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帰郷
二人が顔を見合わせると、須崎は立ち上がり、第一営業部に挨拶に行かせてくれと、仁科に申し出る。渋面を作りながらも仁科は承知した。既に自分の役職の2階級特進をしてている須崎には、何も言えなかった。
須崎が仁科と立ち上がった後、暫らく屋鍋はその椅子に座っていた。彼の言葉が妙に引っ掛かったからだ。姥捨て山の根室営業所から異動する所ってあるのかな・・そんな事を思っているのである。
「よう!久し振り!」
須崎は本社では結構人気者だった。それは彼が嘘をつかない好人物で、一緒に飲みに行く者も多かったからだ。
「あ!久し振り!」
何人かが須崎に笑顔で頭を下げた。仁科はこの社内での職制を非常に重んずる男。既に君達より、上司になった須崎にその軽い挨拶はいかがなものか?と睨んでいるのだ。それはその同僚達も分かり、黙ってぺこっと頭だけを下げる者が増えた。




