♥ 依頼場所 1 - 1 / 平地 1 / 退魔師という仕事 1
──*──*──*── 依頼場所
玄武の転移陣で到着した場所は、人気のない何処か。
本来は見晴らしのいい場所なのだろうけど、霧が出ていて、周りが見えない。
衛美
「 玄武……此処は何処なの?
霧が凄くて周りが見えないんだけど…… 」
玄武
「 平地だな。
此処は “ ドリームタウン ” なる街の建設予定地だそうだ。
夜な夜な妖かしが出て工事が進まなくて放置されている 」
厳蒔弓弦
「 他の陰陽師や退魔師はどうなんだ?
妖かしを退治は出来なかったのか? 」
玄武
「 完全にお手上げ物件だな。
盥回しにされた挙げ句に御蔵入りになっていた37年程前の依頼だ 」
衛美
「 さ…37年前の依頼なの?!
じゃあ、此処は37年前から手付かずのままずっと── 」
厳蒔弓弦
「 どんな妖かしが出るんだ? 」
玄武
「 タイヤの中央に顔の付いた妖かしだな。
車輪の中央に顔の付いた輪入道の現代版と言ったところか。
夜な夜な平地を徘徊し、工事の邪魔をしていたそうだ。
近付いた人間を轢き殺し、逃れた者は原因不明の病に侵されるという。
昔は何十人も犠牲者が出て、実際に逃れた者は病に侵され、半年以内に苦しみながら亡くなったそうだ 」
衛美
「 …………玄武、それって凄く危険なんじゃないの?
轢かれたり、病気になったりしないわよね?
大丈夫よね?? 」
玄武
「 1体残らず根絶やしにしてしまえば大丈夫だ。
問題ない。
ワタシが輪入道を弱らせよう。
広範囲攻撃が出来る弓弦にはトドメを刺してもらう。
いいか、弓弦? 」
厳蒔弓弦
「 分かった。
──然し、輪入道なら炎に包まれている筈だな。
姿を見た者の魂を奪って行くのではないか? 」
玄武
「 妖かしに生物の魂は奪えない。
轢き殺して工事の邪魔は出来ても “ 病に侵す ” と言うのは怪しいな 」
衛美
「 じゃあ、病気にはならないかも知れないのね?
因みに報酬は幾らなの?
37年も手付かずの場所に居る妖かしを退治するんだもの、安くはないわよね? 」
玄武
「 大した額ではないな。
3.000万程だ 」
衛美
「 ──は??
3.000万??
…………えぇっ?!
さ…3.000万円?!
う、嘘でしょ…。
3.000万も貰えるの??
その2割りが私の通帳に…… 」
玄武
「 未来の利益を考えれば億はくだらない依頼だ 」
厳蒔弓弦
「 確かにな。
37年越しに “ ドリームタウン ” の建設が可能になるわけだしな。
2億は貰えてもおかしくない依頼だ。
3.000万とは随分と低いな 」
衛美
「 …………あの〜〜〜3.000万円も貰えるから十分だと思うんですけど少ないんですか?? 」
厳蒔弓弦
「 そうだな。
報酬額は取れる所から取るものだからな。
本気を出せば3億は取れる依頼だ 」
衛美
「 へ、へぇ……。
2億じゃなくて3億ですか…… 」
玄武
「 安心しろ。
初日はサービス料だ。
明日からは容赦なく巨額の報酬額を請求する。
他の陰陽師,退魔師が丸投げして御蔵入りしている物件だ。
幾らでも吹っ掛けれる 」
衛美
「 吹っ掛けるって……。
程々にしてよ… 」
玄武
「 考えておこう 」
衛美
「 弓弦さんは今までも多額な報酬を貰っていたんですか? 」
厳蒔弓弦
「 給料は良かったな。
報酬の5割りは退魔師組合の取り分になる。
残りの5割りを4人で分けたが、1回の任務で最低でも800万は振り込まれていたな 」
衛美
「 は…はっ…800万…ですか??
800万って事は……報酬は6.400万ですか??
800万円が少ないんですか? 」
厳蒔弓弦
「 祓い屋家業は特殊な専門職だからな。
一般的な会社員よりは給料は良いかも知れないな。
1ヵ月の収入が億を超えるのは当然で、当たり前だからな 」
衛美
「 …………えぇと……弓弦さんって、実はお金持ちだったりします?? 」
厳蒔弓弦
「 そう…かも知れないな。
日本の銀行に預けても1.000万までしか補償されないからな。
使わない分は利子の高い外国の銀行へ預けている 」
衛美
「 そう…なんですか…… 」
厳蒔弓弦
「 魔具のメンテは高額でな、稼いでも直ぐなくなる。
魔喰いの弓は一生ものだからな、メンテに手抜きは出来ないんだ 」
玄武
「 そうだな。
昔から魔具は魔具専門の魔具師にしか作る事も直す事も出来ないからな。
腕の良い最高の魔具師に依頼すると料金も上がる。
利子の高い海外に預けるのは賢いのではないか? 」
衛美
「 魔具師も儲かるんですね… 」
厳蒔弓弦
「 特殊な職業だからな。
魔具のメンテに必要な材料が高額でな 」
衛美
「 弓弦さんの弓もメンテしてるんですか? 」
厳蒔弓弦
「 そうだな。
日頃は自分で手入れをして、月1でメンテに出すようにしている。
修理した事は未だないな 」
衛美
「 修理って……弓が壊れた時ですか? 」
厳蒔弓弦
「 あぁ。
魔具は繊細だかならな。
乱暴に扱うと頻繁に修理に出す事になる。
刃こぼれし易い武器使いは万年赤字だ 」
衛美
「 そうなんですね… 」
玄武
「 ──時間だな。
空気が変わるぞ。
輪入道のお出座しだ。
構えろ、弓弦 」
厳蒔弓弦
「 あぁ。
衛美は玄武から離れるな 」
衛美
「 はい! 」
「 空気が変わった 」って言われても何がどう変わったの私には全然分からないのよねぇ…。
弓弦さんは魔喰いの弓を構えている。
矢の先に光が集まっているのが見える。
あの光が法力なのかしら??
綺麗な光……。
私は玄武の狩衣を握って、玄武と弓弦さんが見ている方向に目を向けていると、ゆらゆらと空中を浮遊する蒼白い炎が見えた。
1つだったのが2つ。
2つだったのが3つ。
3つだったのが──、どんどん蒼白い炎が増えて来て……。
玄武,弓弦さん,私は何も見えない霧の中で沢山の蒼白い炎に囲まれてしまっていた。
衛美
「 ──玄武!
炎に囲まれちゃったわよ!
逃げ道がないけど大丈夫なの?? 」
玄武
「 問題ない。
結界を張っている。
輪入道の攻撃は受けない 」
◎ 訂正しました。
工事の邪魔は出来ても、 “ 病に侵す ” と言うのは怪しいな 」─→ 工事の邪魔は出来ても “ 病に侵す ” と言うのは怪しいな 」




