16話 登校
俺は慌てて羽野に声をかけた。
『羽野!どうしたんだ!?』
すると羽野はすぐに体を起こした。
『いって~…』
『何があったんだよ?』
『躓いた』
『え?』
『躓いただけだよ。お前慌てすぎ』
そう言うと羽野は笑い出した。それを見ると俺は少し安心した。しかし、すぐに佐久野の言葉が頭を過ぎった。
『私に関わった人は皆、不幸なことが起こったの』
俺はそのことを羽野に話そうとしたが、羽野が先に声をかけてきた。
『これが呪いか?』
思わぬ羽野の言葉に俺は少し驚いた。恐らく表情に出たのだろう、羽野は俺の顔を見ると話を続けた。
『佐久野さんが言っていた話だと、始めは軽い不幸が起こる。つまりこういうことも不幸になるんだろ?』
羽野の言ったことは正しかったので俺は頷いた。それから、羽野は少し考える素振りを見せるとすぐに笑い出した。俺は奇妙に思ったので羽野に尋ねた。
『どうしたんだ?急に笑い出したりして』
『だってさ、これで俺もお前の戦いの中に入れたわけだろ?面白いじゃないか』
『面白いって、そんな軽い話じゃないぞ!』
俺は真剣に怒った。しかしその瞬間、羽野が真面目な顔になったのだ。俺が真剣に言ったことが、そうでなかったかのように思えるほど真剣な顔つきだった。
『わかってるさ、そんなことくらい。でも、悲しむってのも変だろ?だから笑ったんだよ。な~に、気にすんな!俺が望んだことだ』
羽野はそういうと俺の肩にポンと手を置いた。俺の羽野に心から感謝した。あまりにも嬉しかったのか涙が出てきてしまった。それを見た羽野が、
『何泣いてんだよ!?』
そう言って笑い出した。俺は恥ずかしくなって俯いた。そしてそのまま、
『ごめん、ありがとう。俺頑張るよ』
羽野に言った。そうすると羽野頷いて、
『帰るか!』
と言った。
その後は以外にも何もなかった。これが羽野にも不幸が起こった影響なのかはわからなかった。
次の日、俺は学校に着くと何も考えずじっと自分の椅子に座っていた。元より何もすることもなかったのだ。
そして、下を向いて3回目のため息をついた時に話しかけられた。
『そんなにため息ばっかりついてると、幸せが逃げるぞ!』
顔をあげると、そこには羽野がいた。羽野はそのまま笑いながら、
『まぁもう幸せはないかもしれないけどな』
『冗談言うなよ』
俺は言い返した。羽野の言ってることは確かに間違いではないかもしれない。俺は不幸と戦ってるのだから。それでも、俺はそれに勝利し幸せを掴むのだ。
羽野は、そうだなと言うと本題を話すかのような顔になった。
『今日も佐久野さん来ないのかな?』
『あの状態じゃ来ないかもしれないな』
しかし、それでは埒が明かない。佐久野に会わない限りこの問題は解決しないだろう。どうしたらいいのかわからないまま、時間だけが過ぎていった。
そして、後1分でチャイムが鳴りそうな時間になった時、教室のドアが開いた。その瞬間、教室がざわついた。俺と羽野がその方向を見ると、そこには佐久野が立っていた。俺と羽野は驚いて顔を見合わせた。
それから全員の注目を浴びる中、佐久野は自分の席に着いた。




