10. フィールドボス
4日目。
目が覚めると、パンが焼けるいい匂いがしている。
そういえば、宿屋ではなくガイルさんの家に泊まったなと思い出し身支度を整えた。
朝食後、ガイルさんの奥さんにお昼に食べるお弁当までいただいてしまった。ありがたい。
タダで泊めてもらったし、ガイルさんのおかげで付与スキルも手に入った。昨日作った初級毒消薬と初級魔物避けをお礼にと渡すと、とても喜ばれた。
お礼を言ってゲザ村を後にする。
ゲザ村を出た後もしばらくは草原が続く。川や小さめの湖がいくつもあり、色々な素材があった。使用頻度の高い癒草もたくさん生えていた。
綺麗な湖の水を飲めるのかと思って見ていたら魔物の魚と遭遇した。
レネさん曰くブレードフィッシュという魚だそうだ。なんか触ると切れそうな魚が3匹飛んできた。
切られたらたまらないので避けつつファイアと短剣で攻撃する。水から出ると動きが鈍くなるので戦いやすかった。それに魚型の魔物は罪悪感も嫌悪感もなく切れる。魔物は全部魚類ならいいのに。
【ブレードフィッシュ×3を倒しました】
魔石とブレードフィッシュの切身が手に入った。白身魚だ。結構美味しいらしい。あとブレードフィッシュのヒレ。よく切れそう。
【レベルアップ!】
【時魔法:スローを覚えました】
アハットへと向かいながら出てくる魔物を倒しているとレベルは6になった。レベル5になった時に闇魔法のダークネスを覚えている。2つともデバフ魔法だ。ダークネスは確率で相手を暗闇にする。スローは動きを遅くする。スローは、レネさんが使えると判明した時魔法。
時魔法はもう少しレベルが上がると覚えるヘイストが優秀で、使い勝手の良い魔法だ。
その後も採取しつつ草原の魔物を倒しながら進む。
太陽が真上になる頃。
小高い丘の上に奴はいた。
牙のある豚のような顔に太った大きな体。
ファンタジーでお馴染みの魔物、オークだ。
アハットに向かう途中の草原にいるフィールドボスらしい。鑑定が発動するギリギリまで近寄ってみる。
オーク Lv.20
???
レベル20か。結構上だな。事前情報がないので、名前とレベルしか鑑定されていない。
丘に登らなければ戦闘に入らないので、一応回避することもできる。
「リリー、攻撃魔法はファイアだけなの?」
「そうですね。攻撃に使えるのはファイアしかありません」
あまり覚えた魔法は多くない。
ファイアは攻撃で使えるが、ウォーターは水が出てくるだけ、ソイルウォールは防御魔法、ウィンドは風が出てくるだけ、ライトは灯り、ダークネスは魔物を暗闇にするデバフ魔法。スローも動きを遅くするデバフ魔法。うーん、魔法使いとしてどうなの、私。
「あたしが加勢してもいいんだけど、そうすると経験値が半分になっちゃうんだよね。リリーだけで倒せれば初回討伐とソロ討伐も付くし、とりあえず一回レベルアップしてみよう」
レネさんの提案により、魔物を倒してレベルアップすることに。
その前に一旦お昼休憩にする。
昨日作った魔物避けを撒いて、レネさんがお湯を沸かしてくれる。やっぱり防水シートと携帯用コンロ欲しいなぁ。お金貯めて買おう。
ガイルさんの奥さんに頂いたお弁当は、ホーンラビットの照り焼きサンドだった。昨日の木苺のパイも入っていた。美味しく頂いた。
オークから少し離れてレベルアップのために魔物を倒す。
草原の魔物はでかいバッタとかでかいネズミっぽいやつとかで、比較的火魔法に弱いので戦いやすい。
草むらからガサリと魔物が出てきた。狼だ。ウルフドッグより一回り大きくて灰色の毛並みだ。それが4匹。多いな。
「ロンリーウルフだね」
ロンリーウルフかぁ。…ロンリーなら一匹で行動しろよ!多いわ!
短剣を構えて身体強化をしながら魔法を使う。
ファイアだけだとキツイ!いい加減範囲攻撃魔法とか覚えたい。だがないものは仕方ないので、地味に一匹ずつ倒していく。
【ロンリーウルフ×4を倒しました】
「はぁー。やっと倒した…」
【レベルアップ!】
【火魔法:フレイム、雷魔法:サンダーを覚えました】
【関連魔法を習得しました。魔法アイコンから確認できます】
火魔法:フレイム MP3使用
炎を出し、一体に火属性のダメージを与える。
火魔法:#フレイムウィンド(フレイム+ウィンド) MP4使用
関連魔法。風で威力を増した炎で、一体に火属性のダメージを与える。
雷魔法:サンダー MP5使用
一体に雷属性のダメージを与えると共に、両隣に50%の範囲攻撃。20%の確率で感電を付与。
光魔法:#フラッシュ(サンダー+ライト) MP3使用
強烈な発光で目を眩ませる。1度目は必ず成功する。敵味方関係なく光を見た者は10秒間行動できなくなる。
レベル7になったら、一気に攻撃魔法を覚えた。サンダーは念願の範囲攻撃魔法。しかも感電付与。強そうだ。
「フレイムとサンダーを覚えました!あっ、あと関連魔法でフレイムウィンドとフラッシュも!」
「おっ、いいね。これでソロ討伐の目処が立った」
オークの所へ戻ることにする。レネさんが、オーク攻略のアドバイスをしてくれる。
「まず最初にフラッシュを掛ける。必ず目を閉じてね。10秒間攻撃できなくなるから、次はサンダー。次にフレイムウィンド。感電したら感電の間に撃てるだけ撃つ。感電しなかったらスローとダークネスを掛けて、どっちか掛かったら、フレイムウィンドとサンダーで攻撃。これの繰り返しだね。リリー、HPはいくつ?」
「63ですね」
低いな私のHP。
「63か…よし、今回は私の盾を貸してあげる。オークは斧攻撃。そんなに素早くないから基本は当たらないように避けつつ魔法で攻撃。HPが20%を切ると咆哮して、攻撃が激しくなるよ。避けられない時は身体強化を掛けて盾を両手で持って防ぐ。今回短剣は使わないよ。自分のHPが半分切ったらすぐ距離を取って、ソイルウォールを使ってからポーションを飲む。マジックポーションも早めに飲む」
レネさんが渡してきたのは、鍋の蓋ほどの大きさの革の盾だ。ずっしりしているけど持てない程ではない。
初級ポーション2本と、マジックポーション1本しか持っていなかったので予備分としてレネさんに借りる。中級だった。なるべく使わずに倒したい。
アイテムにポーションをセットする。MPは151だ。このゲームは、レベルアップするとHPMPSPが全回復する。ありがたい仕様だ。
サンダーとフレイムウィンドは消費MPが高めだけど、補助魔法を使っても各10回くらいは撃てるだろう。
戦闘開始。目を閉じる。
「フラッシュ」
この魔法は1度目は必ず成功する。これで10秒間はオークは動かない。
「サンダー」
ダメージは入っているが感電はしていない。
「フレイムウィンド」
フレイムウィンドも結構効いているようだ。
10秒経ったようで、オークが動き出した。
「スロー」
「ダークネス」
続けてダークネスとスローを掛ける。スローが掛かった。こちらへ向かってくるオークの動きが鈍くなる。いい調子だ。
「サンダー」
今度は感電した。感電すると30秒間動けなくなる。
「フレイムウィンド」
10秒のクールタイムが終わる度にサンダーとフレイムウィンドを撃つ。
感電効果が切れたので、またオークが動き出した。
スローの効果も切れているようで、動きも通常に戻る。
攻撃を避けながらサンダーとフレイムウィンドを撃っていると、MPバーが赤くなった。
走って距離を取って、ソイルウォールを使ってから初級マジックポーションを飲む。意外と爽やかなミントのような味だった。初級なので100前後の回復の筈だが、もともとのMPが少ないからか全回復した。
斧攻撃は受けていないけど、手が掠ったり、オークが走ると石が飛んできて地味にHPが削れている。HPも半分近かったのでついでに初級ポーションを飲んでおく。こっちは薄い青汁みたいだった。不味くはないが美味しくもない。
「フレイムウィンド」
攻撃を受けて、オークが咆哮する。
HPが20%を切ったらしい。もう少しだ。
追い掛ける動きが速くなっていて、気が付いたらすぐ後ろにいた。手には巨大な斧。
斧で真っ二つにされたら敵わない。
「身体強化」
盾を両手で構える。斧が振り下ろされた。盾を構えてるのにすごい衝撃。
HPバーも黄色だ。さっき初級ポーション飲んでおいてよかった。もともとHPは少ないのだ。もう一回斧攻撃を受けたら確実に死ぬ。
必死に走って距離を取った。
「ソイルウォール」
急いで初級ポーションを飲む。追い掛けてきたオークが、ちょうど土壁を斧で破壊する所だった。
「サンダー」
壁がなくなった至近距離でサンダーを撃つ。ラッキー。感電した!オークが動かなくなる。
「フレイムウィンド」
続けて魔法を撃つ。
「サンダー」
オークが倒れた後、霧散するエフェクト。いつもは白だけど、赤と黄色が混じったエフェクトだった。オークが消えた場所に宝箱が残る。
【フィールドボス「オーク」を倒しました】
「やった…!」
良かった。死ぬかと思ったぁ!!
【初回討伐戦利品を獲得しました】
【フィールドボス「オーク」を初めてソロで討伐しました。ソロ討伐戦利品のランダムボックスを獲得しました】
【レベルアップ!】
【重力魔法:グラビティ、空間魔法:ハイドを覚えました】
【全属性の魔法を覚えたため、新たな魔法属性を取得しました。無属性:マジックショットを覚えました】
【条件を達成したため、ストレージの機能が追加されます。ストレージスキルに「時間停止」が追加されました。ストレージの中は時間が停止します】
【レベルアップ!】
【土魔法:クレイを覚えました】
【関連魔法を習得しました。魔法アイコンから確認できます】
レベルが2上がったようだ。さすがフィールドボス。あとなんか色々言われた。だがとりあえずは目の前に気になるものがある。
「宝箱!」
ソロ討伐戦利品は宝箱だ。ランダムボックスと言っていたので中身が変わるんだろう。
「よし!オープン!」
初宝箱を開けてみる。中身は…
吸魔の腕輪
魔法を使用する際、MPを1回復する
…なんか結構アタリじゃない!?
「レアだね。やったじゃん」
レネさんもやってきて、戦利品を確認する。滅多に出ない、いいものだという。
すごく重宝しそうだ。最初のうちは必要MPも少ないからとても助かる。デザインも細めのシルバーチェーンのブレスレットに赤い石が付いていて、シンプルで好みだ。早速着けてみる。
レベルが2も上がったので、ステータスも見てみよう。
「ステータスオープン」
リリー Lv.9
種族 性別:孤人族 女
職業:魔法使い Lv.9
第2職業:未解放
HP:74/74
MP:189/189
SP:25/25
体力:37
魔力:94
物理攻撃力:32
魔法攻撃力:70
耐久力:31(81)
素早さ:48(53)
器用さ:49
運:47
満腹度:63%
状態:通常
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装備効果
〇和風装備セット
耐久力+20
素早さ+5
物理耐性(小)
魔法耐性(小)
毒耐性(小)
汚損防止(中)
〇サンドリザード革の盾
耐久力+30
物理耐性(中・使用時のみ)
〇吸魔の腕輪
魔法を使用する際、MPを1回復する
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スキル
ストレージ 機能追加「時間停止」
マップ 機能追加「ナビゲーション」
鑑定 Lv.2
調薬 Lv.2
付与 Lv.1
☆身体強化 Lv.2
☆種族固有スキル 未開放
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魔法
火:ファイア、#ヒート、フレイム、#フレイムウィンド
水:ウォーター、#ホットウォーター
土:ソイルウォール、クレイ、#ボッグダウン
風:ウィンド、#ウォームエアー
雷:サンダー
光:ライト、#フラッシュ
闇:ダークネス
時:スロー
重力:グラビティ
空間:ハイド
無:マジックショット
レベルも9になった。魔法も全属性覚えた。更になんと無属性魔法も覚えた。これは嬉しい。新しい魔法を確認だ!
土魔法:クレイ MP3使用
粘土状の土を出す。出した粘土は成形できる。
土魔法:#ボッグダウン(ウォーター+クレイ) MP3使用
土の地面を泥沼にする。相手の足元に出すと効果的。
重力魔法:グラビティ MP4使用
体を重くし動けなくする。飛んでいる相手には特に有効。
空間魔法:ハイド MP3使用
空間を偽造し、30秒間姿が見えなくなる。
無:マジックショット MP5使用
無属性の魔力弾を3回連続して撃つ。
おお~。なんか色々使えそうなのを覚えた!
そしてなんと言っても。
ストレージの機能追加「時間停止」だ。
時間停止。ストレージが時間停止。
なんと。賞味期限気にせず入れ放題ってこと?マジか!?
「ストレージが時間停止…!?」
神機能!!
レネさんから借りた盾はサンドリザードの革だったのか。効果が高いし結構良いものなんだろう。お礼を言ってレネさんに返す。使わずに済んだポーションも返した。レネさんには感謝しかない。
あと、魔石とオーク肉とオークの睾丸(触りたくない)、レシピをドロップしていた。レシピってドロップするんだね。
それから初回討伐報酬でオークが持ってた斧が貰えた。私には使えない。売ろう。
見ると、ボスがいた場所に魔力草がたくさん生えていた。よく見ると丘には他にも色々生えている。これは採取しなくては。
「そろそろ行こう。アハットに入れなくなる」
夢中で魔力草を採取していると、レネさんに声を掛けられた。
「あっ、ごめんなさい!行きましょう」
野宿になったらたまらないので、先を急ぐ。
アハットに到着した時には暗くなり始めていて、門が閉まるギリギリだった。魔物が出るためか街の周りは壁で囲まれていて、門番に身分証明の提示を求められた。薬師ギルドと商人ギルドのギルドカードを両方出す。無事通れた。
ギルドも閉まっているので宿屋に行くことにした。
レネさんおすすめの宿屋で、早速夕食にする。ここもご飯が美味しかった。
部屋に行ってお風呂に入る。入浴剤まであったので入れてみた。薔薇の香りになったよ。
やっぱりお風呂に浸かると疲れが取れるな〜。
お湯に浸かりながらステータスボードを確認する。
ストレージは機能追加で、時間停止が付いた。ストレージの中は時間が停止し、入れたものは入れた時のまま取り出せるらしい。つまり、劣化しないのだ。たくさん入れてもお肉や野菜も入れた時のまま。温かいものは温かいまま。凍ったものも凍ったまま!ドロップしたオーク肉もいつまでも新鮮だ!
この夢のような追加機能解放は、どんな条件だったんだろう。無属性魔法を覚えた後にアナウンスがあったから、全属性プラス無属性魔法かな?
それから、オークが落としたレシピは「精力剤のレシピ」だった。ドロップしたオークの睾丸を使うらしい。
…精力剤のレシピ。気になるな。
今日は疲れたので作るのは後にしよう。
おやすみなさい。




