♥ 瀬圉家 2 / 本家 2 / 別邸 2 / リビング 2
衛美
「 ねぇ、花は未だ咲いてないわよね? 」
玄武
『 妖花か?
未だ咲いてはないな。
妖花を咲かせるには大地に張った根が新たな環境に慣れる必要がある。
それに栄養も必要だからな。
妖花が咲く時には、甘い香りが漂う。
人間には毒だ。
吸い込まない方がいい 』
衛美
「 吸い込んじゃったらどうなるの? 」
玄武
『 一種の麻薬のようなものだ。
妖樹に対してメロメロになる。
生まれてくる妖魔に喰べさせる為に餌を集める為の香りだ 』
衛美
「 香りは防げないの? 」
玄武
『 空気に混ざるからな。
無理だ 』
衛美
「 マスクをしても? 」
玄武
『 マスクをしても息は出来るだろう。
無理だな 』
衛美
「 …………防ぎようがないなんて有り得るの?? 」
玄武
『 香り成分は空気に溶けてしまうからな。
防護マスクをしても防げないな 』
衛美
「 ──じゃあ、妖魔は倒せるのよね? 」
玄武
『 一応は生物だからな。
倒せない事はないな。
倒せる事は倒せるが、一般人には無理だ。
妖魔を構成している魔素を消し去る事が出来るのは、法力の使える陰陽師,退魔師だけだ。
霊的存在ではないからな、祓う事や除霊,浄霊等出来ない 』
衛美
「 お祖父様と伯父様に教えないと! 」
玄武
『 態々教えるのか? 』
衛美
「 教えるに決まってるでしょっ!!
放っとけないもの。
因みに妖樹は燃やせるの?
切り倒したり出来るの? 」
玄武
『 出来ないな。
空気中に漂うあらゆる不純物を体内へ取り込み、光合成によって、体内で清浄な空気へ変換し体外へ吐き出す。
人間には嬉しい現象だ。
不純物を体内へ取り込み、新たな環境に慣れる為の作業であって、人間の為ではない。
不純物は無くならないからな、妖樹には楽園だろう。
環境に順応出来ると、取り込んだ不純物を体内で魔素へ変換させる。
十分な魔素が妖樹の中に蓄積すると、妖樹は妖花を咲かせる。
順調に進めば妖花が咲くのは1ヵ月後か 』
衛美
「 1ヵ月?!
本当ね?
花が咲く迄は1ヵ月も時間があるのね? 」
玄武
『 早く見てもな。
但し、霄囹が関わっているなら、早まる可能性はある。
早々に手を打つなら、うかうかはしていられないな 』
衛美
「 どうしたらいいの?
燃やせないし、切り倒せないなら、どう対応したらいいの?? 」
玄武
『 空気中に漂う不純物を取り込ませなければ、遅らせる事は出来るだろうが…。
霄囹も妖樹の事は知っている。
何等かの妨害はして来るだろうな 』
衛美
「 ………………そんなぁ… 」
玄武
『( ──霄囹め、余計な事を…。
そんなに魂の奧底で眠っている眞小呂を呼び起こしたいのか?
眞小呂が目覚めれば、衛美と入れ替わる。
衛美に戻れる保証はない。
だが…眞小呂なら──。
自身の霊魂を式神黄龍へ変換した眞小呂ならば……妖樹を消滅させる事は出来ずとも、どうにか出来るかも知れないが…。
確証はない── )』
衛美
「 玄武、どうしたの? 」
玄武
『 …………どうもしない。
衛美の気が済むなら教えればいい 』
衛美
「 玄武……有り難う!
お祖父様と伯父様に話すにしても、妖樹の資料を作らないといけないわね。
玄武、手伝ってね 」
玄武
『 監修なら任せるといい。
幼児にも解るように教えてやろう 』
衛美
「 幼児は言い過ぎよ? 」
私は玄武に手伝ってもらいながら、突然現れた地震を起こした原因でもある妖樹に関する資料を手作りする事にした。
今年のGWは、とんでもない事になっちゃったけど、残念がってる場合じゃないと思うの。
お祖父様と伯父様に資料を渡して読んでもらっても──、玄武から教えてもらった事を話しても──、2人から信じてもらえるとは限らない。
一応は聞く耳を持ってもらえて、話を聞いてもらえたとしても──、玄武と私が別邸に戻った後、資料がゴミ箱へ捨てられてしまうかも知れない。
悪い事ばかり考えても仕方無いと思うけど、可能性は捨て切れない。
幾ら実体化した玄武を実際に見たからと言って、丸々全てを素直に信じてもらえるとは思えない。
難しいと思う。
何処まで信じてもらえるか分からないけど、私に出来る事があるなら、少しでも何かしたいと思うの。
衛美
「 ──どうかしら?
これで大丈夫かしら? 」
玄武
『 そんなものだな。
必要があれば実体化してワタシが話してもいい 』
衛美
「 玄武……。
どういう風の吹き回しなの?
有り難いけど… 」
玄武
『 単に暇潰しになればと思っただけだ。
鴇胤が信じないなら別にそれでも構わない。
7ヵ月後が楽しみになるだけだからな 』
衛美
「 玄武……。
──お祖父様と伯父様に話す前に弓弦さんには話しておきたいわ。
弓弦さんなら玄武の凄さを間近で見て実感してるし、絶対に信じてくれると思うの! 」
玄武
『 衛美、無闇に “ 絶対 ” という言葉は使うものではないぞ。
人間は〈 久遠実成
驕り高ぶるのは良
衛美
「 別に驕ってないし…高ぶってもないんだけど… 」
玄武
『 人間に “ 絶対 ” はない。
軽
衛美
「 玄
…………そうよね?
折角、玄
なるべく気を付けるようにはするわ… 」
玄武
『 不服そうだな。
そんな衛
衛美
「 …………もぅ…(////)
私は大学生になったんですからね!
子供扱いは止
玄武
『 子供扱いはしてない。
妹扱いだ 』
衛美
「 言い方を変えたって駄目なんだからね! 」
玄
もうっ!!(////)