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第六話 カブトムシを捕りに行こう【帰宅、安堵 アンド 乱動】

「チケットを読み込ませてください」

──ッピ

「座標は[ >0506 >992046-04 ]、アr」


──ッピ

「30秒後に転送を開始します。行き先を確認し変更したい場合はキャンセルしてくだs」

決定ボタン押下、簡易ポータルの設定が完了した。


俺達はグランティを見つめた。

彼女は優しく、しかしどこか意味ありげな目で俺達を見ていた。


第五層六界-アルカナ

世界歴 104679年4月10日 18時6分

──────


光に包まれナレーションが鳴る。


「アルカナ~アルカナ~。この度はポータルのご利用ありがとうございました。またのご利用~~~」

ポータルの扉が開き外に出る。


帰って来た。一気に力が抜ける。


「ウルト、膝つくな。立ちな」

「待って、俺も相当きてる」


その後は俺の箒に跨ってアクセルを開けた。

残量マナのワーニング、3%の表示。


大丈夫、アルカナならこれだけあれば家に着く。


「グランティって俺達のこと後で殺したりするかな」

「バカ? 確かにあそこで私達を殺さなかったのは抵抗しない連中を殺してもつまらないってマインドがあったからかも。なら私達を育ててから殺すって方が楽しいと考えるとも思う。けどあいつにメリットがない。ほぼね。だって私達は逃げてあいつの存在を国に報告するかも知れない。私達の成長曲線が想定以上で実力負けして屠られるかも知れない。あいつは私達にセンスがあると言った。なら決して私たちの成長曲線はゆるくない。私はその点について自負がある。だからこそ彼女は私達を育てる。殺さない。ただ何かに利用したいんだろうけど、それが今は暇つぶしか兵隊かって2択なだけ」


ラピスがやけに喋った。理にかなっている。

相当、少なくとも俺の倍の倍は考えて慎重に出した答えが教えを請うであったのは確実だ。


「てかさ、あいつどっかのタイミングで俺らのことカップル探偵さんって言った?」

「知らない。……動の魔法観察と静の魔法観察か」


記憶の断片で引っかかったがどうでもいいか。


そうこうして家に着いた。まるで数日空けてたみたいな気持ちになった。

玄関を開けて中に入る。いつもの空間、いつもの匂い。


そこに俺達の日常があった。


──

「ダメよ。何言ってるの? 忘却のグランティに教えを乞う? あのね、本物のグランティなら指名手配犯よ? あなた達は仲良くしただけで犯罪者になるでしょ!?」


母の声が響く。

事務所、ソファに座る双子。


ラピスはハッピーストライクをそれはそれは旨そうに吸った。


「っあぁ~」


真面目に半泣きしている。

そんなに沁みるか? そんなに美味いか?


俺もそうだが特にラピスの疲労困憊は目で見て取れる。

よくバタンキューしないな。タフさに感心する。


「母ちゃん、俺は鍛えてもらうよ。今回のことで自分の甘えに気づいた。俺は強くならなきゃいけない。これは上手く仕事をこなすためとかじゃなくて、俺が俺として生きていくために必要なんだよ」


母が驚いた顔で俺を見た。

それ以上に、目を見開きタバコを吸うことも忘れたラピスが俺の顔を見る。


「いい加減、甘えてちゃダメなんだ。俺は俺をもっと理解して成長させなくちゃいけない」


普段の俺は箒がどうこうしか言わない。

そんな俺が箒以外でこんな気持ちになって、実際に2人の前で声に出すのは初めてだった。


しかし、不思議と恥ずかしさはない。そうだこれが俺の気持ちだ。


「そうね、そこに関しては私も同感。だからさ母さん。私らのこと止めれないから」


最後に問題児代表が締めてくれた。


「……ハァ。まあわかったわ。けどね、ここからはあなた達の責任よ、私は関与しない。これは親としての責務の放棄じゃない。イチ大人としてあなた達の考えを尊重したうえで認めてるだけ。イチ人間としてね。相手は犯罪者で、もしかしたら自分たちが死ぬかも知れないと覚悟を持って発言しているのよね? あなた達は彼女を知ってる。けど私は知らない。そこはしっかり考えて私に寄り添って発言をして。それは最低限のことでしょ」

「ごめん、わかった」


俺達は肯定した。

何はともあれ俺達は明後日からグランティに稽古をつけてもらう。


それがいつまで続くのかわからない。

グランティの兵隊発言は母の前では控えた。


「まあまあ、皆さん。そう難しい話は置いときましょか」


誰か喋る。周りを見るが誰もいない。

3人とも警戒する。


「いやいや、あんさんらの目的はカブトムシの捕獲ちゃいますか? わてはそう聞いてたんやけど」


声の主を見つける。

テーブルに置いた2つの籠。


その片方。


ブルーメタリックに輝いた、

クワガタが、

喋っている?


「何お前? キモいんだよ。母さん、殺虫剤。それかウルト、そいつに火を放って」


そう言いながらラピスは消すばかりとなったハッピーストライクをクワガタに近づけた。もちろん魔法で。


「ちょっと待ってーな! 姐さん堪忍や! わての話を聞かず屠ってもなんの得にもなりゃしまへんて!」

「そうだよラピス、話を聞こうよ」


俺は今クワガタの擁護をしたのか? クワガタの。

そのクワガタは体をのけ反らせたり左右に振ったり、顎を閉じたり開いたりして感情を伝えている。


「ウルトはん! ありがとうやで! いやー危なく焼きクワガタになるところやったわー。改めて、わては名を”ヘラクレス”いいます。まあこれはカブトムシ連中が言うとった名前をもらっただけなんやけどな。まあヘラちゃんでも好きに呼んだってや」


ヘラクレス? なんか強そうだな。

しかもメタリックブルーも相まって名前負けを感じない。


「名前カッケーじゃん」


肯定した。


「おおきに! ほんま、わいってイケてんねん。ほんで話戻すけどな、うちのオカンに教え請うかって言うてたやろ? あれはそのほうがええで。正直、まだまだ実力足りてへんしな。わてはオカンからマナを分けてもろてるさかい、同じ能力使えんねん。せやから、その点あんさんらの役に立てる思うで?」

「マナを分ける? てかグランティと同じ能力が使える? てか役に立てる? あのね、言葉はわかるの、伝わってるの。訛りが酷いけどそれでも通じるの。けどね理解はできないの。言ってる意味わかる虫?」


ラピスがヘラクレスにタバコを近づけながら次のハッピーストライクを咥えた。


ドュポンの火が出ないらしい。

俺はジッポのダイヤルをノーマルに回して火をつけてやった。


「いやいや、あんさんら、箒っちゅう魔具の操作でマナごっつ消費してたやないかい! それは別世界にマナがあらへんから吸収できへんのやろ? せやけどな、それをわてがおったら克服できる言うてんねん!現にオカンのマナが尽きへんかったんは、オカンの魔法が”空間魔法”と”マナ吸収”やったからや。自分で作ったマナ満ちとる空間でマナ吸収しとったから、尽きへんかったんや。戦闘中はマナ消費で、あの空間も端から徐々に小さなっとったけどな。せやけどな? それをわても100%同じようにできるんや。さすがにこの意味、もう分かったやろ!?」


絶句、全てが合致した。

グランティは最初から自身の魔法を使っていたんだ。


確かにそうだろ俺、何だあの空間は。

散々魔法空間って言葉を使っていたじゃないか。

レア魔法すぎて魔具で作られた空間だと思い込んでた。


「でね、ヘラクレス君。そんな君がどう私達の役に立つの? ん?」

「っかーーー! ラピス姐さん感が悪すぎるわ。要するにな、わてはオカンに送り出されてここに来たんや! あんさんらの新しい相棒としてな。これであんさんら最強なれるで」


話が追いつかない。

グランティはこいつを送った? 俺達のために?


「いい、お前いらない。帰っていいよ。カブトムシのプラスアルファのお土産かと思ったらお邪魔虫かよ。てかカブトムシも喋んの? 売れるかなぁ!?」

「姐さん! けったいな! わてはオカンに選ばれたクワガタやで! あの見た目だけのカブトムシとはものがちゃうっちゅうねん。あいつはただの虫や!」


おいおい、ラピスもなにをムキになってんだか。


「わかったわ、あなたのことを飼うわ」


急に母が割って入り訳のわからんことを言い始める。


「女将さん、おおきに! けどな、飼うやあらへんやろ? 家族として迎えますやろ? そこはちゃんとしとこな。あと飯は1日3食、きっちり違うもん出してもらうで? 味違いのゼリー出しようもんならただじゃ済まさへんからな!」

「ウルト、少し炙りなさい」


母もキレる。


俺はもちろん母ちゃんサイドだ。一応ジッポをだす。

──キンッ


「お、お、落ち着きぃや。確かにそりゃちょいと飛ばしすぎたわ。なんせただの虫や思われるんは癪やったんや。せ、せやけどな、そこまで気ぃ悪うさせたんやったら謝るわ。このとおりや、堪忍してや」


平たい肢体の真ん中付近から湾曲し顎先がテーブルに着きそうになる。

うん、謝っているように見える。


「まず、このヘラクレスはあんた達の味方として来てると言っている。それに使える魔法が本当ならもの凄いことよ。空間魔法と自然エネルギーとして存在するマナの吸収。相性もレア度もかなりのものだわ。2人のスタイルに一つならずかなりのバリエーションをこの子はもたらすわよ」


確かに、しかし話がとんとん拍子すぎると言うか。


──ポト、

ラピスを見る。


ダメだ、ついにノックアウト。腕と足を組み寝ていた。


ヘラクレスに近づけたタバコはテーブルに落ちた、灰皿で消す。

吸ってる最中のタバコは指の間にある、取って消す。


「なあヘラクレス。お前は味方だとして、お前はどうしたいんだ? 俺達と組んでくれるのはわかったけど真意が聞けてない。あとカブトムシは普通のカブトムシなんだよな?」

「わてはあんさんらと組みたい、ただそれだけや。理由はシンプル。なんせ夕方まで樹液吸うとったら、急にオカンが来てマナ注入されて、ワイに能力くれたんやからな。わてかて急なことで頭ん中ぐちゃぐちゃや。けどな、せっかくの人生やで? こうなった以上、わては自分の可能性、試したいんや。それとカブトムシはただのカブトムシや。オカンに選ばれんと、ウルトはんに選ばれただけの、ただのカブトムシや」


安心した。カブトムシは売れるらしい。

ん? 樹液は吸うなんだ。まあ、どうでもいい。


母の顔を見てお互い頷いた。


よっしゃ、依頼は達成だ。


安堵の気持ちが押し寄せる。

ヘラクレスのことはこれから理解していけばいい。


明後日には稽古を受けるんだ。

その時にグランティから聞けばいいさ。


ボロボロのラピスを起こして風呂を勧めるか迷った。


このままベッドに運んでもシーツが汚れたとか言うからソファで寝かせることにした。

ラピスに毛布をかける。


「そういや母ちゃん。これ。グランティがくれたけど。いらないから」

「あ、そう。犯罪者からもらった花か。まあ事務所に飾るわ。ありがとう。(黄色い薔薇か、あの人らしいね。)」


風呂に入って晩御飯を食べる、時刻は21時を回っていた。

ラピスは事務所のソファ、俺は2階のダイニング。


夜は更け今日が終わる。

来る明日とその先にある未来を考える。


漠然とした不安、ありたい自分の姿。

瞼が重くのしかかってきた。今日はもう寝よう。


「なあ、ウルトはん。ワイの部屋はどこや?」

ホバリングしてる新たな家族を部屋に招き入れて電気を消した。

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