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婚活パーティは魔王城で!  作者: 寿 明結未(ことぶき・あゆみ)
第一章 恋する乙女に必要なのは、愛と筋トレと大胸筋

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第1悲劇 私の何が悪かったって言うのよ!!

久々の投稿です。

ギャグ風味恋愛小説です。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




「君はひとりで魔王を倒せる。俺たちは結婚式に遅れたくないんだ」

「俺達は待たせている、彼女や婚約者がいるんだ」

「このパーティ、俺たちの未来が新しい方向に進んでるんだ!だから、結婚式に向かうぞ!残りはお前に任せるから、頑張れよ!」


 そう言って勇者パーティは解散した。

 たったひとり、女勇者である私を残して……。


 別に、彼らがいなくとも魔王を倒すことは勇者の責務でもあるから問題はない。たぶん。

 けれど、正直言うと……ああ、私を理解してくれる〝仲間〟が欲しい!!

 それ以上に、それ以上に――。

 男が欲しい。 そう、男が、彼氏が!!

 周りの男女冒険者たちは、恋人を見つけて私のもとから去っていった……。


 卒業おめでとう!

 心から祝福しよう!

 ……でも正直、ちょっとだけ呪われろ!!

 

「ちきしょう……魔王より先に、私の人生が削られてる。勇者だって、ただの女なんだよ……」


 絞り出した悲しき声。

 ぐっとエールを飲みきり、机に樽のコップを叩きつけると、机と同時に木っ端微塵になった。

 周囲からざわめきが起きたが、そんな事はどうでも良かった!


「結婚したい! そして婿が欲しい!! 私を受け止めてくれる人が欲しい! それが魔族でも最早構わない!」


 ちくしょう! 惨めか!? 死活問題だよ!!

 このリア充共め、魔物に食われろ!!


 血涙でも流しそうな程の涙を零しつつ、雄叫びに近い心からの咆哮!

 全員が耳を塞いだのが気に入らない!

 ああ、思い出すだけでも腹が立つ!!


『ごっめーん☆ 私たち結婚することになったから、これから危ない場所はパスでよろー』

『え? むりって? わかった、いいよ。それなら俺たちとの旅はこれまでってことで! 女勇者も、魔王を倒したら早くいい相手見つけろよ!』


 何もかも忘れてしまいたい……。

 ああもう……なんで私には彼氏ができないんだよぅ……。

 私だってもう二十七歳。

 彼氏のひとりやふたりいても可笑しくないのに――いない。

 選ばれたいだけなのに……。


 ああ駄目だ……酒だ、酒がないとやっていけない。

 皆が皆、私を馬鹿にして……。


 こちとら勇者ぞ!? 珍しき女勇者ぞ!?

 なんで誰も私の魅力に気付いてくれないんだよ!!

 こうなれば、私と同じ境遇の者たちをパーティ面子に加えるしかない!

 冒険者ギルドの受付に向かい、机に手をついたらミシッと嫌な音がした。

 ……危ない危ない。


「受付のおねえさーん! ちょっと――!」

「イサミちゃん! 飲みすぎよ……何時も以上に荒れているわね」

「ミルクさーん……。私決めました~! 私と同じ境遇の人をPTで募集しまーす!」

「イサミちゃんと……同じ境遇っていうと……何かしら? 可愛いとか?」

「やだもー! 私のこと可愛いって言ってくれるの、ミルクさんだけですよ? まぁいいや。それでー! 魔王討伐より先に、私の人生を攻略する! って思ったら、私気付いたんです! 私と同じ境遇……つまり、【婚活に焦っている女子を集めたパーティ】を募集しようかと!」


 エールを片手にそう叫ぶと、ミルクちゃんは呆れた様子で「まぁ……」と口にした。

 ミルクさんは異世界転移でこの世界に呼ばれた勇者のひとり。

 中々な筋の良い筋肉……むふふ。

 でも、心は乙女なんだよね。



「それで、募集人員は……婚活女子を集めるでいいのね?」

「ええ! それで構いません!」

「ん~~。だったら、アタシも仲間に入っちゃおうかな~?」

「ミルクちゃんがですかー?」


 思わぬ言葉に、ぐいっとエールを飲み切ると「おかわり、ミルクさん! 今日はいっぱい飲むぞー!」とエールを持ってきてもらう。

 飲食代も基本王様持ち。勇者はやめられないぜ!


「それと、もうひとり、知り合いに婚活してる乙女がいるから、呼んできてあげてもいいけど」

「本当にその人、婚活に困ってるんですかー?」

「困ってる、チョー困ってる」

「なら連れてきていいですよ?」

「そう、良かったわ♡ なら、アタシも含めて一応今は三人パーティって事で」

「はーい!」

「呼んでくるからお酒は程々にね? みんなで盛り上がりましょ♡」


 パタパタと、もうひとりの〝婚活乙女〟を呼びに行ったミルクちゃん。

 異世界の色々なスキルを使えるらしく、詳しくは知らないけど凄い。

 

 あ――。後でミルクちゃんと、もうひとりの乙女と酒を飲みつつ語り合うんだ。

  今夜は眠られないぜ! それに寝かせないぜ!

 

 私だって二十七だ。

 おっぱいもない。尻もない。

 ……あるのは勇者の称号と、国王持ちのお金だけだ。

 でもそれで〝選ばれる女〟にはなれないらしい。

 

 なのに、誰も求婚してこない。

 私は絶対、幸せになる……絶対にだ!

 そんな事を思いつつ二十分後。

 受付嬢の格好をやめて、普段着に着替えたミルクちゃんと……。


 

 ■■■■


 

「初めまして勇者さん。我が名は、キャサリン。戦士をしている!」

「お、お、おう……」


 身長二メートルは超える筋肉乙女だった。

 名前がまたいい。

 キャサリン。

 でも、でも、なんというか、見た目が……。


「その見た目……あ、ビキニアーマー? アマゾネス風?!」

「いかにも」

「お、おう」


 こりゃ一本取られたね!

 まさにアマゾネス! イエス! アマゾネス!

 おっぱいというより大胸筋!

 シックスパックの腹筋も、盛り上がった背筋も輝いてるぅ!

 その上輝く金髪に彫りの深い素敵なお顔!

 分厚い唇!


 乙女らしい瞳!


「イイネ!!」

「婚活女子があつまると聞いて……」

「私達のPT名を仮につけるとしたら……」

「【ゼクディ】とかどうかしら?」

「「ゼクディ?」」


 ミルクちゃんから案を出されて思わず彼女を見ると、ニッコリと笑って美しい人差し指を私の唇につけると――。


「アタシの元いた国でよく読まれていた……〝結婚を特集した素晴らしい分厚い本〟よ」

「「〝結婚を特集した素晴らしい本〟……」」

「だって、アタシ達はこれから婚活するのよ? 目指すは結婚でしょう?」


 バチーンとウインクしてきたミルクちゃんに、私達は目を輝かせて頷いた!

 確かにそうだ! 目指すは結婚! 間違いなし!

 流石ミルクちゃん! 乙女の事をよくわかってるぅ!


「流石ミルクちゃんね! PT名は【ゼクディ】にしましょう!」

「決まりね? リーダーはイサミちゃん。副リーダーはアタシでいいかしら?」

「モッチローン!」

「じゃあ、一応作ってくるわね。後ひとりくらい明日には集まると良いけど」

「そうだねー」

「飲みますか」

「キャサリン、今日は寝かせないぞ?」

「いやん♡」

「「「あははは!!」」」


 こうして、私達は朝まで酒をかっ食らい、肉を貪り、大いに笑って飲んで食べた!

 乙女らしさ?

 そんなのは、今日はお預けよ!


「ウッソ――!? イサミちゃんそんな事言われたの~!?」

「あり得ないな……」

「マジありえないよね……。煽り方がマジ心臓に突き刺さるわ」

「可哀想……やだー……イサミン、ミルクがギュッとしてあげるー」

「ミルクちゃーん……っ! 上質で豊満な雄っぱーい♡」

「おっぱいなら、キャシーも負けてない!」

「ムッキムキのパッツンパッツン!」

「やっぱり大胸筋は正義よね!」

「私はつんつるてんだけどね!」


 ――そんな事を、笑いあい慰めあい、鬱憤を晴らしあい……。

 私達は朝まで楽しく、そして時に虚しく、でも、明るく盛り上がって解散したのだけれど――。


 気付いたらいつも泊まっている宿屋で寝ていて……。

 可笑しいな、私確か……酒場で寝たような?

 という不思議な気持ちになりつつ、シャワーを浴びて着替えを済ませ、洗濯を頼んで冒険者ギルドへ歩く途中で思い出した。


 血の気が引いていく。

 そう言えば昨日……酔っ払った勢いで同じ境遇の女子とのPTを結成したんだった!

 ミルクちゃんまで巻き込んじゃって……急いで冒険者ギルドに行かなきゃ!

 キャンセル出来るものならしたいけど、ミルクちゃんがいるから多分出来ないだろうし……どうしよう。


 兎に角待っているであろう皆さんを待たせる理由にはならない!

 私は急ぎ酒場に到着すると――。


「あ、起きた? おはよ?」

「ミルクちゃん! キャシーも!」

「おはよう。昨日、ぐっすり寝てた」

「先に寝ちゃった。なんか吐き出すもの吐き出したら楽になっちゃって」

「それは良かったわ。それと、もうひとり、婚活女子がきてくれてまーす♡」


 そう言ってミルクちゃんが手を伸ばした先には、これまた身長約二メートルって感じの……見事な巨体!

 輝く銀髪、タレ目の美しい青い瞳……ふっくらとした分厚い唇!

 ビキニアーマー二人目である!


「私、踊り子、ナンシー、言うね! 女勇者、ヨロシクヨ」

「お、おう。異国の方でしたか」

「ナンシーさんの二刀流は一流よ! さて、簡単に肩慣らしでも行きましょうか」

「そうだね……」

「あ、ナンシーを入れた【ゼクディ】はちゃんと登録してきたから安心してね♡」

「さすが、元受付嬢! 仕事がはやーい!」


 これは最早、キャンセルはできそうにない雰囲気!

 とりあえず近くの洞窟で肩慣らしかな?

 この人たちのレベルも気になるところだし、冒険者ランクも気になるもんね。


「じゃあ、キャシーおすすめの狩り場紹介するよ」

「お、キャシーさんオススメですか? 行きましょう」

「さっき言ってた場所ね? なら、この依頼は受けておくわね。先に外で待ってて」

「はーい」


 ん? 依頼? 依頼が上がるような場所に行くのかな?

 まぁいいや、いざという時は、私が守れば良いもんね!

 道中歩きながら彼女たちの冒険者ランクとか色々質問しようっと!


「キャシーの言うおすすめの狩り場楽しみ~!」

「ンフフ」

「楽しみネ!」

「腕がなるわね!」


 こうして、私は軽い気持ちでキャシーについて行ったのだった。

 しかし――この婚活パーティ。

 結婚への道は、魔王より難易度S!

 魔王討伐より難しい――それが、私の人生攻略戦だった。

 

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