第五章 らいむらいと8
「中田明日歩!」
ドアが開いた途端、目がクリッとした女性にそう言われ、明日歩はドキッとなる。
「本当にそっくりよね」
その女性にパッと手を取られ、こっちよと連れて来られ、今はソファーに座らされている。
彼女はじろじろと眺めてから、うーんと唸ってこの一言を発していた。
「あのぅ?」
困ったように話しかける明日歩に、彼女の大きな目が更に大きく開かれ、急にゲラゲラと笑い始める。
「ごめなさい。パパがいつも酔うと話してくれているのよ。あなたのお父さんのこと。パパの机には、今でもあなたのお父さんが舞台用に撮った写真が飾られているのよ。見る?」
この雰囲気、知っている気がする明日歩である。
「ちょっと待っててね。すぐ戻って来るから」
明日歩の返事など聞かずに、彼女は跳ね上がるように立ち上がると、そのままどこかへ行ってしまった。
出ばなをくじかれ、怖気づいた明日歩は、このまま逃げだしてしまおうと試みるが、あえなく失敗に終わってしまっていた。
数秒もしないうちに、彼女が戻って来て、勢いよく明日歩の隣に座ったかと思うと、持ってきた写真を目の前に突き付けてきたのだ。
「ほらそっくりでしょ?」
勝ち誇ったように笑われ、明日歩はリアクションに困った。
「良いよね。イケメンって、何を着ても似合っちゃうだもん。一度、お会いしたかったなぁ。ねぇ、お父様って、どんなお方だったの?」
「はぁ」
「やっぱりお家でもかっこいいのよね。うちのパパとは大違い。一度でいいからこういうパパで、ドライヴとかしてみたかったな」
「ドライヴ?」
「子供の頃、凄く憧れていたんだ。こう片手でハンドル切ってバックさせて、抱っこされて車を降り立つってやつ。ほらよく車のCMとかであるじゃない。うちのパパだと狸に抱かれている子熊的な絵になっちゃうのよ」
どう答えて良いのか分からないでいる明日歩を、彼女は指で作ったアングルで見てくる。
「やっぱいい。私の想像していた通り」
明日歩は押されっ放しで、一瞬、自分が何をしに来たのか目的を見失いかけてしまっていた。




