私の魂の顔はどんな顔?
まず、公爵閣下がどこまで確信を持って発言しているのかは感情の起伏が少ない顔からでは見当もつかないため、すっとぼけることにした。
「何を言ってらっしゃってるのですか?確かに私は悪女と呼ばれている事実を知り、これから行動を変えていこうと奮闘している身ではございますが…私がシャーロットではないと言われるとは些か納得できませんね」
あたかも何を言ってるのだこいつはといった様子で話すことを努め、困ったように首を傾げて口の前に手を当ててみせる。
その様を公爵閣下は何を考えているのか分からない表情で暫く見つめた後、口を開いた。
「これは…言っていいのか分からないのだけど。君はシャーロット嬢と魂が違う。本来の君はこの世界では珍しい黒い瞳をしているんだね」
「恐らく、君は異界の魂なのかな?」
「…へ?」
この目の前の男は今何と言ったのだろうか。
混乱で頭の中を情報がグルグル巡る。
(この男は今黒い瞳と言った。そして本来の私とも言ったのだ。この男は本当の私の姿を知っているということになる。)
しかし、この世界に来てからはずっとシャーロットの体に入っていたというのに何故本来の姿のことを知っているのだろう。
驚きのあまり口がハクハクと動くだけで音を成すことはない。
思わずふらつくように一歩下がると力が入らず後ろに倒れそうになるがそこまで気がまわらず受け身の姿勢をとることもできなかった。
倒れるその瞬間私の腕を肩が外れるかと思うくらいに引っ張られ公爵閣下の体へ飛び込むことになる。
「今度は君が転ばないようにしたがこれでいいか?」
何事もなかったかのように公爵閣下は平然と話しながら体から私を引き剥がしていた。
「いや、それより…なんで私を」
「何?」
「…なんで私の本来の姿を知ってるんですか!?」
私が混乱によって涙が出そうになりながらなんとか声を出すと、公爵閣下は首を傾げている。
「そんな事が気になっていたの?理由は単純。僕が真実を映す鏡という力を持った精霊と契約してるからだ。」
公爵閣下はそう言って手のひらを宙に翳すと、美しい蒼白い光に目がくらんだ。
光がいつの間にか形を成し、それが水であったことに気がつく。
周囲に光を反射する水球が浮かび始め、集まり1つに纏った。
水が集まった先に出てきたのはそれはそれは綺麗な女性だった。
しかしその女性は浮いているしなんなら公爵閣下の手のひらから出てきているし体全体が少し揺らいでいる体中水色の人は人ではないだろう。
「水の精霊…?」
「そうだよ。僕の契約している精霊は人の真実を映す能力を持ってる。つまり魂の姿だ。だから精霊を呼び出さなくても僕自身人の魂の姿が見えるようになったんだ。」
精霊が手を出すととそこから水が大きく広がり少し覗き込んでみると映っていたのは、見慣れたシャーロットの体に入る前の私の本来の姿だった。
こちらの世界に来てからずっと鏡に映るのはシャーロットだった為、本当の私を見るのは久しぶりで水に映る私は無表情だった。なんだか虚しい表情。元の世界では私は愛されなくて愛し方も愛され方も知らず人を求めるだけになっていたけれど私の魂はこんな寂しい人間になっていたのだと気付かされる。
ぼーっと水の鏡を眺めていたら公爵閣下が突然口を開いたと思ったら精霊を体へ帰した。
「あ、」
「理由も分かった事だしこれで話は終わりだね。じゃあ」
そう言って手を振ってスタスタと離れていくのを見ているうちにハッとして急いで追いかけ服の裾を掴んだところで大声を出す。
「公爵閣下!あの、取り引き!取り引きしませんか…?」




