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これはきっと夢じゃない



「……おん、しおん、しおん……」


 誰かが私を呼んでいる……。


「紫音、紫音、紫音っ‼」


「はいっ⁉ ……って、友ちゃん?」


 飛び起きた私の目の前には、幼なじみの心配そうな顔があった。


「もうっ! アンタったら……。おばさんから紫音が帰ってないっていう連絡が来た時にはびっくりしたんだぞ、何か変な事件にでも巻き込まれたんじゃないかって。そしたら、アンタってば公園のベンチで寝てるんだもん。一気に拍子抜けだ。本当、呆れるよ……」


 友ちゃんは口ではそう言ってるけど、表情には安堵の色が見える。私のこと、心配してくれてたんだなぁ。


「……って、私、寝てたのっ⁉」


「そう。ていうか、普通は公園じゃ寝ないよ」


 外は真っ暗で、腕時計の針は七時をとっくに過ぎている。制服もちゃんと着ている、着物じゃなく。


「……夢だったのかな」


「はぁ? どんな夢だよ?」


 あれだけ覚めたいって言っていたのに……。


 もう少しだけ、公任さんと話したかった……。


「公任さん……」


「えっ? キントー?」


「ううん、何でもない。……帰ろっ、友ちゃん」


「全く……。もうっ、アンタ一人で帰んなさい」


 友ちゃんはそう言って、一人で帰るフリをする。


「ちょ、待ってよ~、友ちゃ~ん」


 立ち上がった私の制服の袖から、何かが落ちた。


 それは、紅葉の葉っぱであった。


 今の季節は春、紅葉なんてあるはずがない。


 キレイな橙色の紅葉……。


「……夢、じゃない?」


 




 半年後。


「秋~。秋といえば紅葉、紅葉といえば大覚寺~」


「何その、超強引な連想ゲーム。大覚寺なんてマニアックな寺、聞いたこともないよ」


 私は幼なじみの友ちゃんと、プチ旅行に来ていた。


「ほら、あれが名古曽の滝跡だよ。あの天才、藤原公任が歌に詠んだところっ!」


「……だから、キントーって誰? それよりも、アンタ突然、古典好きになったよね、何で?」


「えへへ~、秘密~」


 千年前、私と公任さんは確かにこの場所にいた。


 あの時も紅葉は美しかった。


「では、大覚寺にて古き滝を見てよみ侍りける……」




  滝の音は


  千年過ぎても聞こえけれ


  君が奏でし うたの調べも



最後の歌は作者が考えました。

公任の本歌取りです。

この作品を読んで、少しでも古典に興味を持っていただけたら幸いです。

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