カケラが落ちる
何だか予感していた。
どうして?とやっぱり。
大好きだけど。
大好きだけど。
終わりはあるんだね。
お父さんからの電話。
毎日同じ時間にあったのに。
毎日じゃなくなって、時間もバラバラになって。
最初はお母さんと一緒に電話に出たのに。
電話が少なくなると、電話が鳴る度お母さんが一生懸命にお話してて、私はお父さんとお話したいと言えなくなった。
やがて、お母さんは泣くようになって、お父さんの電話はどんどん少なくなった。
今日は、お父さんが久しぶりに帰って来てる。
お母さんは夜のお仕事を休んで、はりきって夕ご飯を作ってる。
お父さんがそばにいるから、お母さんは本当に嬉しそう。
お母さんが笑ってるのは大好き。
だけど、夕焼けで周りが赤い色になっている今。
私はお兄ちゃんとよくいた公園にいる。
あんまり思い出しだしたくない。
夜のお仕事を始める前、お母さんは泣いていた。
だから、夜目が覚めてしまって、お布団の中でずっと聞いていた事もある。
そして、時々叫んでいた。
何かをぶつけていた。
だんだん酷くなって、私が学校に行っている時にも泣いていたみたい。
下に住んでいるお姉さんが、その音に怒ってお家にやってきた。
夜のお仕事から帰って寝ていたのにうるさいからって。
でも、不思議。
そのお姉さんがきっかけで、お母さんは寂しい夜はお仕事をするようになった。
私にはわからない。
それは良かったのかな?
だって、私の前ではお母さんはお母さんだったし。
一緒にいる事は少なくなったけど、「はな」って呼んでくれて、頭なでてくれて、私が話かけてもちゃんと聞いてくれる。
だけど。
ちょっとずつ
ちょっとずつ
「お母さん」は壊れていたのかもしれない。
お父さんと目があったとき、同じ気持ちだと思った。
お父さんからの電話は本当に少なくなったけど、私が電話で話す時はいつものお父さんだった。
だけど、二人ともどこかで感じていたの。
お母さんが壊れ始めてるって。
そして、目があって確信した。
【終わった】
私はお母さんが大好き。
お父さんも大好き。
お母さんもお父さんも私と同じ。
ただ、お母さんのお父さんへの大好きは強くなって、お父さんのお母さんへの大好きは種類が変わってしまった。
今、お父さんは
お母さんの世界に自分から入っている。
お母さんが壊れてしまうまでの時間を、少しでも延ばそうとするみたいに。
でも私はお父さんのそばのお母さんを見てると、
お母さんの欠片がぼろぼろと落ちているのが見えるようで、怖くなって逃げてしまった。
お兄ちゃんとの、楽しい思い出がいっぱいあるこの公園に。
黒歴史ストックはここまでです。
ここからは不定期になります。