそれを見るのが辛くてたまらなかった。私が色君を不幸にしている。やっぱり私は誰とも関わってはいけないんだ。そう思った。
色君は何も言わずに大丈夫だと言ってくれていたが、私はこれ以上色君が酷い目に遭うのが絶えられなくなった。
そして私は学校に行くことを止めたのである。




