第二話 転生前の下準備(後編)
難産でした。
何人居るか分かりませんが、お待ちいただいた方は、お待たせ致しました。
天界side
レイの口から予想外の言葉に混乱する。
「どどどどどういう事ですか!異世界に転生するのに、何故“抑止力”、“世界の防衛機能”にならなければならないのですか!」
慌てて詰め寄るサレにレイが、落ち着けと言わんばかりの表情で説明をする。
「どうどう…、落ち着いて。」
「いやー、大体の承認はそのままでも得られるけど、頭の固い老神も居るからね、此くらいの理由が無いと納得しないんだよね。」
まあ頭の軽い新神よりはマシなんだけどね。っと、若干煩わしそうに呟くレイ。
「確かにそれくらいの理由がなければ、古参の方達は納得なさらないでしょうね。」
同意する様に発言するルリア。
「でしょ?まあ、“ソッチ”の方は人手不足だったからちょうどいい事はちょうどいいんだけど。」
レイは溜息をつきながら言う。
「まあ、そんなんだから、“彼”を“防衛機能”にすることは、もう決定なんだけど、やっぱりそれなら、それなりに能力が無いとね。」
気分を変えるように表情を変えて言うレイ。
それに対してルリアが疑問をぶつける。
「ところでレイ様?“彼”の転生先によって付加する能力が変わってくると、おもうのですが、もう決まっているのですか?」
「ん?ああ!そうそう言うの忘れてたよ。もう転生先の世界は決まってるんだ。」
思い出したように言うレイ、どうやら本当に忘れていたらしい。
「それで、どの様な世界に決まったんですか?」
サレが興味深そうにレイに聞いた。
「“トワイル”と言う世界だよ。まあ、詳しくはその世界の担当神に説明させようか…“リュエル”!」
「はっ」
レイの呼び掛けに素早く応え少し長めの銀髪を持った、青年が出てきた。
「ルリア様、サレさん、お久し振りです。」
「あら、リュエル貴方でしたか。」
「リュエル君!?君の担当世界なの!?」
ルリアとサレの二人は面識が合ったようで、各々反応する。
「えぇ、件の魂には、僕の担当世界“トワイル”に転生してもらいます。」
「そうそう、そういえば君の担当の世界がどんなのか聞いてなかったよね。」
疑問を顔に浮かべ、リュエルに訊ねるサレ。
「えぇ、それを今から説明をするところです。…レイ様?」
「うん、始めていいよ。」
では、と言い説明を始めるリュエル。
「僕の担当世界である“トワイル”は簡単に言えば、剣と魔法のファンタジーな世界です。」
「種族は様々な種があり、それぞれで特徴が違います。」
「へぇ、どんな種族があるんだい?」
リュエルが話している所に、サレが疑問を挟む。
「そうですね…、例を挙げるなら、白い翼を持ち、魔力に優れた“セレステ”、黒い翼を持ち、力に優れた“ディアボル”、獣の耳や尻尾を持ち、俊敏に優れた“ビースト”等ですね。」
「へぇ、色んな種族がいるんだね。」
リュエルの説明にサレが関心をしめす。
「説明を続けます。“トワイル”では、それぞれ基本的に種族間で国家が作られますが、近年は他種族の交易、移住等も盛んです。」
「“彼”の魂は何処に生まれるのですか?」
今度は、ルリアが疑問を口にする。
「えぇ、その事ですが件の魂には“防衛機能”と言う非常に特殊な役目がありますので、ある程度自由に行動出来て、かつ地位や権力の有る存在として、先に述べた『セレステ』と『ディアボル』の統合国家、『ラティオール』の皇子として二度目の生を受けてもらいます。」
「おっ皇子?!」
「はい皇子です。」
「いや、まあ…うん、確かにその方が動きやすいかな。」
サレが驚きの声をあげるが、直ぐに落ち着く。流石に慣れたようだ。
「“彼”には勿論修行はしてもらいますが、身体能力と魔力、それから種族ランクはかなり上の方になってもらいます。」
「それから、これは余談なのですが、“トワイル”では同性同士での結婚出産が可能です。」
「ふぇ?!どうやって?」
リュエルの予想外の一言にサレが素頓狂な声を上げて聞く。
「はい、“トワイル”の住人達はもともと出生率がとても低かったのですよ。」
「そのままでは、世界が滅んでしまうので、“トワイル”内の天界が介入し、各地に“生命の樹”を植えました。」
「“生命の樹”?」
自らの担当世界にはなかった物の名前に、首を傾げるサレ。
「はい。“生命の樹”は互いに、心から想い合っている者達がその樹に実る果実を食し、交われば子をもうけることが出来ると言うものです。」
「へぇ、なるほどそんなものが…。」
「あまり他の世界には無いものですから、知らないのも無理はありません。」
そこで、リュエルが咳払いを一つして話を戻す。
「こほん…話を戻しましょう。と言いましても、大体終わったのですが。」
「所でルリア様、レイ様?件の魂は何処に?今までの事を説明しなければならないと思うのですが?」
そう言って訊ねるリュエルに、ルリアが気まずそうに答える。
「えと、その事ですが、“彼”の魂と只今コンタクト出来ない状態なのですよ。」
「?どういう事ですか?」
返ってきた歯切れの悪い返事に、戸惑うリュエル。
「これも魂を無理矢理弄った影響だと思うのですが、“彼”の魂は今、深い眠りに就いています。」
だからコンタクト出来ないのだとルリアは言う。それに対してレイが疑問をぶつける。
「コンタクト出来る様になるまでどれ位掛かりそう?」
「恐らく、転生して5年か、7年程かと。」
質問してきたレイに淀みなく答えるルリア。
それに対して、レイは少し考えるような仕草をする。
「ふむ…僕らにとってみれば一瞬の様なものだけど、“ヒト”にとってはそれなりだね…。」
「でも…他に手も無いか。」
「うん。取り敢えず一先ず転生させて、そして、コンタクトをとれる様になったら接触しよう。」
ここに居ても、魂は不変の状態だから、と言葉を続けるレイ。
「承知しました。それでは、転生の準備に入りたいと思います。」
レイの言葉を受け、リュエルが反応する。
「それでは、サレ君手伝って貰えますか?」
「ん…了解。」
リュエルの声に真面目な顔をして頷くサレ。そして二柱は魔方陣を展開して、儀式を開始する。
「では……ルリア様、“彼”の魂を此処に………。」
「…………。」
リュエルの指示により、サレとリュエルの間に静かに、魂を浮かべるルリア。
「それでは送りましょう…。」
「うん……。」
真剣な顔をして、頷き合うと、二柱は手を自らの前にある“白い球体”―魂に手を翳すと、力を注ぎ込み始めた。
「良いですよそのままゆっくり。」
そう言うリュエルの言葉に反応するかの様に、輝きだす魂。
それを確認したリュエルは、レイに声を掛ける。
「では、レイ様…。」
「うん、仕上げは任せて!」
そう言ってレイは、魂の下に魔方陣を出現させて、詠唱をする。
「深き眠りに就きたゆたう魂よ。今、我の名の元に、新たなる生と祝福を。」
詠唱をする程に高く浮かび、輝きを増す魂。そして、レイは尚も続け、仕上げに懸かった。
「今こそ、此処に汝の新しき生を約そう。其は契約なり!」
「さあ!飛び立て!!!」
レイが、一際大きく叫んだ瞬間、魂は高く高く上って行き、そして消えた。
「行きましたね……レイ様。」
そう話しかけてきたルリアに、レイは穏やかに返す。
「ん……、そだね、まぁ此れから忙しくなるよ。」
「ふふ…、そうですわね。」
笑みを浮かべ会話をする二柱は、“彼”の魂の飛び立った方を見て呟いた。
「「彼の旅路に幸多からん事を。」」
???side
ココハドコダロウ。ボクハ、ワタシハ、ワレハ、ダレ?
ボクハ、“ ”。ソウダ、ワタシハ、ワレノ、ナハ“ ”ダ。
ココハドコダ?ワカラナイ、ワカラナイ、ワカラナイ。デモトテモオチツク。アタタカイ。
ナゼ、ワタシハ、ココニイルノ?
ソレモワカラナイ。
??…ヒッパラレル?…ヒカリガミエル。
!!イタイイタイ!イタい!イたイ痛い痛い!!
「オンギャァーー!!!!」
「おめでとうございます!!元気な男児に御座います!それに何と双翼何と稀有な、正にこの国の皇子に相応しき御子にございまする。」
??皇子?双翼?なんの事?
「ああ…!本当ですか…!」
「良く頑張ったな!!!アルマナ!」
「はい!ラース様…あの子の顔を見せてください。」
アルマナ?ラース?
「待っていろ……よいしょ。」
え?抱き上げられる感覚?
「まぁ!何と可愛らしい。目元は貴方似ですね。」
「口はお前にそっくりだな。」
??もしかして生まれた赤ん坊は……。
「初めまして、ママですよ。」
「パパだぞ。」
「ラース様この子を名前で呼んであげませんと…。」
「ああ、そうだな、男の子の場合は、“アレン”だったな。」
「えぇ、アレン生まれて来てくれて有難う。」
僕ですかー!!!
拝啓
父上、母上。貴方たちの子供は知らぬ間に転生をしてしまったようです。先立った不孝を御許し下さい。
敬具
貴方たちの親愛なる息子“ ”より。
斯くして“彼”の魂の第二の生は始まったのであった。
to be next
今回もお読み頂き有難う御座います。
作中の描写の捕捉説明
作中で、主人公のアレンは、普通に母親から産まれてますが、異性の場合は、出生率は下がりますが、出産は可能です。その場合は、“生命の樹”を使うよりも、少し産まれて来る子供の能力が高くなります。
それでは、次回もお楽しみ下しい。




