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第二章 不滅のヒーロー14

父の死を悼み集まって来た人たちに驚きを隠せない明日歩。やがてこの人々が、明日歩の人生に大きくかかわって来ます。

 ゆっくりと陽が沈み辺りが暗くなり始めた頃、親戚たちが集まり始める。

 一目だけでも挨拶をさせて欲しいと、近所の人たちが歩の顔を眺めては、ハンカチで目を覆う。


 黒い高級車が家の前で止まり、中から出て来た人物が足早に家の中へ入って来る。

 その人物を見て、中島が力なく、ああ来てくれたんだ、と声を掛ける。

 コクンと頷き、あいつはと尋ねた。

 「隣りの部屋で寝ているよ。会ってやってくれ」

 中島にそう言われ、その人物は襟を正し、仏間へ入って行く。

 「中島さん、あの人」

 明日歩に尋ねられた中島は、仏間に目をやりながら小さく微笑む。

 「ああ、間宮徹だ」

 驚きのあまり、大きな声を出しそうになった明日歩は、慌てて手で口を塞ぐ。

 「あいつら、親友なんだ」

 間宮の泣き声が漏れて来て、明日歩も仏間に目をやる。

 奈緒の表情は硬く、話しかけられたことに答えているようだが、明日歩は中島をチラッと見る。

 中島も、その表情を気にかけているようだった。

 「母さん、大丈夫かな」

 「ああ大丈夫だ。奈緒さんはそんな軟じゃないはずだ」

 笑みを浮かべた中島に肩を叩かれたが、明日歩は不安を拭いきれなかった。

 病院を出てからの奈緒は、一滴も涙をこぼしていなかった。

 ただ茫然と、歩のそばに座り、顔を眺めるばかりでいる。ろくに食事もとっていない状態だった。

 人が続々と集まり、狭い茶の間はあっという間に人であふれかえす。

 葬儀場は今日でも使えると言われたが、ここに集まった誰もがそれでは奈緒さんと歩が可哀想すぎると反対をした。

 「ここで一日ゆっくり、過ごさせてからでも遅くあるまい。歩と酒も一緒に飲みたいし」

 ずんぐりむっくりとした男性が、にっこりと明日歩に微笑みかける。

 この人も、テレビや映画で見たことがある人だった。

 「僕、野村と言います。小さい頃、何度か会った事があるんだけど、覚えていないかな」

 「ないですよ。最後に会ったのは、2歳の時でしょ」

 中島が言う。

 かなり酔いが回っているらしく、呂律が回っていない。

 「君はさ、本当に幸せもんなんだぞ」

 野村の言葉に、明日歩がたじたじになる。

 「僕かぁ覚えているな。君が生まれた日のことを」

 「はいはい。もうそのくらいにしときなさいよあなた」

 この人も知っている。脇役だけど、よくドラマとかに出ている女優さんだ。

 「木綿子、でも、僕は話したい」

 「はいはい。もう分かったから、今日のところは帰りましょ」

 「嫌ダメだ。僕は話したいんだ」

 「もうこんなに酔っちゃって、明日歩君、本当にごめんなさいね。この人、悪気はないのよ」

 「木綿子さん、良いじゃないですか。今日は歩のお弔いなんだから、聞かせてあげましょうよ。どんだけ歩が、明日歩の誕生を喜んだかを」

 目を真っ赤にした薫子が言うと、隣に座る由紀子も頷く。

 横に座っていた中島が、明日歩の頭を抱え込む。

 

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