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♥ これは式神  作者: 雪*苺
十日目 / 水曜日 5月1日
71/104

♥ 依頼場所 2 - 3 / 廃神社 2 / 退魔師という仕事 5


厳蒔弓弦

げん、この神社には『 こんは無い 』と言ったな。

  盗まれでもしたのか? 」


玄武

「 ──いや、盗まれてはない。

  壊されたようだ 」


厳蒔弓弦

「 壊された?

  こんを壊すとは随分な罰当たりな事をする奴がたものだな 」


玄武

れいかんの弱い人間とは恐れ知らずなものだ 」


厳蒔弓弦

「 祭殿にまつられていたこんを壊したのは悪徳陰陽術師ではないのか? 」


玄武

「 いや、それは無い。

  悪徳陰陽術師はこんを壊すような罰当たりな行為はしない。

  どんなに悪どい悪さをしても、天──〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉に唾をくような真似はしない。

  〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉の存在を畏れているからだ 」


衛美

「 へぇ……なんか以外なのね… 」


玄武

「 〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉に罰当たりな事をする生物は地球上を探しても人間だけだ。

  嘆かわしい事だな 」


衛美

「 ……………… 」


厳蒔弓弦

「 悪徳陰陽術師でなければ誰なんだ?

  この団地に暮らす者か? 」


玄武

「 いや、違うな。

  他県の人間だ。

  こんを壊した張本人はとっくの昔に死んでいる。

  子孫達は悪因縁を受け継ぎ、さま(ざま)な原因不明の現象に悩まされているようだ 」


衛美

なんで子孫達の現状をげんが分かるの? 」


玄武

「 式神に調べさせたからな。

  故意でこんを壊した以上、子孫達が救われる道は1つしかない 」


衛美

「 あるの?

  救われる方法が! 」


玄武

「 まぁあ。

  山口県のかにほんもの── “ 偉大な哲学者 ” に助けを求める事だ。

  人間の身体からだには限界と寿命があるからな、既に亡くなっているかも知れない。

  子孫がれば〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉の教えを受け継いでいるかも知れないな 」


衛美

「 山口県……。

  それって、まなびで勉強してる人達が、車に乗り合わせて毎月1回は行ってる所…だったりする? 」


玄武

なんだ、それは知ってるのか。

  えいは知らないと思っていた。

  意外だな 」


衛美

「 知ってるわよ!

  私は行った事はないけど、えいは次期当主として必ず参会してるみたいだし。

  車で山口県へ行くなんて大変よね。

  片道9時間も掛かるんだもの 」


厳蒔弓弦

げん、原因不明の現象に悩まされている子孫達に “ 救われるの道がある ” 事を教えるのか? 」


玄武

「 教える義理はないな。

  、教える必要がある?

  第一、信仰心の欠片も無い子孫達だぞ。

  教えたとしてだ、素直に聞く耳を持つと思うのか?

  家庭に拝む対象も無く、〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉の存在を信じ、敬う[ 敬神 ]と、両親をはじめとする先祖の恩に感謝し、大切にする[ 崇祖 ]を否定している。

  家族一緒に墓参りをして、先祖と自分との関係に思いを馳せる事をとおし、人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深める為の[ 宗教的情操 ]も欠落している。

  先祖だい(だい)世話になっている菩提寺すらも蔑ろにし、先祖だい(だい)続く家墓も勝手に墓仕舞いするだけでなく、納骨されていた先祖達の遺骨を散骨処分するような罰当たりな奴等だぞ。

  仮に教えたとして、素直に頼ると思うのか? 」


衛美

「 そ…そんなに酷いの?? 」


玄武

「 〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉がさだめられた大自然の法則から外れる罰当たりな[ 葬送をすすめる会 ]の会員でもあるし、[ 葬送 ]を家業として世間にも広めているしな 」


衛美

「 えっ……。

  それって…かなりまずい事なんじゃないの??

  ばちとかたたりが起きる原因を自分達で作ってるって事よね?? 」


玄武

「 [ ばち ]や[ たたり ]は〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉からの[ 合図 ][ お知らせ ]だ。

  墓や骨が祟った結果ではない。

  そもそも、墓や骨は祟りはしない。

  〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉が、墓や骨を粗末に扱うという間違った考え方から救い出し、正しく供養をしていくように人間をぜんどうしている事を人間が理解しなければならない。

  骨や墓を粗末にして平気な人間が増えれば、なによりも人間の尊厳が失われ、社会も大きく乱れていく。

  間違った考えに傾いていかないように、人間は〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉がさだめられた大自然の法則の存在を知り、学ばなければらない 」


厳蒔弓弦

しかし、現代社会では既に[ 葬送 ]は世間に浸透してしまっている。

  当たり前のように墓仕舞いはされているし、さま(ざま)な自然葬も増えてているだろう。

  散骨,手元葬,ダイヤモンド葬,土葬,樹木葬,海葬,海洋葬,空葬,バルーン葬,宇宙葬…まだ(まだ)探せばほかにもあるだろうしな。

  [ 葬送をすすめる会 ]の支部が日本中にあり、自然葬を薦める寺まであるしな。

  幾ら誤った事をしているとはいえ、日本全国に広まってしまったこれを正す事は容易ではないだろう 」


玄武

「 放っておけば、人間の尊厳は失われ、今以上に社会は乱れ、治安は悪化し、暮らしにくくなるだけだ。

  人間は[ ばち ][ のろい ][ たたり ]のたぐいが昔から大好物だからな。

  原因不明の現象に耐えられなくなればいやでも霊能者,占い師,祈祷師,祓い屋…などを頼り、大金をはたいて助けを求める事だろう。

  カモり放題ではないか。

  オカルト業界はます(ます)ボロい商売になり、面白くなるぞ。

  見物だな 」


厳蒔弓弦

「 …………否定はしない… 」


衛美

「 ……でも…自分達よりも先に子供が亡くなって跡継ぎがないとか──、子孫に迷惑を掛けたくないとか──、子孫はるけどいやがって跡を継いでもらえないとか──、ほんは先祖だい(だい)から受け継いでいる家墓を守り続けたいと思っていても、どうしようも出来ない事情で泣く泣く墓仕舞いをしないといけない人達がるのも事実でしょ?

  そういうやむにやまれない事情で墓仕舞いをしないといけない人達も[ ばち ][ たたり ][ のろい ]を受ける対象になってしまうの? 」


玄武

えい、〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉からの[ 合図 ][ お知らせ ]だと言ったばかりだろう…。

  それは人間の勝手な事情だ。

  そうならないようにする為の努力をさん(ざん)おこたってたツケが結果となって現れただけだ。

  自業自得というものだ。

  〈 久遠(しん)実成(ぶつ) 〉のさだめられた大自然の法則には、人間の都合も事情も関係無い。

  そもそも、世界は人類を中心に動いていない。

  大事な事だぞ、忘れるな 」 

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