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11. レネさんとの別れ

5日目。

現実世界では私の休みは終わっている。無断欠勤になるが大丈夫だろうか。

…会社の誰かが様子を見に来てくれたりすればいいんだけど。


ゆっくり朝食を取った後、依頼人のアハット家具店に向かう。予想より大きな家具屋だった。


「冒険者ギルドの依頼で家具を運んできた。あたしはC級冒険者のレネ。こっちはリリーだよ」

「それから、ゲザ村のガイルさんに頼まれて家具を売りに来ました。こちらがガイルさんからの手紙です」

ストレージから手紙と預かった家具を出す。

「確かに。依頼を受けてくれてありがとう。助かったよ」

品物を確認した店主は、冒険者ギルドの依頼書にサインをしてレネさんに渡した。


「それから、ガイルに頼まれたテーブルと椅子は5000Gの買取なんだが……あー、リリーだったか。ストレージ持ちなんだよな?」

「はい」

「買取額上乗せするから、このタンスと食器棚と化粧台は配達してくれないか?場所はここから徒歩で10分くらいだ」

「え?」

予想していなかった申し出に首を傾げてしまう。


「5500G出す。大物だし配達の人手が足りなくてな」

「いいんじゃない?宿代くらいにはなるし。リリーが配達してる間、あたしは冒険者ギルドで報告してくるよ」

レネさんが依頼の報告をしてくるというので、その間に私も配達することにした。

「分かりました」

運ぶといってもストレージから出すだけだしな。500G増えるんじゃありがたい。

「助かるよ」

店主から5500G預かる。おお。懐が一気に潤った。


家具を再度ストレージに入れて、店主と一緒に配達先へ。嫁入り道具だと聞いていたので奥さんのご両親からのプレゼントだろうか。

新婚のお宅は新しいものが多く、新しい生活を始める希望に満ち溢れていたが、私はこの世界に来る前の嫌なことを思い出した。私も少しは結婚に夢を描いていたのだ。

こちらは仲の良さそうなご夫婦だ。家具を指定の場所へ置くとストレージを見るのは初めてだと、二人でとても喜んでいた。

お礼に薔薇の花びらがブレンドされてるという紅茶を貰った。こういうのは飲まないからと店主が貰った分も貰ってしまった。



「リリー」

家具屋に戻ってくるとレネさんが待っていた。店主とは入口で別れる。

「これ、依頼報酬」

レネさんが今回の報酬を渡そうとしてきたので驚いた。


「貰えませんよ!ただでさえ報酬なしで護衛をしてもらったうえにレベルアップまで協力してもらって…」

「でも運んできたのはリリーだし。あたしも実績になったからいいんだよ」

「いやいや。そもそも私では受けられない依頼なんですから。それはレネさんが貰うべきです!」

「でもあたし、何もしてないしな…さすがに貰えないよ。リリーには宿代も出して貰ってるしさ」

「なんでですか!?それは護衛の条件でしょう?安すぎるくらいですよ!」

「でもさ…」


押し問答の末、

「じゃあ、半分こにしましょう!」

2000Gの報酬だったので、1000G札1枚ずつ分けた。

「あと、最後に食事をご馳走します!ちょうど食べたかったのがあるんです。付き合ってください!」

レネさんを引っ張って、配達先から帰って来る間に見掛けた、洋食屋さんに入る。お昼の時間よりも少し早めだったので店内は空いていた。

大きめのミートボールがごろごろ入ったトマトソースの煮込みに黄色いサフランライス。サラダや飲み物、デザートまで付いて100Gでお得だ。色合いが綺麗で女の子が好きそう。見ると周りは女の子のグループかカップルばかりだった。

料理は美味しかった。でも普通の量しかなかったので、レネさんには少し物足りなかったかもしれない。


「ごちそうさま」

「レネさん、本当にありがとうごさいました!」

レネさんは活動拠点にしている王都へポータルを使って戻るらしい。アハットからだと王都は結構遠いので、馬車なんかで行く人はあまりいないとか。


「これ、2つ貰ったので1つはレネさんに。薔薇の紅茶だそうです」

「え?いいの?」

「はい。あとこれ、私が作った毒消薬と魔物避けです。初級のものですみません。レネさんには必要ないかもしれませんが…」

「いや。嬉しいよ。ありがとう、リリー」

レネさんは嬉しそうにマジックバッグにそれらをしまった。


「レネさんには本当に助けられました。色々アドバイスしてくれたり、オークのソロ討伐もできたし、お別れなのは寂しいですが…」

「あたしもリリーと冒険できて楽しかったよ。リリーが薬師になってポーションを売るようになったら絶対に買いに行くからね」

レネさんは私の手を握って笑った。


「じゃあ、また会える日まで」

手を離すとレネさんはポータルステーションの方へ歩き出した。さっぱりとした別れだ。彼女は冒険者だから、こんなやり取りにも慣れているのかもしれない。


「さようなら、ありがとうレネさん!お元気で!!」

「リリーもね!」

レネさんは振り返ると大きく手を振って去っていった。

レネさんに出会えて良かった。最初話し掛けられた時は警戒したけれど、優しくて面倒見が良くてかっこいい、本当に素敵な人だった。


出会いに、感謝を。

また、いつか、出会えることを願って。





「商売をしたので報告に来たんですけど…」

レネさんの姿が見えなくなるまで見送った後、私は商人ギルドへ足を踏み入れた。商人スキルの獲得と、仕事を探すためだ。

「確認しますので、ギルドカードの提示と、こちらに手をかざしてください」

また水晶玉。こいつにすべて見透かされてるようで私は怖いよ。

商人ギルドの受付は眼鏡のお兄さんだった。商人ギルドは眼鏡率が高いな。数字と格闘しているからだろうか。

「取引が1件ありますね。テーブルと椅子を5500Gで販売、仕入れが3500Gですね。宿代などの経費はありますか?」

「ないです」

「では、売上の2000Gの1%で20Gいただきます」

お兄さんに頷いて20Gを渡す。商売の取引を確認できるとかどんな仕組みなんだろうか。

「お預かりします。手続きしますので少しお待ちください」

お兄さんが何やら端末に向かって打ち込む。すぐに作業は完了したようで、ギルドカードが返ってきた。


【クエストクリア!】

【クエスト「商売をしてみよう!」をクリアしました。報酬を獲得します】


◆クエスト「商売をしてみよう!」クリア

商品を仕入れて、仕入れ値より高く売ろう。

達成条件:商品を仕入れて、仕入れ値より高く売り、売上の1%を商人ギルドへ納税する。10G以上の納税が必要。

期限:なし

報酬:商人スキル


【新たなスキル「商人」を獲得しました】

【商人スキル獲得により、「商人」アイコンが作成されました。取得済の「鑑定」スキルと連動します】


メッセージが表示される。無事に商人スキルを獲得できたようだ。

ステータスボードを開いてみると、「商人」アイコンは算盤のマークだ。どんなスキルなのか確認しよう。


【商人は、商売を支援するスキルです。売買をする際、信用されやすくなり、金銭等取得の効率が上がります。ステータスボードで商売の履歴が確認できるようになります。「鑑定」スキルと連動し、鑑定に相場の価格が表示されます】


おお。意外と商人スキル、使えそう。特に相場の価格が分かるのが便利そうだ。


「なにかお仕事ありますか?ストレージが使えるものがあるといいんですけど」

納税の手続きは終わったようなので、受けられる仕事がないか聞いてみる。


「ああ、ちょうどストレージかマジックバッグがある方への優先依頼がきてますね。明日から3日間の間、お店の改装と棚卸しの手伝いと、可能であれば従業員に食事を作ってほしいそうです。3日で3000G。食事付き寝泊り可。結果で追加報酬も出すそうですよ」

「受けましょう」

食い気味で返事をする。報酬もいいし、寝食の心配をしなくていいなんて、なんて素敵な依頼だろう。

「ではこちらが依頼書ですね。依頼人はゼフの道具屋店長です。場所は冒険者ギルドの近くで、行けば分かると思います。依頼書は依頼人へ渡し、業務終了後にサインを貰って商人ギルドへお持ちください。報酬は業務終了後にお渡しします」

「分かりました」

封筒に入った依頼書を預かる。

割の良い仕事も見つかった。しばらくは食いつなげそうだ。


手持ち金はエフェスを発つ時は8040G。アハットの宿代が700Gとレネさんから依頼報酬1000G貰って、さっきの食事代が200G。

それからガイルさんのところで3500Gで家具を仕入れて家具屋で5500Gで売った。2000Gの儲けで税金が20G。しめて10120G。

1万Gを超えた。これで依頼報酬が入れば黒字だ。順調順調。


商人ギルドの傍に地図看板があったので確認する。マップのナビゲーションを起動して、依頼主がいる「ゼフの道具屋」へ向かった。


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