第二十七話「宿敵ダスク&魔王ルシファー」
フェニクシアは比較的温暖な気候だが、それでも本格的に冬に突入して冷たい風が吹いていた。
フェニクシア北部の町はどこも壊滅していた。魔王が暴れ回ったか、ルシウス神兵団の仕業かまでは判別つかないが酷いものだとダートもアクアも溜息をついた。
三人はニソーの町の近くのベルフェゴイの丘で火を囲んで夜を過ごす。アクアが食事を終えたヒカルに話しかける。
「知っていますかヒカル、ここベルフェゴイはフェニクシア革命の時に初代四聖がドラゴニア・タイガニア・トータシア連合軍を破った場所なんですよ」
「へぇ。いや……確かセイラもそんなことを言っていたような……どうだったかな……」
ヒカルはいつかの記憶を探る。そして思い出したのはセイラが魔王にちなんだ地名があると言っていたということだった。
「ここはベルフェゴールか……」
「どうしたんです?」
「名前だよ。セイラが言っていた。魔王にちなんで名づけられた土地があるとな。レヴィアティン高地、サタニウム、アスモデニエの森、ベルゼブル街道、マモニア峡谷、ルシフェン山、そしてこのベルフェゴイの丘。全て回った。全く、因果なものだな」
運命の神に弄ばれているのではないかとさえ思えるヒカルだった。ただ神がいるなら自分の味方だとも考えた。これまで六大魔王の内五体を葬ってきた。ここまで魔王と因縁のある自分ならきっとルシファーも倒し魔大戦から続く厄災に終止符を打つ役割を与えられているに違いないと踏んだからだ。
ヒカルは前から考えていたことをニソーも間近なので話す。
「なぁダート、アクア、ニソーの町に着いたらお前達で町を解放すると同時に私はリュウコウ山を登りダスクとルシファーを倒しに行く。町を解放してもダスクらが生きていたら奪い返される。ここは両面作戦だ」
「しかし、ヒカル一人で行くんですか? 駄目です、危険ですよ!」
アクアは反対する。しかしヒカルは譲らない。
「危険なのは承知だ。だが最後は私一人で奴と決着をつけたい。これは私の復讐なんだ」
「ですが……」
「行かせてやれ、アクア」
ヒカルの意を汲んでダートが口を挟んだ。アクアは肩を竦める。
「私が何を言っても飛んでいきそうですしね……ただ慢心と無茶だけはしないでくださいよ」
「わかっている」
夜が更けていく。ダートとアクアが寝静まった後、ヒカルはこっそりと大きな布の包みを解き、闇夜でも光る赤いカタナを灯り代わりにセイラの遺体を見た。頭・左腕・胴体・右脚・左脚が揃っている。あとは右腕だけだ。
セイラの美しくも悲しい生首をじっと見て、ヒカルは溜息をつく。それから遺体を再び布に丁寧に包んでぎゅっと縛った。そうして明日の決戦に向けて眠りに就いた。
翌日の正午頃、雨がちらほら降り出した。しかしアクアの異能のおかげで彼らが濡れることはなかった。
霧で見通しが悪かったが、ニソーの町の異様さが見えてきた。町の入り口以外は高い柵が立てられ、連れてこられた人々が脱走するのを防いでいた。入り口には雨の中武装した見張りが屯している。周りは視界を遮る物などない荒野なのですぐに向こうも近づくダート達の馬車に気付いた。
「何だお前達は! 止ま」
見張りが注意を言い終える前にヒカルが斬り込んで全員の首を刎ねた。返り血を雨がすぐに洗い流す。
三人はニソーの町へと入った。元々そんなに大きな町ではなかったのだが各地から人狩りで人を攫ってきて人口が膨れ上がり、巨大な町となっていた。と言っても見渡す限り掘っ立て小屋みたいな急造の家ばかりで人々が劣悪な環境にいることは見て明らかだった。
ヒカルは聴力を強化した耳を傾けると怒声が飛び交うのが聞こえた。色々な人種の人々をこれまた色々な人種の武装した男が追い立てている。
「おい、お前ら、どっから入ってきた! 見張りはどうした?」
武装した集団がヒカル達に声を掛けてきた。その中の一人が彼女を見て気付く。
「貴様はヒカル・シルバーソード!」
「ヒカル、待ってください!」
ヒカルは踏み込み、一人を残して斬り殺した後でアクアの制止の言葉を聞き終わる。
「なんだ、どうしたアクア?」
「間に合ったようですね……生かして尋問したかったのです」
最後の一人が水の泡に包まれ閉じ込められる。水が足元から増えていき喉元まで満たされる。彼は悲鳴を上げる。
「お前らのやり方に任せる。それじゃあ私はリュウコウ山に向かう。全てに決着をつけた後でまた会おう」
「ああ。ルシファーとダスクは任せた」
「健闘を祈ります」
ヒカルは雨の中に飛び込んでいく。血よりも赤いカタナを握りしめ、向こうに見える山の方へと駆け抜けていった。
山道への入り口を雨具を着たルシウス神兵団の者達が厳重に警護していた。彼らは霧に紛れて高速で何かがやってくることはわかったが、それが誰かわかった時には斬り殺されていた。
雨に濡れたムラクモの刃が煌めく。たちまちその場は血の池地獄となり、立っている者はヒカルだけとなった。
そのまま山道を駆け上がる。山頂にあるという、ダスクの築き上げた城を目指して。
雨が強くなる。ヒカルは濡れるのも厭わずリュウコウ山を登っていると、途中で食い散らかされたような人の死体をいくつも見つける。何かと思って立ち止まると突然周りの茂みから獰猛な獣が飛び出してきて彼女を食い殺さんとした。素早くかわして斬ろうとするが、そいつが見覚えのある魔獣だったので思わず手が止まってしまう。
それは体こそ小さいがあのベヒーモスとよく似ていた。ヒカルは燃え滾る怒りを思い出したが思わずして仇敵に会えた喜びににたりと笑う。
「あの時はセイラに頼ってばかりだったが今は違う。私が相手になるぞ、ベヒーモス!」
飛び掛かる小型ベヒーモスの動きを見切り、かわしてすれ違いざまに斬る。血の海に沈む魔獣を見下ろしてヒカルは勝ち誇った表情をする。
だがその時山道の上の方から小型ベヒーモスの群れが押し寄せてきた。一体だけではなかった! ヒカルは気を引き締め、ムラクモを構える。
音速を超えた斬撃を繰り出し、衝撃波で小型ベヒーモスの近接攻撃を食らう前に相手をズタズタに裂いた。群れの襲撃を返り討ちにし、ヒカルは屍を乗り越える。
「私はお前らには負けない。負けるものか、ダスク!」
ヒカルは雨に打たれながら、強い意志を持って前に進む。
やがて山道の終わりに辿り着く。頂上では緑の光が噴き出していた。星の光だ。ここも地星教によるところの聖地であった。
山頂には十人中九人は悪趣味に見えると答えるだろう城が建っていた。高くそびえる尖塔はまだ建築途中で完成していない。今も工事が行われているのかと思いきや、周りに人間はまるで見当たらない。山道の死体といい、ヒカルの襲来に気が付いたダスクが小型ベヒーモスなどを使って労働者を「消した」可能性があった。
城門は閉じられている。ヒカルの来襲に備えてのことだろうと彼女も気付く。鍵を一閃を使って斬り壊し、重い扉を怒り爆発でこじ開けた。すると中はダスクの配下の魔物達でひしめきあっていた。
「成程、これが本当の伏魔殿か」
「ヒカル・シルバーソードダ……」
「ヒカル・シルバーソード、殺ス!」
「殺せるなら殺してみせろ!」
ヒカルは魔物達の中に飛び込んでいく。そして圧倒的な暴力の嵐が吹き荒れた。噴出する血の色は青い。化物共は頭を失い転げ回った後動けなくなる。ヒカルは閃光のように素早く太刀筋は稲妻のように鋭く激しかった。
1階の魔物を片付けながら見て回り、ダスクもルシファーもいないことを確認すると2階に上がる。すると2階でも似たような感じで魔物が蠢いていた。ヒカルはうんざりするが同様に斬り殺していった。
だが3階には魔物がいなかった。ヒカルは不審に思いつつ部屋を見て回る。だがどれも同じような部屋で廊下もずっと続いていた。流石におかしいと思い来た道を戻るがどこまで行っても代わり映えのしない風景で道がわからなくなった。
ヒカルは階段を探すもどこにも見当たらない。2階から登ってきた階段までなくなっているのだ。彼女は敵のなんらかの異能を疑う。
ふと、妙な臭いがしたのでヒカルはよく嗅ぐ。鼻を鳴らしながら臭いの元を辿っていく。するとある部屋の中の中央で立ち止まり、一閃で床にムラクモを突き立てた。すれば刀身に返り血がついた。
「何故位置がわかった……」
「簡単なことさ。お前臭いんだよ。臭いでわかる」
「ちくしょう、このミノタウロスが……」
頭が牛の魔物は床下で血を吐いて死んだ。用が済んだのでヒカルは部屋を出た。すると3階は普通の広さになっていた。ほどなくして階段も見つかる。
4階に上がるといきなり電撃が走ったのでヒカルはすんでのところでかわした。敵の攻撃だろうが敵は見える位置にいない。接近を試みるが高速の電撃が来る。
「ええい、死中に活あり!」
ヒカルは電撃をすり抜けて眩しい方へ駆ける。すると大広間に出て角から電撃を放つ背中の黄色いベヒーモスの姿を捉えた。そいつに向かって音速を超えた衝撃波を放ち巨体を裂く。
そして大広間にあった階段から5階に上がるとまだ未完成なのか、天井がなかった。外からは濃霧でぼやけて天井がないことがわからなかった。
雨はいつの間にか止んでいた。床には赤いカーペットが敷いてあって宿敵のもとまで続いていた。ヒカルには見えていたので怒りに燃えながら曇天の下カーペットに沿って進む。
「ヒカル、よくここまで辿り着いたな」
ダスクに声を掛けられ、ヒカルは立ち止まる。彼はその先の玉座に座っていた。その頭上をルシファーが飛んでいた。
「久しぶり、と言いたいところだがお前のことはずっとこの目で見ていた」
閉じていた左目を開けるダスク。すると虹色の瞳の魔眼ではなく、瞳まで真っ白な目になっていた。
「この全能の魔眼は自分の見たいものが何でも見れる。それでアスモデウスが倒された時誰が倒したか確認し、時を遡ってどうやって力を得たかも見た。それからはお前に夢中さ。ククク」
ダスクは含み笑いをする。ヒカルには何も面白くなかった。
「言っておくがな、アスモデウスもベルフェゴールもベルゼブブも、レヴィアタンもマモンも、あいつらがお前に負けたのはあいつらが弱っちかったからだ。俺はあいつらが死のうが全然困らない。弱い奴は俺の新世界にいらないんだよ」
「それでお前の新世界にあと誰が残っている? あとはお前とルシファーだけだ。お前達も私に倒される」
ダスクの眉がピクリと動くが、平静を装って彼は話す。
「なぁヒカル……知ってるか? 星の光ってのは莫大なエネルギーなんだ。奇跡を起こせるほどのな。古代人はその使い道を知っていた。星の光を人間に取り込み、光に選ばれた者は世界や生命を部分的にだが変える力、すなわち異能を手にした。そうやって古代人は光の戦士を量産し、魔王と戦ったんだ。それがヴラド一世やソロモン一世の正体さ。その技術をトータシア帝国は現代に甦らせた。そして古代人にもなしえなかった、魔王をも操る異能者を開発した。それが俺、真に選ばれた本物の光の戦士なんだよ!」
「それが……何なんだ?」
ヒカルは当惑する。ダスクがイマイチ何が言いたいのか理解できなかった。彼は溜息をつく。
「わからないのか? 俺は魔物使いで光の戦士で……つまり物語の絶対的主人公はこの俺で倒されるのはお前の方なんだよ、ヒカル!」
「そんな子供じみた考えで生きているのかお前は。そういえばお前子供の頃は魔王になるのが夢だったらしいじゃないか。まるで成長してないな。大人になれなかったのか?」
ダスクは歯ぎしりして怒りを剥き出しにする。
「ヒカル……そういうお前は世界を救いに来たとでも言いたげだな」
「世界を救うとかそういうことは眼中にない。ただセイラを殺された復讐を果たしに来た。言い残すことはそれだけか? ルシファー、お前がその手に持っているセイラの右腕は私が貰う。お前も何か言え」
ヒカルはムラクモを構えながらルシファーが手に持っているセイラの遺体を注視する。しかし六枚羽の魔王は何も言わない。
「こいつは性格が悪いから何も喋るなと命令している。ルシファー、もういいぞ、ヒカルを撃ち殺せ!」
ルシファーはセイラの右腕を持っていない方の手をかざすと、そこから強烈な光が溢れ出してヒカルの視界を真っ白にした。何も見えない中、ブンと鋭い音を立てて魔王の羽根弾が無数に撃ち出される。
視力を奪われたヒカルは音を頼りに羽根弾を避ける。だが弾幕が厚い。いくつかは避けきれないのでムラクモを使って弾いた。
ルシファーの一方的な虐殺になるかと思いきや、ヒカルはよく抵抗する。それどころか驚くべきことに、彼女は羽根弾を足場にして空中を渡り始めた。
「なんて奴だ、ルシファー撃ち落とせ!」
しかし驚異的にもヒカルは羽根弾をかわしながら羽根弾を足蹴にルシファーに飛び掛かる。
「ルシファー、逃げろ!」
「待て!」
ルシファーは命令を屈辱に感じたがダスクに逆らうことはできず羽根弾を撃つのをやめて逃げようとする。ヒカルは追い縋り斬りかかる。急所を外したが魔王の右腕を斬り落とす。
その手に掴んでいたセイラの右腕をヒカルは回収し着地した。その代わりルシファーは逃げ切った。ダスクは溜息をつく。
「やっぱ魔王には任せられねぇ。ヒカルの相手は俺がしないとな。ルシファー、合体だ! 来い!」
ルシファーはダスクの頭上に飛来すると、ドロドロに溶けて彼に降り注いだ。すると彼が液状の魔王を吸収し、肌が黒くなり、六枚の翼が背中に生えた。
ダスクは立ち上がり、傍の大剣ドラゴンキラーを掴み取る。ヒカルはセイラの右腕を背中の包みに仕舞う余裕がないため左手に持ったまま、右手でムラクモを構えた。
「フハハハハ、溢れ出るパワー、これが魔王の力! 俺は今こそ人を超え魔神となったのだ!」
ルシファー同様異能で強烈な光を放って視力を奪いダスクは飛び掛かる。ヒカルはムラクモで彼のドラゴンキラーの一撃を受け止める。怒り爆発の異能をもってしてもギリギリの素早く重い斬撃だった。
ヒカルが大剣を弾くと飛び退きダスクは羽根弾を撃ちながら回り込む。そしてまた飛び込んで彼女の首筋を狙う。
見えてないというのによく反応しヒカルは受け止める。ダスクは飛び上がって背後を取るが彼女も反応しすぐさま翻って彼の不意打ちを防ぐ。
鍔迫り合ってダスクは焦りを口にする。
「見えてないくせに何故対応できる!? イカサマかよ!」
「私には私の敵がハッキリと見えているんだよ。心の中でね!」
ヒカルは異能で感覚を研ぎ澄ませているおかげもあるが、セイラを殺されてからずっと視力に頼らず敵を倒すというような修行をしてきた。その成果が今実っていた。
守るだけでなく攻めに転じるヒカル。ムラクモの刃がドラゴンキラーと激しくぶつかり合う。
「くっやるじゃねーか、流石は俺が認めた女。だがなぁ!」
一旦飛び上がってヒカルの猛攻から脱するダスク。そして急降下しドラゴンキラーで斬りかかる。
この攻防の中でヒカルには一つ気付いたことがあった。それは北の大空洞で戦った時のような、先読みの能力がダスクに失われているということだった。左目の魔眼を取り替えたせいだろうと推察された。つまり彼には自分の行動は読めない、それが突き崩すカギになると考えた。
ヒカルは思いっきりムラクモを投げつけた。剣士の彼女がそんなことをするとは思わずダスクはかわせず腹に刺さって落下した。
倒れたダスクのもとへヒカルは素早く移動し、刺さっているムラクモを抜いて、今度こそ彼の首を斬ってトドメを刺した。どす黒い血が噴き出す。彼が人間でなくなっている証拠だった。
「馬鹿な……俺がヒカルに負けた……どうしてこんな……ただ……」
失意のうちにダスクは絶命する。ヒカルの視力が戻り、宿敵の首を確認すると大きく息を吐く。復讐は終わった。かのように見えた。
頭のないダスクの体がドロドロに溶けたかと思うと、空に液体が舞い上がって人の形に固まり、六枚の翼が生える。その顔は紛れもなくルシファーであった。
傲慢の魔王が復活した! ルシファーはダスクの生首を見下ろし、吐き捨てるように言った。
「人間風情がこのルシファーをいいように使いおって、無様に死んでいい気味だ」
「魔王ルシファー……」
ヒカルはムラクモを構えルシファーを見上げる。セイラを殺した仇だ、たとえ本当はダスクに敵対的だったとしても見逃す理由はなかった。
「全く、こんなくだらない人間共はさっさと滅ぼし次の星へ向かう。まずはサタンの使い、貴様を処刑してくれようぞ!」
ルシファーの六枚の羽根から鎖が飛び出しヒカルを捕らえようとする。これを音速を超えた一閃の衝撃波で斬ろうとするがびくともしなかった。驚くがすぐに頭を切り替え逃げる。
ヒカルは思い出す。サタンの封印を。これはあれと同じだ。ルシファーは嘲笑する。
「ハハハ、これがルシファーの真の力だ! ……何!?」
ルシファーは驚愕する。ヒカルは鎖を避けるどころ足場にして伝い接近を試みたのだから。
「しかし!」
何かヤバイと思ってヒカルは飛び退く。ルシファーは北の大空洞で氷を砕いた時の超能力を発揮して近づいた相手をズタズタに裂こうとしたのだ。迂闊に接近することはできなくなった。
ルシファーの鎖が乱舞する。しかしヒカルは捕まらない。魔王はイライラし始める。
「何故だ! どうして避けられる?」
「サタンは図体がデカかったからな、生憎私は身軽でね」
ヒカルは鎖を飛び移ってルシファーの頭上を取る。そして鎖の隙間を縫って音速を超えた一閃を繰り出し衝撃波で魔王を真っ二つにした。
「これで勝ったと思うなよ……」
ルシファーの切断された体が引っ付こうとする。不死身か!? ヒカルは危険を承知でそのまま飛び込む。これで殺せるならばと駄目で元々で傲慢の魔王の心臓をムラクモで刺す。すると魔王は断末魔の悲鳴を上げた。
「ぎゃああああああああああ!」
あっという間にルシファーは溶け消え去った。そしてヒカルはサタンの声を聞いた。
「よくやった。契約は満了だ」
ヒカルの中から力が抜ける。ハッキリと異能がなくなったことがわかった。そのため怒り爆発がなければこのままこの高さから地上に落下すれば死ぬだろうということもまた悟った。
死ぬのか……そう思っても特に焦りや恐怖がなかった。復讐を達成した今、別に死んでもいいとさえヒカルは思った。
星の光に囲まれヒカルは落ちる。死を覚悟して目を瞑る。だが彼女は落下途中に何かの掌に受け止められた。
「叔父様との約束を果たすんじゃなかったんですか?」
ひどく聞き覚えのある声が脳裏に響いてヒカルは目を開ける。それで彼女は光に包まれたドラゴンの掌に収まっていることに気付いた。
その緑の光のドラゴンも記憶の中のセイラのドラゴンと一致した。
「まさか、そんな……セイラなのか?」
次回「おやすみセイラ」




