接点
「ふうん・・屋鍋派が、かなり北海道を侵食しつつある訳か・・これは須崎君も、今までのようには行かないぞ。佐伯海産だけ頼みのやり方では、この先潰れるかも」
黒田社長はそう呟いた。会社は当然利益を追求する所だ。この理論は、屋鍋に圧倒的に理がある。
これは、意外な接点があった。REC食品㈱を今し切っているのは君成の母郁子。彼女は、栄海産を手中にしようと動いていたのである。それは、枝会社に追いやられはしたものの、自身の子である君成を再び㈱RECの中心に育てる為に・・その後ろ盾は、祖母。勿論㈱RECの雄一郎を裏切るつもりは毛頭無い。しかし、創業主である血族を追いやった黒田体制には、幾ら世間知らずとは言え、その下克上を、郁子は許せなかったのである。静かな反乱が始った。それは雄一郎が描いていた、自分の死後の思いとは違う方向に向かって・・
木下が、常務となった立場で、須崎を呼んだ。東京本社に戻るのはあれから又数ヶ月の事だ。
「よう、色々又大変見たいだな」
「常務も、色々黒田体制下でご苦労が多い事と存じます」
にこっと木下は笑う。たった数ヶ月の中で、須崎は以前とは見違えるほど精悍で、立場を意識が変えている事を知ったからだ。




