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第六章 光の向こう側5

 明日歩の聖なる反逆は、夏を目前に実行に移された。

 忽然と姿を消してしまったのだ。

 前日まで、普通に仕事をこなしていた明日歩である。

 あずさの一件で、ぎくしゃくしたもののそれは既に和解していた。

 積極的に仕事に取り組んでいたし、豊富まで語っていた明日歩である。

 対応に追われる中島の元へ、奈緒から連絡が入ったのはその時だった。

 少し様子がおかしいからと切り出され、中島ははやる気持ちを抑え、嘯く。

 「ああそちらに戻っていましたか? なら良かった。体調が良くなかったみたいだから、休みをやったんです」

 「でも撮影が入っていたんじゃありませんか?」

 「いえいえ、それは来週からで大丈夫なので、明日歩君にはゆっくり躰を休めるように伝えてください」

 隣でやり取りを聞いていた野村が、安堵する。

 「久しぶりの休暇だ。ここ一年、まともな休みがなかったしな」

 電話を切った中島は、野村の言葉に苦笑いをする。

 「入るわよ」

 木綿子がコーヒーを運んで入って来る。

 「明日歩が辞めたい理由って、女性問題?」

 コーヒーを配りながら訊く木綿子に、中島が頷く。

 「あの子よね。高校時代から付き合っている……、名前なんて言ったかしら?」

 「結城あずささん」

 「その、結城あずささんって子に、中島君、会って来たんでしょ? 話し合いはついているものとばかりと思っていたんだけど」

 「ああ。明日歩のデビューが決まってすぐに、学校近くの喫茶店でな。でも、こちらが話す前に、彼女から大丈夫ですって言い出されてな、驚く俺に、覚悟はしていましたからって、手切れ金として用意したお金も、一切受け取ってくれなかった。明日歩は売れちゃいますよね。あのマスクだし、高校の時もかなりモテていたしって、言ってな。てっきり泣かれるもんだと思ってたから、拍子抜けしちまったくらいだ。な~んか夢を見ていたような気がしますって笑って言ってくれてな」

 「で、彼女は言葉道理に、明日歩の前から姿を消した」

 木綿子の言葉に中島は、ああと頷く。

 「まさか、明日歩があそこまで御執心だとは思わなかったな」

 野村がため息交じりで言うと、木綿子が明日歩だからじゃないと言う。

 「要するに蛙の子は蛙ってことよね。明日歩の中にしっかりと、歩のDNAが流れているってことでしょ? 一筋縄ではいかないって、どうして分からなかったの? まったく、嫌になるくらい似ているわね。これじゃ歩と同じじゃない。さて、どうします? 劇団マーブルの存亡がかかっているわよ。野村社長に中島専務。今度は失敗しないで下さいよ」

 「さて、どうしたもんかな専務」

 中島は、さあと肩を竦める。

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