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第93話 自由の矛編4-16 「シミュレーター」

第93話を公開します。



20150908公開

   挿絵(By みてみん)



あらすじ

 巨人から奪った砦での生活が始まって25日目。

 取り残された現代人は、異世界での生き残りの為にラミス王国への外交団を派遣する。

 王族との交渉で満足すべき成果を得た外交団は、王族との私的な昼食会に臨んでいた。



11-16 『シミュレーター』 西暦2005年11月20日(日)昼



 佐藤静子三等陸佐は、美しい少女が夢見るような顔で話すのを見ていた。 


「私、お話を聞いた時に思わず思ったの。『妹神ルミの化身』の様な方ってどんな女性ひとなんだろう、きっと素敵な女性ひとなんだろうな、是非お会いしたいなって」


 さすがハルちゃんだ・・・

 彼女は聞いている他人の私まで恥ずかしくなるような言葉を動じることなく通訳していた。

 

「そうしたら、お父様から式典でハルカ様が登場するから見ないかって誘って貰えたので、しっかりと見させてもらったの。ああ、素敵でした・・・ 女性の身でありながら、殿方以上に凛々しくて、しかも人とは思えないほどの剣の腕前・・・ 荒々しいまでの『主神の恩寵ケリャク』・・・ 益々お会いするのが待ち遠しくなりましたわ」


 ふむ、この愛くるしい少女はどうやら夢多きお年頃特有の病気に掛かっているのかもしれなかった。

 そう、「シンデレラ症候群」だ。白馬に乗った王子様は迎えになど来ない。多分・・・・・

 あ、でも、王家に連なる彼女になら迎えに来るのか? でも、それって、兄じゃないか?

 会話しながらの昼食会は進んでいた。

 何気に驚いた事に、こちらの世界でもフォークとナイフは存在した。もちろん、形はかなり異なっているが、役割はほぼ同じだ。おかげで私たちはテーブルマナーで恥を搔かずに済んだ事は有り難かった。


「でも、まさかアラフィスお兄様と結婚するなんて話は知らなかったから、びっくり致しました。羨ましいですわ、お兄様」


 どうでもいいが、彼女の言葉はイメージ通りなのだが、よく考えるとハルちゃんもその気になったら、こんな言葉使いが出来るって事だよね? 意外と乙女チックな部分も有る訳だ・・・


「そう言うな、プリ。 お前も一緒に『新現部族ユニヴァル』の所に行くのだから」


 デュラフィス王は苦笑を浮かべながら三女に言った。

 謁見の時も、会談の時も見せなかった父親としての顔だった。

 王様は顔をハルちゃんに向けた。


「ハルカ、プリはもう、『セブァの儀』を終えている。多少の不自由は問題無い筈だ」

「『セブァの儀』ですか? 初めて聞きましたが?」

「ああ、其の方らには無いのだな。森の奥深い所で7日間何も持たずに生き残る試練だ」


 なんですか、そのサバイバル訓練? この目の前の美少女はレンジャー徽章でも持っていると?


「いくらなんでも我々の環境はそこまで酷くありませんよ。でも、『セブァの儀』はラミシィス全員が受けるのですか?」

「いや、王族だけが義務付けられている試練だ。今でこそここまで盛り返したが、一時はラミシィス全員が森の奥深くまで追い込められた事が有るのでな。その時から続いている。臣を率いる王族にはそれだけの覚悟を示す必要が有ると言う事だ。王族だけでなく自発的に行っている家も多いがな」


 レンジャー徽章持ちがゴロゴロ居るって、どんな脳筋国家なの?

 あ、だからか・・・ ハルちゃんが示した実力に素直な賛辞を贈るのは・・・


「ハルカ様、私はお父様に言われなくてもきっと、『新現部族ユニヴァル』の砦に行っていた筈ですわ」


 え? どういう事? 自由に自分の進路を決められるって事?


「ええと、それは、どう言う事でしょうか?」


 同じ疑問を抱いたのだろう。貴志君が質問をした。


「だって、『主神の加護を強く受けし一族ケリャカイス・ラミシィナ』の方が居るところなんて、『新現部族ユニヴァル』の砦だけですもの。行かないと後悔しますもの」

「どうも僕の認識が間違っていた様ですが、王族に生まれた女性は王位継承権も名前も持たないので、社会的地位が低いと思っていました。自由も無いと・・・」

「違いますわ。自分の身の振り方を決めた時に初めて名を名乗るのですわ」


 なんと! 王族の女性って意外と自由に生きて行ける?


「むしろ、臣の方が不自由ですわ。名を持つが故に家に縛られるのですから」


 目から鱗だった。

 王族の女性の数字の名は幼名みたいなもので、自分の意志で捨てる事が出来るとは思いもしなかった。


「でも、それだと、結婚などで王族に生まれた女性を悪用しようと言う人間が出て来ると思うのですが?」

「うふふふ、それは有り得ません。だって、私たちには殿方に無い力が有りますもの。お父様、言ってもいいでしょ?」

「構わん」

「私たちには、嫁ぐ先の殿方との大まかな未来が感じられるのです。まあ、流れる年月によって変わりますし、環境の変化にも左右されるので絶対的なものではありませんけど」


 貴志君が思わずハルちゃんを見た。

 私も気が付けばハルちゃんを見ていた。


 外交団が派遣される前に一番多く行った作業は、ラミス王国との関係がもたらす私たちの砦の環境変化のシミュレーションだった。

 その際に使われたのは、自衛隊が持ち込んだパソコンでも、私たちの思考・推測・頭脳でも無い。

 ハルちゃんだった。

 この少女は注ぎ込まれた記憶し切れない程のデータを基に、何十、何百のシミュレーション結果を弾き出した。

 詳しくは教えてくれなかったが、以前にも同じような事をしたらしい。

 王族の女性が持つ能力は未来視などという超能力では無く、そのハルちゃんと同じ様な能力を自覚せずに使っていると考える方が自然だった。


 この世界には、巨人だったり、洗脳可能なオーラを出す人種だったり、未来視もどきの能力を持つ女性だったり、ビックリ人間が多過ぎる・・・・・




 あ、一番のビックリ人間はハルちゃんだった・・・・・・





如何でしたでしょうか?


 王家に生まれた女性がフリーハンドを持っているのは、自分自身の幸せと王国に利益を齎す為だと思って下さいませ。

 もちろん、その能力の詳細は明らかにされていませんが、臣下たちにとっては『巫女』の様な存在として認識されているかも知れません。

 また、春香嬢が言った『この国では女性の地位が低いから』はどうやらさすがにこの秘密までは知らなかったが故の勘違いだった様です(^^;)

 それと、レンジャー徽章は生き残るだけでは貰えません(^^)

 生き残りつつ過酷な任務を遂行する課程を乗り越えた隊員だけが与えられます(^^)


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