第五章 らいむらいと6
自分の気持ちを一番理解してくれるのはあずさである。
早速相談するため、明日歩はあずさと待ち合わせていた。
「何?」
昼食を一緒に食べているあずさの前に、間宮が持ってきた封筒を出す。
「中を見て」
学食の一番右端の席で、サンドウィッチを抓んでいるあずさは紙ナプキンで、手を拭いてから、なあにと中身を取り出す。
台本とリーフレット。DVDはさすがに持って来ていないが、話の流れでは、それも見せようと思っていた。
あずさは、驚いたように顔を上げる。
「これは、大学主催のものではないわよね? それになぜ明日歩が主演のところへ名前が書かれているの?」
「参ったよ。親父の奴が、死ぬ前に仕込んでいったものらしいけど……、寝耳に水って正にこのことを言うんだな」
力なく言う明日歩は、深い溜息をつく。
もうこれで何回目だろう? 昨日からずっとこの状態で自分では答えが出せずに、あずさへ助けを求める明日歩。
ガブリと水を飲み、あずさの様子を伺う。
「でも、ここまで手を込んでいるのを見ると本気よね? 断れないんじゃないの?」
あずさは冷静に分析をし、的確な指摘をする。
明日歩は間宮とのやり取りを思い出し、苦々しい表情を浮かべる。
「事情は分かりました。でも、それはオレの意思に反することでまったくもって芝居に興味がありません。ですからその話は」
う~んと唸った間宮が、顔を顰める。
「何千枚も刷られたポスターや、リーフレットを回収するのは無理だろうな。賠償金が発生してしまうが、君、払える?」
真顔になった間宮に言われ、喉を鳴らした明日歩はおし騙されてしまっていた。
明日歩も負けまいと、断る権利はあるはずだと食い下がった。
間宮は追い打ちをかけるように、裁判沙汰にまで発展するけどと、暗い表情で不気味な笑いを浮かべられ、明日歩の背中にゾッと寒いものが走る。
「そうなんだよな。どうすりゃいいんだ? 賠償金なんか払えれーし」
明日歩は頭を抱え込む。
そんな経緯も正直に話す明日歩を見て、あずさは小さく笑ってみせる。




