表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン都市セグデノン  作者: レクセル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/6

取り残されたミズル

セグデノンの一層にはタックルラビットしかおらず、どれだけ大量に肉を集めても、一匹で二十石にしかならない。

ただ暮らしていくだけならば、その稼ぎでも可能だが、探索者となった者が目指すのは、攻略者としての名声やダンジョン素材から得られる一攫千金だ。

そのため、成り上がりたいものは当然二層を目指す。


熟練者でありながら一層に残り続ける探索者のほとんどは、数階層降りたものの上手くいかず、もっとも安定する兎狩を生業としている。

そのため、入り口付近に居続けるパーティーの中には、先に進みたがるパーティーの気配を察すると、間を開けて通り抜けさせ、再び間を詰めるといった連携を取れる者たちもいる。


奥へ進むということは、つまりタックルラビットの突進をすべて叩き落としていくということだ。

だが、兎の数は多いが、兎たちは連携して来るわけでもない。

そのため、二、三人のパーティーでも難なく倒しながら進めてしまう。

ただ、次階層への階段までの距離だけは長く、慣れぬ者では半日ほどかかる。


二層へ降りる階段は三か所。どの階段へ向かっても、一階層からの距離は僅差。

さらに、どこから降りても三階層への階段までの距離も変わらないため、ここでは入り口のような列はできない。


セグデノンでは階段付近が石畳の安全地帯となっているが、二階層は石畳の範囲が一階層より圧倒的に広く、探索者の休憩地点としても利用されている。

他は一層と変わらない草原が広がるが、出てくる魔物は兎から鼠へと変わる。


バイトラットと呼ばれる灰色鼠で、体長は四十センチほど。

鼠としては巨体だが、魔物としては小柄に分類される。

見た目は尻尾の長いドブネズミといった容姿だが、特徴的なのは口から飛び出るほど長い黒ずんだ牙だ。

その牙を使い、獲物と定めた相手に噛みついてくる。


兎よりも凶暴な牙という武器を持っているが、数は兎よりも少ない。

そのうえ動きも緩慢で、複数体いても統率する様子もない。

一層を超えられるものならば、問題なく対処できる相手だろう。

だからこそ油断も生まれやすい。


大盾のダンタガ、斧のガザ、そして槍使いのミズルという三人パーティーは、二層の鼠を倒しつつも、順調に三層に向けて進んでいた。

ダンタガがガザの指示を無視し、大盾で鼠をつぶしてしまうまでは。


「おい!なんで潰しちまうんだよ!俺が仕留めるって言ってんだろ!」


「…別にいいだろ。どうせドロップは変わらない。」


「そうじゃねぇよ!お前がつぶしちまうと、ミズルが倒れてるか確認しづらいって話なんだよ!」


「もういいって。いくら何でも、こんなど真ん中で話すことじゃないよ…」


このパーティーのリーダー役はガザである。

一層で腰を据えて戦った際には、ダンダガが攻撃を受けとめ、ガザの斧で叩ききり、仕留めたかミズルが確認し、息があればとどめを刺すという連携が取れていた。

しかし道中ではタックルラビットをどんどんいなすため、ダンタガも大盾で兎を吹き飛ばし、倒していった。


二層に入ってからは、歩きながら再び基礎通りの連携に戻したが、ダンタガは処理の遅さにしびれを切らし、独断したのだ。

イラついた様子のガザだったが、またどこからともなくバイトラットが迫ってくる中、指示を飛ばした。


「いいか!ちゃんと防ぐだけにしろ!俺とミズルが攻撃役だ!」


「…そういってほとんどお前が倒している。お前が目立ちたいだけだろ。」


「…なんだと?」


「ちょっと!止めて二人とも!来るよ!」


ミズルの言葉に一触即発の雰囲気だった二人も、ネズミへの対処に意識を戻す。

その一匹を倒すまでは正しい連携が取れ、何事もなく終えた。


だが、結局三層の階段に着くまでに、ダンタガが指示を無視し、独断で鼠を大盾で潰してしまう。

その結果、防御の隙を突かれ、無傷のバイトラットがミズルへと迫る場面もあった。

その場面ではミズル一人で倒したのだが、ガザは完全にキレていた。


「お前な!ふざけんなよ!盾役が出しゃばりすぎなんだよ!」


「…倒せているのだからいいだろ。」


「よくねぇよ!連携についてあれだけ学んだだろ!」


「ガザ、ちょっと怒鳴りすぎ…」


「あ!?あ…」


ダンタガの行動にも問題はあったが、怒鳴り散らかすのはガザだけで、彼らと同じく三層前で休憩しようとしていた他の探索者たちから白い目で見られていた。

その視線は明らかにガザにだけ集まっている。


ガザとしてはまだ言い足りなかったが、時刻は夜が近い。

しかし、ここはダンジョンであり、夜でも空は青天が続く。

そのため、誰もが寝付きにくい環境なのだ。


怒っているのか申し訳ないのか分からない表情に歪むガザを横目に、ダンタガは寝袋を準備し始める。

ガザは余計に怒りが蓄積したが、何とかこらえて飲み込み、寝袋を用意し始める。

彼ら三人にとって初のダンジョン内での睡眠だというのに、その楽しみも吹き飛んだ。


パーティーとなったのに険悪な二人。

ミズルの心に靄のような不安が募るが、寝袋に包まると疲れが出たのか、青空の下でもすぐに眠りにつけてしまう。


数日後、ダンタガとガザは意識不明で倒れ、ダンジョンからタンカで運びだされる。

しかし、そこにミズルの姿はなく、それ以降誰も彼を見ることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ