15話 広がる呪い
学校を出ると、そこには羽野が立っていた。
『何話してたんだ?』
伊瀬から聞いたことは誰にも話さないという約束だったので、俺はどう答えたらいいのか悩んだ。
『まぁ何も言うなって言われたんだろ?』
羽野の鋭い指摘で思わず背中が伸びてしまった。
『やっぱりな。お前の反応見りゃだいたいの予想はできるよ』
占い師かよと俺は思った。それにしても羽野の洞察力の凄さには驚きを隠せない。
『その通りだ。だから何を話していたかは話せない。それに余り深く話しすぎるとお前にも危害が加わるかもしれないだろ?』
そう言うと、羽野は軽くため息をついてから側に寄ってきて俺の肩に手を置いた。
『そんなこと気にしてたらお前の友達なんてやってないよ。それに俺にも呪いが降りかかれば、もしかしたらお前の不幸も軽くなるかもしれないじゃないか』
『そんな…お前に迷惑はかけたくない』
そう言うと、羽野は笑って答えた。
『こっちは迷惑なんて思ってないから心配すんな!言っただろ?協力するって』
俺は涙が出そうになった。そして、羽野にありがとうと言った。
今日は羽野と一緒に帰ることにした。羽野の家は俺の家からさほど遠くない場所にある。
羽野がいるせいか俺は少し安心していた。周りの警戒はしていたが、いつもほどではなかった。
そして少し歩いていると、羽野が話し掛けてきた。
『不幸って言われても、実際どんなことが起こるんだ?あんなポストみたいなのばかりだと油断できないな』
俺の緩んだ警戒心とは裏腹に羽野は不幸に対してしっかり警戒しているようだった。
『俺が経験した不幸は、最初の時は物にぶつかったり、軽い怪我だったりしたけどな。あと車に引かれそうになったこともあったよ。それは佐久野さんに助けられたけど』
俺は軽く笑いながら答えた。すると羽野は俺をまじまじと見つめた。
『お前やっぱり凄いよ。そんな命の危険のある中でそこまで笑っていられるんだから』
『いや、なんとなくまだ死ぬような不幸はない気がするだけだよ』
『直感ってやつか?』
『よくわからないけど、なんとなく』
『それを直感って言うんじゃないか?』
『そうかもな』
そう言うと互いに笑い出した。いつ呪いが襲ってくるかわからないことを忘れるくらい笑った。
それから互いに周りを確認しながら帰ることにした。俺は左、羽野は右に注意することにした。
注意する部分がいつもの半分でいいというのは、かなり楽な気がした。そのおかげで自分が注意する方向の確認はいつも以上にすることが出来た。
少し前の左側にガラス張りの店があった。俺はその店を確認したが何もなかった。しかし、自分の横に来たときにある事に気付いた。よく見ると、ガラス越しに映った羽野が少し歪んで見える気がしたのだ。
そんなはずはないと思い、目を擦りもう一度よくガラスを見た。今度は歪んではいなかった。しかし次の瞬間、ガラスに映っていた羽野が突然倒れたのだ。それと同時に反対側からバタッと倒れる音がした。
俺が慌てて振り向くと、そこには羽野が倒れていた。




