♥ 瀬圉家 6 / 本家 6 / 本邸 5 / 裏庭 1
──*──*──*── 裏庭
お祖母様と弓弦さんから見守られる中、冥晶さんが式神を出した。
冥晶さんの式神は、物凄く大きくて雄々しくて逞しくて凛々しくて賢そうで如何にも強そうな立派な犬。
“ 犬 ” なんて言ったら語弊になっちゃうかしらね。
白銀色の美しい毛並みを風に靡かせる狼…かな??
衛美
「 立派な狼ですね。
凄く強そう…… 」
祿棠冥晶
「 狼ではないな。
フェンリルと言う 」
衛美
「 フェンリル……。
ファンタジー映画や漫画に登場するあのフェンリル??
自分の望む式神を作れるって事ですか? 」
祿棠冥晶
「 まぁ…そうだな。
次は衛美の番だ。
衛美の式神を見せてもらおう 」
衛美
「( 玄武、どうしたの? )」
玄武
『 衛美、手加減出来そうにない 』
衛美
「( どういう事?
本気を出さないと勝てないの? )」
玄武
『 そうではない。
コイツは彼奴の子孫だ 』
衛美
「( はぁ?
彼奴って誰なの?
知り合い?? 」
玄武
『 ワタシの生みの親の仇──霄囹の直系の子孫だ 』
衛美
「( 霄囹??
仇の子孫だからって殺さないでよ?
お祖母様も見てるんだからね! )」
玄武
『 …………約束は出来ない 』
衛美
「( えぇっ?! )」
祿棠冥晶
「 式神はどうした、衛美? 」
玄武
「 此処に居る 」
玄武が実体化した?!
何時もは実体化しないで見せるだけなのに!!
祿棠冥晶
「 …………お前が……衛美に取り憑いている “ 玄武 ” とやらか! 」
玄武
「 勘違いするな。
憑いてはいない。
ワタシは衛美の〈 守護り手 〉だ。
霊の類いではないし、もののけの類いでもない。
其処で尻尾を巻いて怯えている犬ころと同じ式神だ 」
祿棠冥晶
「 …………怯えているだと?
何を──っどうした!?
リア丸!! 」
衛美
「( り…リア丸ぅ??
名前、ダッサ! )
それにしても凄い怯えようじゃないの…。
玄武、あの式神に何したの?! 」
玄武
「 ワタシは何もしてない。
つい最近、生まれたばかりの式神には、千年以上も前に生まれた式神は脅威でしかない。
式神にも序列はある。
あの犬ころは2度とワタシに牙は向けれまいよ 」
衛美
「 ちょっと可哀想かも… 」
玄武
「 実体化すると力が制限されるものだが…、この程度とは……興が削がれた。
霄囹の直系子孫も大した事ないな 」
遠古
「 …………衛美……これが “ 玄武 ” なの??
本当に……?? 」
衛美
「 お祖母様?
どうしたの??
──あっ、玄武の背が高過ぎるから吃驚してるの?
玄武、背を低く出来ない? 」
玄武
「 どのぐらいだ? 」
衛美
「 170cmぐらいかな? 」
玄武
「 いいだろう 」
2m近い身長の玄武は、直ぐに背を縮めてくれた。
155cmの私には未だ高いけどね。
弓弦さんの身長は知らないけど、今の玄武の身長は弓弦さんより少し低いかもね。
玄武
「 遠古、顔色が悪いぞ。
ワタシの美貌に酔ったか? 」
衛美
「 玄武…… 」
遠古
「 …………貴方は……お祖母様に…憑いていた筈ではなかったの?
何故…衛美に憑いているの! 」
玄武
「 衛美が生まれ変わりだからな。
そうか、遠古はワタシを知っていたか 」
厳蒔弓弦
「 …………どういう事だ? 」
弓弦さんが裏庭へ来て初めて喋った!
無口なのかと思ってたけど、違ったのね。
玄武
「 さぁな。
最近で言えば、衛柚の事か?
衛柚はワタシを気嫌っていたな 」
衛美
「 そうなの?
どうして?? 」
玄武
「 衛柚は生まれつき身体が弱くて病弱でな、元気な子供達から良く嫌がらせを受けていた 」
衛美
「 何か分かっちゃった… 」
玄武
「 ワタシは衛柚の〈 守護り手 〉だったからな。
己の役目を果たしていた 」
衛美
「 …………玄武の行いが前世の私…衛柚さんにとっては “ 迷惑千万だった ” って事ね? 」
玄武
「 そうらしい。
自分が病気で身体が病弱なのも、自分の周りで不幸が起きるのも全てワタシの所為だとかで、毎日罵られた。
ワタシを罵る時だけ衛柚は生き生きしていて可愛かった 」
衛美
「 …………マゾじゃないわよね? 」
玄武
「 マゾ?
飼い犬が敵意を剥き出して懸命に吠える姿は可愛いだろう?
小型犬の……チワワとやらを浮かべて見ろ。
可愛くて和まないか? 」
衛美
「 ………………可愛いかしらね?
牙を剥いて敵意を向けて吠えるチワワって……恐いんだけど… 」
玄武
「 そう言えば…死期の近い衛柚の見舞いに子供が何人か来ていたな。
その中に遠古が居たかも知れないな 」
遠古
「 …………貴方がお祖母様の周りで様々な不幸を起こしていたのね……。
そして…今は衛美の周りで…… 」
玄武
「 勘違いするな。
ワタシは衛柚の身を守護っていただけだ。
衛柚が無事なら周りの奴等がどうなろうと知った事ではなかった。
衛柚はワタシを気嫌い拒絶していたが、衛美は違う。
ワタシを必要としてくれている。
今は衛美が愛おしい 」
遠古
「 …………何て……何て事なの……悪魔……っ!! 」
衛美
「 お祖母様、玄武は悪魔じゃなくて式神だから。
玄武はね、本当に私を守護ってくれてるだけなの。
そりゃね、昔はやり過ぎてる時もあったけど、今はちゃんと手加減してくれるんだよ!
むやみやたらに力なんて使わないし、大人しいの。
玄武は安全だよ。
安心して? 」
玄武
「 必死だな 」
衛美
「 誰の為にフォローしてると思ってるの!
玄武の為なんだからね! 」
玄武
「 そうか。
遠古、ワタシは安全な式神だ 」
衞美
「 こんなに嘘っぽい言葉もないわよね… 」




