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接点
「ふうむ・・秀一と、理恵は恐らくそんな事を知らんだろう、裏に君成前社長が居ると分かれば、この話ご破算になるかも知れん・・けど、こんな情報を流して須崎君の立場が悪くならんのだろうな?」
須崎はにこっと笑った。
「ありません。当社が損害を受ける事など無いと思っております。確かに、栄海産と、佐伯海産の合併自体は、佐伯さんはお怒りになると思いますが、悪い話では無いと思います。組織が大きくなれば、息子さんの言われるように、企業として、政治家にも大きな発言力が出て来ますしね」
佐伯は眉間に皺を寄せたまま、返事は無かった。須崎は若菜をこの日呼んでいた。学校には通っているようだが、相変わらず無口で表情の無い顔だった。
「どうしたの?両親が戻って来たから、若菜ちゃんも嬉しいだろう?」
こくんと首は振るものの、彼女の心の中は読めはしない。
「あの!」
ふいに須崎の背後から声、若菜がびくっとした。母理恵であった。
「え?」
「うちの娘に何か御用ですか?マスコミの方なら、お帰り下さい!」




