♥ 下校 5 / ルルゥアンリィ 3
境戸託司
「 瀬圉さんを下になんて見てないよ!
本当だよ。
それだけは信じてほしい 」
玄武
『 必死だな 』
衛美
「( 行けそう? )」
玄武
『 行けるな 』
衛美
「 ……………………前科のある人を信じるのは難しいわ 」
境戸託司
「 ええ??
前科って何?? 」
衛美
「 ──朝… 」
境戸託司
「 それについては本当に、ごめん…(////)」
衛美
「 無かった事には出来ないけど、手を打ってもいいわ 」
境戸託司
「 え?
本当?! 」
衛美
「 条件は1つ。
呑める? 」
境戸託司
「 …………僕に出来る条件なら何だって呑むよ。
どんな条件なの? 」
玄武
『 衛美、行け! 』
衛美
「( ちょっと黙ってて! )
──境戸君の頼んだロールケーキを一口くれるのが条件 」
境戸託司
「 ………………へ?
え……え?! 」
衛美
「 ほら、未だ手を付けてない所があるでしょう?
其処を一口…欲しいの 」
境戸託司
「 …………え?
ええっ?!(////)
──ど、どうぞ(////)
好きなだけ取ってください(////)」
境戸託司は、ガタガタッと音を立てて驚くと、顔を真っ赤にさせながらロールケーキの皿を衛美の前へ差し出した。
衛美
「 ………………ありがと(////)」
境戸託司の頼んだロールケーキに必要な分を切り取ろうと自分の使ってるフォークを近付けた衛美は、手を止めフォークをナイフに持ち変えた。
ナイフをロールケーキに入れて必要な分を切り取る。
衛美
「 境戸君、有り難う。
一口分でいいの 」
境戸託司
「 えー……あ…うん……。
( ……フォークで刺してくれないんだ。
瀬圉さんの口に入ったフォークで刺してもらえたら間接……きゃ〜〜〜(////)
瀬圉さん…俺の頼んだロールケーキを “ 一口 食べたい ” なんて……大胆だけど可愛い事、言ってくれるなんてきゃ〜〜〜(////)
もしかして、2人の距離は俺が思っている以上に縮まっているのかも…きゃ〜〜〜(////)
──って、浮かれてる場合じゃないか。
でも……ああっ、俺の頼んだロールケーキが、瀬圉さんの口の中に!! )」
玄武
『 なかなか美味だな 』
衛美
「( 本当ね。
此方の方が甘さ控え目ね )
境戸君、貴方の頼んだロールケーキ、甘さ控え目で食べ易いわね 」
境戸託司
「 そう?
瀬圉さんに気に入ってもらえて嬉しいよ。
見た感じ甘いと思って頼んだんだけどね… 」
衛美
「 境戸君は甘党なの? 」
境戸託司
「 うん。
実はね(////)
男が甘党だと何故か引かれる事が多いから、普段は出来るだけ人前では食べないようにしてるんだよね(////)
…………男が甘党だと、瀬圉さんも…引く? 」
衛美
「 ふふっ、全然…。
父親も弟も甘党だから、気にならないわ。
父方の祖父,伯父,叔父も甘党だし 」
境戸託司
「 そうなんだ!
瀬圉さん家は甘党の人が多いんだね 」
衛美
「 祖父は甘党の親類を招いて茶会を開くのが好きなの。
毎月第4土曜日と日曜日は本家で、祖父主催の茶会が泊まり込みで開かれるの。
女人禁制でね 」
境戸託司
「 女性は参加が出来ないんだね… 」
衛美
「 “ 茶会 ” なんて名ばかりよ。
中で何をしてるのやら…。
きっと女性には言えないような悪い事でもしてるんじゃないのかしら?? 」
境戸託司
「 アハハ…。
考え過ぎじゃないかな?
茶会か…いいなぁ。
本格的な抹茶なんて飲んだ事がないからなぁ… 」
衛美
「 私も飲んだ事ないわ。
祖母,伯母,母親,叔母は、着付け教室,花道,茶道,書道を教えているけど、厳しいだけで楽しくないし…… 」
境戸託司
「 へえ…、瀬圉さん家って和風本家なんだね 」
衛美
「 …………そう、かも知れないわね。
中学と高校は部活と勉学で本家へは行かなくなったけど……、大学へ入れた以上、本家から御呼びが掛かれば、無視するわけにはいかないだろうし… 」
境戸託司
「( …………もしかして、俺から距離を置こうとしてる??
いやいやいや、そんな事はない筈だ。
LINEのIDだって交換したんだ。
身内の事だって少しは話してくれてるし、僕の頼んだロールケーキだって一口……。
今日限りで終わりって事はないと信じたい…。
だって未だ友達にもなってないのに距離を置かれるなんて──!! )」
衛美
「 …………いけない。
少し話し過ぎたわ。
……境戸君に私の家族の話をするなんて…。
迷惑よね…余計な事を聞かせてしまって御免なさい… 」
境戸託司
「 瀬圉さん……。
そんな事ないよ!
全然ないよ!!
俺には “ 家族 ” なんて呼べるような家族はいないからさ…。
少しだけど、瀬圉の家族の話が聞けて嬉しいんだ(////)
有り難う、話してくれて(////)」
衛美
「 …………気に障らないなら良かったわ… 」
境戸託司
「( ──そうだ!
このまま弟の話に持ち込もう!
ちょっと強引かも知れないけど、弟も家族だし、行けるかも知れない! )
えと…弟さんは高校生??
大学の学食員のバイトしてるの? 」
衛美
「 ……間違っても衛夛に “ 高校生 ” なんて言わないで。
病院のベッドで目を覚ます事になるから 」
境戸託司
「 ええ〜〜。
……禁句…なんだね 」
衛美
「 そうね。
踏んではいけない地雷ね 」
境戸託司
「 ……うん。
言わないように気を付けるよ 」
衛美
「 そうして…。
衛夛は私と同年よ。
大学生ではないわね。
衛夛は本家の跡取りになる為に伯父さんの元で修行しているの 」
境戸託司
「 そうなんだ…。
…………えと本家の跡取り??
今、本家を継いでいるのは、瀬圉さんの伯父さんなんだよね? 」
衛美
「 そうね 」
境戸託司
「 伯父さん夫婦に子供はいないの?
息子がいなくても娘さんがいれば婿養子に来てもらえればいいんじゃ… 」
衛美
「 伯父さん夫婦にも子供はいたわ。
けれど……事故で3人共亡くなってしまったの…。
本家の跡継ぎがいなくなってしまったから、衛夛に白羽の矢が立ったの。
叔父さんにも子供はいるけど生まれつき病弱で……今は入院生活をしているの。
とても本家を継ぐなんて大役は果たせないわ。
……現状は衛夛しか居いないの。
本家の跡継ぎは先祖代々 “ 男系男子 ” だから女子の私には本家を継ぐ事は出来ないの 」
境戸託司
「 そう、なんだね。
弟さん、凄いね 」
衛美
「 本家が栄えなければ分家も栄えないもの。
何があっても1番は本家なのよ。
本家あっての分家だもの。
分家は本家を中からも外からも支えて守る為に存在しているの。
本家だけの力では今の世の中を生き残る事は難しいわ…。
本家と分家は、昔から持ちつ持たれつの関係ね。
必要ない分家なんて存在しない。
どの分家も本家を存続させる為に必要な戦力なの。
分家を粗末にするなんて罰当たりな事だわ。
その為には当主の修行をきっちり、みっちり叩き込まれるの。
健全で健康で元気な男子でなければ務まらないもの… 」
境戸託司
「 へえ……ますます凄いんだね、弟さんは…。
──それならどうして大学の学食員をしてるの? 」
衛美
「 …………そうね…何故かしら??
衛夛から聞くと、私を心配してらしいけど…… 」
境戸託司
「 お姉さん思いの弟さんだね!
それなら一緒に帰ったりする日があってもおかしくないよね(////)」
衛美
「 一緒に帰ったのは、昨日が初めてね。
普段は14時には上がるみたいだから 」
境戸託司
「 そうなんだ!
じゃあ、明日も明後日も明明後日も──瀬圉さんと一緒に帰れるんだね!! 」
衛美
「 衛夛に誘われなければ…だけどね 」
境戸託司
「 瀬圉さんと弟さんが同年って事は──双子?? 」
衛美
「 そうよ 」
境戸託司
「 ………………似てないね 」
衛美
「 似ていなくて当然だわ。
私達は二卵性双生児だもの。
私と同じ顔をしたムキムキな細マッチョの弟なんて嫌だわ… 」
境戸託司
「 ムキムキ細マッチョ??
なんか…脱いだら凄そうだね… 」
衛美
「 多分ね。
肉体改造と肉体美が好きみたいなの。
……祖父と伯父の影響かも知れないわ… 」
境戸託司
「 そう…なんだね。
……何はともあれ、頼りになる弟さんには代わりないね 」
衛美
「 そうね。
言えてる 」
境戸託司
「( そっか。
学食員は瀬圉さんの弟だったんだな。
瀬圉衛夛は、二卵性双生児の弟で、肉体改造と肉体美が好きな 18歳。
≪ 瀬圉家 ≫ の分家──長男だけど、≪ 瀬圉家 ≫の本家の養子となり本家の跡継ぎとして現在は当主になるべく修行中──と。
大学の学食員として働いているのは、姉を心配しての事。
大体14時には学食員を上がる。
……こんな感じかな?
満仁谷さんに報告書を出さないといけないからな、忘れないように確り覚えとかないとな!
──って、俺が集めないといけないのは瀬圉さんの弟の情報じゃなくて、瀬圉さんの情報なのにっ!!
何逆の事してんの俺っ!!
瀬圉さんの情報だよ!
ええと……、≪ 瀬圉家 ≫の分家の長子で、跡取り娘。
父親は≪ 瀬圉家 ≫の本家を継いでる伯父の弟。
弟もいる。
瀬圉さんは18歳。
大学の帰りに≪ 瀬圉家 ≫の本家へ寄る事もあるかも知れない──っと。
身内の事は少しだけ分かったけど……肝心の瀬圉さんの事はあまり分からず仕舞いか…。
あまり質問し過ぎて、警戒されても困るし… )」
衛美
「 ──いけない!
もう17時…。
帰らないと!!
境戸君、悪いけど私は、これで帰るわ 」
境戸託司
「 え…もう、17時なの?
じゃあ、最寄り駅まで送るよ。
出ようか 」
スイーツを食べ終えた境戸託司と衛美は席を立ち、レジへ向かう。
衛美は、自分の分を支払おうと、鞄から愛用の長財布を出し、チャックを開けると、境戸託司が、それを止めた。
境戸託司
「 瀬圉さん、今日は俺に出させて 」
衛美
「 ──はあ?
何を言ってるの??
自分で食べた分くらい自分で払えるわ。
出してくれなくて結構よ 」
境戸託司
「 そうなんだろうけど…、一緒にスイーツを食べたり、色々と話したり出来て、嬉しかったからさ。
その御礼っていうか…いいかな? 」
衛美
「 はあ?
嬉しかったら2人分、支払うの?
境戸君…貴方、何時もそんな支払い方を事してるの? 」
境戸託司
「 え?
いや、何時もってわけじゃ… 」
衛美
「 他人の分まで支払いたいなんて変わってるのね、境戸君は。
……それとも懐が温かいのかしら?? 」
境戸託司
「 そんな事はない…けど…… 」
衛美
「 悪いけど、恋人でもない人に私の分まで支払ってもらうつもりはないわ。
友達なら尚更、自分の分を支払わせるなんて事、したくないわ。
──あのね、境戸君、私達は恋人同士でもなければ友達でもないでしょう? 」
境戸託司
「 そう、だね… 」
衛美
「 境戸君は、良かれと思ってしているのかも知れないけれど……。
その厚意を有り難く受けてくれる人もいると思うけれど……。
他人の代金まで自分が支払おうとする人、私は嫌いなの。
自分の分くらい、ちゃんと自分で支払わせてあげなさいよ 」




