迎える死、蘇る命
文章が何度書いても納得出来なくて更新が遅くなりました。
更新はしましたが、やっぱりどこか引っ掛かるんですよね・・・
文才無いのが悔しいです。
レン=龍
ユキ=雪菜です。
第3章 秘密と記憶に断片的ですが雪菜と龍の話が出ているので気になる方は読んでみて下さい♪
https://ncode.syosetu.com/n7327ld/42/
クソッ。目がほとんど見えねぇ。
早く殺せってどういうことだ?
さっきから意味が分からねぇ。
「早くしろ。儂の理性があるうちに」
「アンタは俺達の味方じゃないのか?」
「雪菜を生き返す為に儂の神核を渡した。もうすぐ儂の理性が消えて鬼となってしまう。だから儂の理性があるうちに殺してくれ」
「ユキが生き返るのか?」
「そうだ。儂は愛する娘を殺したくはない。そうなる前に儂を殺せ。お主の持つ神刀なら簡単に儂を殺す事が出来る。頼む」
そういうことか・・・
今まではどれだけ攻撃を受けていても殺意がほとんど無かった。
しかし段々と攻撃の威力が増しているのは、理性が失われていっているからだろう。
早く殺せと言われたけど、どうすればいいんだ?
目はほとんど見えないし、それに攻撃を凌ぐのがやっとだ。
「グハハハハハハハハ。力を振るうのはいい気分だ」
コレが鬼の本性。
「もう抑える事が出来ない。早くしろっ!!」
支離滅裂なセリフになっているのは、静さんと鬼の本性が同居しているからか。
彼女の言うように早くしないと取り返しのつかないことになりそうだ。
「イチかバチかだっ!!」
彼女がまだ抑えているうちにやるしかない。
俺は意を決して捨て身の攻撃に転じる。
伸びて来た黒い魔力の手を潜り抜けて突撃した。
遺伝子操作されたこの体は驚くべき能力に溢れている。
想像よりも早く接近することが出来た。
行けるぞっ!!
「貰ったぁあああああああ!!」
「ギャァァァアアアアアアアアアア」
完全に捕らえたと思った。
しかし百目鬼の体は思ったよりも早く、腕を犠牲にして致命傷を避ける。
「避けられたっ」
致命傷は与えられなかったが、腕を一本切り落とす事が出来た。
「ゆ、許さん」
攻撃を受けた百目鬼は怒り、再び毒の霧を撒き散らす。
慌ててレンは離れようとすると百目鬼の目が赤く光り、得体の知れぬ振動が起こり始めた。
「この魔眼から逃れられると思うなよ」
百目鬼は呪いの魔眼を発動させていた。
呪いの魔眼は眼光に魔力を乗せて、相手の動きを封じるというものだ。
空気が振動し、洞窟内の壁の細かい石が崩れ始めている。
「くそっ!!体が動かねぇ・・・」
体に電気が走り、レンの体は硬直したように動かなくなってしまう。
この魔眼の恐ろしいのは圧倒的な広範囲の効力にある。
洞窟内全てが振動し、百目鬼の支配下にあった。
「・・・マジでやべぇ」
ここで動けないことは死を意味する。
すると一本の魔力の黒い手が俺に向かってきた。
やられるっ!!
そう思った瞬間、俺は魔力の手に突き飛ばされた。
百目鬼は自分の体に魔力の手で攻撃を始めると、俺の体が動くようになる。
助かった・・・
「龍っ!!早くしろっ!!」
「おのれ。貴様、何故儂の邪魔をする」
静は体にある腕を魔力の手で抑え込む。
「さぁ、早く殺してくれ」
醜い化け物の口から優しい声がする。
さっきまでいた美しい静の声だ。
「静さん。やっぱどうにかならないのか?ユキに母親だと言って抱きしめてやってもらえないか?」
一瞬考えたが、すぐに悲しそうな顔をして答える。
「雪菜の前ではキレイで優しい母でいたいのだ・・・この姿を見られとうない」
静は雪菜の前では人の姿しか見せていなかった。
だからこそ、鬼であった頃の姿を見られたくはなかった。
「頼む・・・」
静さんは抑えていることが限界なんだろう。
もどかしい気持ちがこみ上げてくるが、これ以上あれこれ言うのは野暮でしかない。
「・・・分かった」
レンは近づいて行くと、百目鬼の目の前に立つ。
そういうと、レンは静に神刀を突き立てた。
「ンッ!!!!!!!!」
百目鬼の目が苦痛に歪む。
口から溢れそうになる血を飲み込んで、震えながらレンを見つめた。
「・・・ありがとう。それとすまなかったな」
「静さん、すまない・・・」
「気にするでない。儂が望んだことだ」
百目鬼は震えながら何とか言葉を絞り出す。
謝罪が出来た事で静の心は穏やかな気持ちになっていた。
「コレで思い残す事はない。龍、感謝するぞ」
百目鬼に溢れる血を飲み込む力は残っていなかったが、辛うじて聞き取る事が出来た。
鬼の顔に笑みが浮かぶと、口から青い血が溢れ出す。
「あれっ!?ここはどこだ?」
目が覚めたユキは自分がどういう状況なのか飲み込めずにいた。
「そうだ。オイラ、お腹を刺されて・・・・・・」
レンを庇って刺された記憶が蘇る。
脇に刺された場所を触ってみると傷が無い。
「んっ?オイラはどうなったんだ??」
そんな状況でユキの目に入ってきたのは、レンが化け物の体に刀を突き立てているところだった。
「・・・あんちゃん?」
レンと対峙している化け物を見ると、ユキの中に不思議な感覚が湧いてきた。
どういうことか懐かしさを感じている。
だがこんな殺伐とした状況で、懐かしい感じがすることは違和感でしか無い。
「・・・ありがとう。それとすまなかったな」
そして百目鬼の声を聞いた瞬間、ユキの奥底に眠る記憶が蘇った。
「オイラ、この人を知ってる?」
ユキを呼ぶ声が脳裏によぎる。
顔までは分からないが、女性らしき人がユキに微笑んでいた。
「お、かあ・・・ちゃん?」
ユキの口から思いもよらない言葉が出る。
その言葉を聞いた途端、辺りは静寂に包まれた。
「おかあちゃん、だよね?」
ユキは百目鬼に刺さっている神刀に気付く。
「あんちゃん、この人はオイラのおかあちゃんなんだ。だから殺さないで」
「・・・儂はただの鬼だ。お主の母親ではない・・・」
百目鬼はユキの方を見ようとしなかった。
「嘘だ。だっておかあちゃんの匂いがするんだ。オイラがおかあちゃんの匂いを間違える訳ないじゃないか」
顔は思い出せない。
「おかあちゃんのこと、ずっと探してたんだぞ」
母に抱き着いて幸せだったあの頃の記憶。
母の優しい匂いに安らぎを感じていたあの頃のことは、ユキの魂にまで刻みこまれていた。
「こんな化け物がお主の母親である訳がな・・・」
「おかあちゃん!!」
ユキは百目鬼に抱き着いて顔を埋める。
「雪菜・・・」
百目鬼の口から出たその名前を聞くと、静の中にある雪菜の記憶がユキの頭の中に流れ込んでくる。
どれだけ雪菜の事を愛していたか、そしてどれだけ後悔しているのかユキに伝わってきた。
「おかあちゃんといた時は、オイラも凄く幸せだったぞ」
その言葉を聞くと百目鬼の瞳から涙が溢れ出す。
ユキも泣きながら化け物の姿をした母に頬を摺り寄せた。
儂の持っていた神の核がユキの体の中にあるのだ。
記憶が筒抜けな以上どれだけ嘘をついても無駄なのだろうな。
百目鬼はユキを優しく抱きしめて、魔力の手で包み込んだ。
「生まれ変わっても雪菜は甘えん坊だのう。こんな化け物がお主の母で嫌じゃなかったか?」
「ううん。オイラはおかあちゃんの事が大好きだぞ」
屈託の無い笑顔でユキは百目鬼を見つめる。
ああ。あの時と何ら変わらない。
儂のこんな醜い姿を見ても、それでも母と言ってくれるのか・・・
「そうか、儂も大好きだぞ」
不思議な光景だった。
血生臭いこの空間に神聖な空間が広がっている。
しかしその幸せな空間は長くは続かなかった。
「・・・ありがとう。儂はお主といた時間は何よりも幸せだった」
ユキの頬に手を触れる。
「儂はお主がいなくなってしまうかもしれぬと、龍に嫉妬してしまった」
百目鬼の体が静かに震えている。
「おかあちゃん、寒いのか?」
死が百目鬼の体から熱を奪っていく。
母の想いが少しでも雪菜といたいと、命を奮い立たせていた。
しかし心臓を貫かれた状態では、圧倒的に死神が有利に戦いを進めている。
静の命の燈火は消えかけていた。
「オイラがおかあちゃんを温めてあげるからな」
ユキは一生懸命百目鬼の体を擦って体を温めようとする。
だが無情にも百目鬼の体はどんどん冷たくなっていく。
「儂はずっと謝りたかった。愚かな母を許してほしい・・・」
ユキの顔に手を添えて、擦らなくてもいいよと首をふる。
「オイラ怒ってなんか無い。またおかあちゃんと一緒に暮らしたい」
静の目にはユキの顔もほとんど見えていない。
だが愛しい娘の顔を少しでも能吏に焼き付けようとユキを見つめる。
「今度は幸せになるのだぞ・・・」
そういうと魔力で包み込んでいた黒い手が消え、抱きしめていた手がダラリと下に降りる。
母の力が急激に抜けていくのがユキには分かった。
そしてそれが何を意味しているのかも・・・
「・・・・・・おかあちゃん」
ユキには命を失った母を抱きしめて泣くことしか出来なかった。




