激震
「わしは、その相手は菊野と言うが、ずっと援助をしておる。孫は、佐伯さんとこの養女になっとるんだ」
「え・・?そんな事が・・?」
郁子もそこまでの情報は無かったようで、雄一郎を凝視した。
「わしはな、例え郁子さん、あんたには本当に申し訳無いが、外でつくったとはいえ、孫は孫・・同様に死にいく者としてこれから先を考えてやりたかった。君成のしでかした事でロシアに拿捕された第二福栄丸の船長夫婦は、間もなく戻って来るじゃろう・・君成には、郁子さん、あんたを社長としてREC株の枝会社になるが、REC食産㈱を見て欲しい。無理を承知で頼む。また、わしは泰江も裏切っておる。その件も含めて、生きている内に何とかしようと思うとる」
郁子の眼から、滂沱と溢れる涙。もう雄一郎は最期の最期まで経営者であった。そして祖父であった。外で作った子を見てくれと言わない。その船長夫妻の子として幸せに暮して行けるのなら、自分が出来る精一杯の君成の後始末も果たし、それが旧友を救い、君成への最期のチャンスも与えてやろう・・そんな気持ちに泣いたのだ。
そして須崎は、佐伯に呼ばれていた。
「え・・来月、息子さん達が戻って来られるんですか!」
佐伯の眼は優しかった。




