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flower of youth  作者: ルーク
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4月第1週

3台の携帯電話が時を刻む。うち1台は秒単位で、もう残りわずか1分となった3月を

いつもどおり淡々とディスプレイの数字で示していた。それをコップを片手に各々の

持ち主が覗き込む。

3人の間にはただただ沈黙。それでも思いは共通で、次の数字を指し示す時を今か今かと待ちわびる。

蛍光灯の照明だけが光源となり、音も一切ない空間でひたすら携帯電話を眺め続ける男3人。

ここが街中ならその光景に興味深げに眺めた者も怪訝な表情を浮かべる者もいたかもしれなかった。

たが今は人を必要以上に気にする多くの群集も、日付の変わる時間まで起きているのを咎める

両親もいない。3人のためだけに用意されたと言っても過言でもない空間で男達は

儀式と言われてもおかしくない行動を取り続けていた。

やがて1秒の間を置かず次々と12時を指し示す3つの携帯電話。午後は午前に変わり、

31日からは左の3が消えた。そして1つだけその量を増す数字。


「イエーイ!!」

大げさな声と共に3つのコップが音を立てた。それと同時に携帯電話の

トライアングルの間に鎮座していたチョコレート菓子が3つ姿を消す。

俺らの出会いに乾杯、今夜は朝まで飲み倒す、いささかオーバーな言葉が現れては消えていった。

藤倉清吾はやたらハイテンションな友人二人にやや気後れしつつ、オレンジジュースを口に運んだ。

高校生の身分という事をしっかり忘れずタバコ、酒、ギャンブルは一切なしの

年相応に健全でささやかなパーティー。企画者は3人の中では盛り上げ役の蛍原風太。

それに大喜びで食いついてきたのは杉戸光一。ただでさえ盛り上がり好きの二人の中で

話はとんとん拍子に進んで行き、清吾には拒否権すら与えられず今日という日を迎えるに至った。


終業式の名物通知表配布、上級生の卒業や進級試験など、それまで比較的穏やかに過ぎていた3学期の

ツケを支払わんばかりのイベントが3月に押し寄せる。その疲れを癒すための春休みという名の

ありがたい長期休暇。塾以外の予定が入る事はないと思われていた清吾のスケジュールは

ほとんど不意打ち同然に真っ二つに叩き割られた。3月と4月の間を、どれだけ完璧に砥いだ

新品の刃物でもここまで綺麗に切れる事はないと言い切れるほどの切れ味で。

「31日夜にパーティーやるから、予定空けとけよ」

風太の声。家に帰るまでが終業式。そんな遠足の常套句が頭に浮かんだ。

全工程で一番時間を食ったのが校長の話だった終業式も、これからの春休みに浮かれた

生徒達を現実に叩き戻した配布物も、担任教師の諸注意も全て終わった所でのサプライズ。

クラスメイトが一人、また一人と姿を消す中で男3人はパーティーの算段を進めていく。

「んじゃ場所はスギの家で、お菓子とかはなんか適当に買ってこよう!

フジは遅くても塾9時には終わるっしょ?終わったら駅前にいて」

話を聞いてみれば中身は意外なほど単純なもの。「ある事」がきっかけで今のメンバーで

行動する事が多くなった3人の友情を祝してだとかなんとか。趣旨を聞いてみれば

あまりの突発スケジュールにも何のためらいもなく納得できそうで、

その行動の大げささに少し気後れもしてしまう。

たしかに4月からのクラス替えではまた3人同じクラスでいられるとは限らない。

ただでさえ成績上位2割の者が在籍する事を許される特進クラスを含め3人の通う私立桜前学院は

1学年10クラスという少子化などどこ吹く風の状態。3人がバラバラのクラスになってしまう

可能性はかなりの物だった。そうなってしまう前の最後の思い出作りだとかなんとか。

だが、この3人で集まるという事でのもう一つの目的もある。そう、このきっかけがなければ

ここまでの絆は自分達には生まれていなかっただろう。それは清吾、風太、光一の全員が

思っている事だろうと清吾は思った。


「今日から実質新学期ですかー。そして俺らも高校2年だな」

「実感沸かねーなー、なんか高校1年間あっという間だったよ」

風太と光一の会話を横目に清吾はポテトチップスを口に運ぶ。塾帰りから直行で

この場所にいる。気がつけば夕飯代わりと言わんばかりに菓子を食べていた。

この事に対する不満は二人からはない。強いて言えば「夕飯代わりに菓子は健康に悪いぞ」

という光一の突っ込みぐらいか。年に似合わずもうすでに身長が180の大台に乗りかかった

光一はこのパーティーのほとんどの出資者にも関わらず食事量はやや少なめ。

開始20分にもかかわらずジュースは未だコップ2杯目の半分を割ったぐらい。

本人曰く健康を気遣って夕食は8時にしっかり摂ったらしい。

両親が出張の多い職に就いているとかで、家には光一一人しかいなくなる事が時折あるのだという。

その時は大抵自分で作るか買ってくるかの2択。複雑な家庭環境なんだね、という

風太の冗談に父親の仕事は刺客だから4日5日帰らないのはザラなんだよ、と返す。

「あ~あ~光一は~、まだ15~」と若干怪しい音程で歌う光一。歌はそこで一旦中断。

すぐに清吾たちの方を向いて自嘲するように言った。「まっ、今日でこの歌も封印だな」

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