前へ目次 次へ PR 16/38 第16話 約束のその先編 それでもペンを止めなかったのは、 このまま何も言わないほうが、 わたしにとっても、あなたにとっても、 きっともっと良くないと分かっていたからだ。 封筒に便箋を入れて、封を閉じる。 あなたの名前を、表には書かなかった。 あくまでこれは、あなたの会社の社長への手紙。 わたしと、あなたと、仕事の線を、 どこかの大人に見てもらうための、一通。 ポストに投げ入れたとき、 封筒の重さより、 胸の中がふっと軽くなったことだけを、 わたしは、今でもはっきり覚えている。