28話 三人の約束
佐久野を悲しませてしまったが、俺の夢に出てきた碇が本物であることがわかった。
あの後佐久野はすぐに泣き止み、俺達に一言ごめんねっと言って笑顔を作った。
昼休みになると羽野がすぐに俺の下にやってきた。
『碇の名前が本当だったから加護があるのも間違いない。俺達の不幸が軽いのも碇のおかげということになるな』
確かに羽野の言うことは合っていると思う。でなければ死んでいてもおかしくない場面はこれまでに何回かあった。
『ただ問題はどうすれば呪いが解けるのかがわかっていない』
俺が思ったと同時に羽野がそう言ってきた。
『そうなんだよな。ちょっとずつ進歩はしてると思うんだけど肝心な所がわからないんだよな・・・』
俺と羽野は共に考え込む状態になってしまった。
しばらくして羽野が先に口を開いた。
『いいこと思いついた。ちょっと佐久野さんの所に行こう』
どういうことだ?俺は訳の分からないまま羽野について行った。
佐久野は一人で読書をしていた。羽野が申し訳なさそう顔で話しかけた。
『佐久野さんちょっといいかな?』
佐久野は読んでいた本にしおりを挟むとこちらを向いて笑顔を作った。
『大丈夫だよ。二人共どうしたの?』
俺は羽野が何を考えているかがわからないから無意識に羽野の方に顔を向けた。すると羽野は人指し指を立てて答えた。
『提案があるんだけど、今度の休みに3人で遊びに行かないか?』
あまりにも突然の内容だった為俺は驚いた。しかし、俺以上に驚いた顔を佐久野はしていた。そしてすぐに返答した。
『危険すぎるよ!申し訳ないけど、さすがにいいよなんて言えない』
そりゃそうだと俺も少し思ってしまった。羽野は一体どういうつもりなんだろうか。俺は羽野の思惑を確認するため佐久野から少し離れようと思い声を出した。
『佐久野さんちょっとごめんね』
俺はそう言って佐久野に背中を向ける形で羽野に小声で話しかけた。
『余りにも突然すぎるだろ。あんなことすぐにOKしてくる訳ないだろ』
『そんなこと俺だってわかってるよ』
『じゃあどうして』
『何かアクションを起こさないとどうにもならないだろ。夢の話が本当だったんだから碇の加護を信じて色んなことをしてみるべきだと思ったんだよ。もちろん佐久野さんには言えないけど』
確かに何もしなければどうしようもない。俺は羽野の考えを理解した。
『でもどうやって・・・?』
『とりあえず毎日呪いに怯えて何もしなければ今まで通りで何も解決しないから色々やってみようで説得するしかない』
『説得するしかないってお前・・・』
俺は落胆した表情で羽野を見た。
『どうかしたの?』
すると佐久野が話を割って入ってきた。ずっとそのままにしてたから当然である。俺達は佐久野の方へ振り向いた。佐久野は不思議そうな顔でこちらを見ている。羽野が俺の方を見た。なんで俺がと一瞬思ったけど佐久野の呪いを解きたいと言い出したのは俺だから俺が説得するのが当然のことである。
『こうしてただ毎日何もしないでいるよりかはやっぱりどこかへ行ったり色んなことをしてみるべきだと思うんだ。でなければ何も解決しない気がする。佐久野さんもこのままは嫌だろ?だから一緒に遊びに行こう』
こんな感じでよかったんだろうか。目の前の真剣な顔の佐久野に対して俺も真剣な顔を崩さずにいた。
『私の事思って言ってくれてるんだよね。そうだよね。ごめんね。』
佐久野はそのまま少し下を向いて黙ったがすぐに顔を上げた。
『わかった。遊びに行く』
俺と羽野の顔から笑顔がこぼれた。
『でも危険だと感じたら私はすぐに帰る。これだけは約束して。お願い』
『わかった』
俺と羽野は同時に答えた。とにかくこれで佐久野と一緒に遊びに行ける。これはもしかして不幸ではなく幸せじゃないのかと思った。
『危ない!』
『痛っ!』
突然頭に何かが当たったのだ。床に落ちた物を確認するとそれは消しゴムだった。俺はそれを拾った。なんでこんなものが?
『ごめん、投げて渡そうとしたら力が入りすぎて』
するとそこには頓葉陸男が立っていた。確か野球部だ。
『ちょっと当たっただけだから大丈夫。気をつけてくれ』
俺は持っていた消しゴムを彼に渡した。彼はもう一度ごめんと言うと軽く頭を下げて戻っていった。
『消しゴムなんか投げて渡すなよな』
羽野がそう言って俺の方を見た。しかし何か目で訴えていたのだ。俺はすぐにその意図に気付き佐久野を見た。しかし佐久野は笑顔で
『大丈夫だよ。ちゃんと遊びに行くから心配しないで』
俺はホッとした。もし今ので行かないって言われたらどうしようかと思った。
それから3人で話し合って今度の休みは遊園地に行くことにした。




