第36悲劇 価値観が合わないお嬢様に用はない!
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ナンシーの実家のお店の支店がある、オウーマイーガ街の街まで向かう道中。
ゴブリンの群れに襲われていた馬車を助けたら、なぜかそのまま護衛扱いになった。
とはいっても、私達は軽いランニングをするだけで、馬車の速度についていけるので軽い運動だったけれど。
「素敵でしたわ。あのような悍ましいゴブリンをワンパンで……♡」
「素材は貰って良かったのですか?」
「悍ましいゴブリンの討伐依頼がったのなら好きになさいませ」
「はぁ……」
このご令嬢。
アルマティアと仰るんだけれど、私とナンシー、キャシーには露骨に塩対応。
その代わり、ミルクちゃんとダンダには優しかった。
「この魔獣のような方々の中に、貴方が他のような美しい方々がいるなんて……。是非わたくしの屋敷に来ていただきたいわ♡」
「断るわ♡」
「なら、そこのポーターの方だけでも」
「お断りします」
「まぁ、そう言わずに」
見目麗しい二人をそばに置きたいのかな?
と思ったけれど、特に気にすることもなくランニング。
ああ、今すぐアイ・キャン・フラーイして置き去りにしたい。
正直、この方を助けたのは間違いじゃないだろうかと思ってしまうのは、心が狭いんだろうなぁ。
「ダンダさんだって、このパーティにいるよりずっとずっと良い金額で雇いますわよ?」
「いえ、俺は仕事に誇りを持ってますので」
「まぁ、なおさら素敵ですわ!」
目がハートのアルマティア様。
うーん、あまりいい感じじゃないなぁ。
助けたは良いけど、お礼もないし、冒険者なら護衛もして当たり前って考えもあまり好きじゃない。
同じ街に行くといはいえ、あまり良い気はしなかった。
すると、とんでもない事を口にしだしたのだ。
「実は、婚約者がいるんですが……いくらかの有名なゴルバディス大商会の長男であらせられても……見た目がどうしても好みじゃなくって」
あ……。
と、誰もが思っただろう。
私達はちらりと目を閉じて走っているナサリーを見つめた……。
「まるでゴリラのような身体で、握手したら骨が砕けそうですのよ。正直、ハズレを引いた気分ですの」
「……なるほど?」
「ミルクさん理解してくれます?」
「そうねぇ……。そのゴルバディス大商会と結婚したくないなら、婚約破棄してしまえば良いんじゃないの?」
「まぁ、わたくしにつく傷はないのですから、婚約破棄してもいいんですけど」
「ほほほ」と馬鹿にして笑う彼女は気付いていない。
そのゴルバディス大商会の婚約破棄した妹というのが、隣を走っているナンシーであることすら気づかないだろう。
しかも、実の兄をそこまで言ったのだ。
少なくとも、この婚約はゴルバディス大商会の方から破棄されるだろうと予測される。
すると、今まで黙っていたナンシーが口を開いた。
「ソノ、ゴルバディス大商会ノ長男ト、結婚シタクナイ為ニ、男漁リ?」
ナンシーの声は笑っていたけれど、足取りがほんの少しだけ重くなった気がした。
「男漁りだなんて。見目麗し男は隣に置いておきたいのが女性と言うものですわ。わたくし結婚しても、見目麗しい愛人を作る予定ですもの!」
「ナルホド?」
「わたくしの身体から、あんな方が生まれると思うとゾッとしますでしょう?」
「ナルホド……」
「そこの勇者様のような胸も尻もない身体の娘も嫌ですけど」
「「「「……」」」」
「ああ、早く見目麗しい男性と愛し合い、ゴルバディス大商会で豪遊しながら過ごしたいわ!」
そこまでいって、これはもう駄目だなと私達は結論付けた。
一緒にいてもヘイトは上がるし、彼女のそばにいると自分の価値が下がりそうですごく嫌。
自分で自分の価値を下げているとは思わないのかしら?
「では、我々は一足先に依頼をクリアしなくてはならないのでね」
「ダンダ」
「はい、抱っこお願いします!」
「え? 護衛はどうなさるの?」
「お金を貰ってもいないのに護衛なんてしないわよ♡」
「なら、好きなだけ払いますわ!」
「お金の問題じゃないの。信用できない人の護衛はしないわ」
「なっ!」
そう言うと私達は一斉に駆け出した。
時速百キロは出ていたと思う。後ろの悲鳴は風の音だ。
気づけばオウーマイーガ街まで後一日と言ったところだった。
「あの馬車の遅さからすれば、ここまで来るのはまだまだ当分先だろう」
「ナンシー、大丈夫か?」
「ソウネ……。アノ女ガ、義姉ナンテ、イヤネ」
「それはそうよ」
「当たり前です! それ、将来揉めるやつですよね!?」
「全くもってその通りだな! だが、ナンシーの兄がそれでもと言えば……」
「ソレハナイネ。兄ノ好ミデハ、ナイヨウダシ、直グ、婚約破棄デキルヨ」
「良かった……」
ナンシーの笑顔での答えに私達は、ほっと安堵の息を吐きつつミルクちゃんの拠点へと入る。
各自お風呂に入ってスッキリしてから、ミルクちゃんの作る手料理に舌鼓を打ちつつも、考えることはさっきの女性の事だ。
あんな風に誰かを値踏みする人と、同じ空気を吸うのは御免だわ。
「お兄さん、すんなり婚約破棄出来ればいいけど……」
「心配ナイネ! 兄、結構ドライヨ」
「そうなんだ」
「可愛イ子好キダケド、アンナ子、論外ネ!」
「「「「同意」」」」
こうして私達は異世界のお酒を飲みつつ……すっかりラガーと言うビールにハマってしまって、流石異世界のお酒はウマイ……と思いつつ、楽しみながら、明日には着くであろうオウーマイーガ街を目指すのであった。
そして、ゴルバディス大商会に到着し、ガメーラを納品しにナンシーの兄に会いに行ったのだけれど――。




