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第4話「逃げない」



「あーあ、嫌だな!一か月後は縄跳び大会か……」


 僕は極度の運動音痴だし、努力することが生理的に嫌い!


 いつもクラスの中で一番の運動音痴だった。 こういう大会は僕にとって拷問でしかない。


 自分の部屋のベッドで憂鬱になりながら、休日なのに、怠け者らしく昼寝していた。


「虹!電話よ!アキラ君からみたい!」


 お母さんが呼んでいる。


  僕はめんどくさい気持ちを押し殺して、歯を食いしばって、眠い体を起こして、アキラの電話に出た!


「おお、なんだ?アキラ!今日は遊べないぞ?」


「一緒に縄跳び大会で優勝目指して、練習しようぜ?」


「ああ、優勝なんてムリムリ。運動神経抜群で優勝候補筆頭のお前なら、やる気出るかもしれないけ ど、僕は運動が苦手だし、努力も嫌いだから。まあ、せいぜい頑張れよー!じゃあな!」


「ちょっと待て!春子も一緒だけど、それでも断るのか?」


「えっ?春子も?なんでお前があいつと一緒なんだ?やっぱり僕も行くよ!!!」


「大森公園に今から来てくれ!」


「わかった!」


こうして、僕は大森公園に行った。


「おーーーい!アキラ!お待たせ!春子は?」


「ごめん!虹!実は春子が来てるというのは嘘だったんだ!」


「はあ?なんだって!!!」


「お前、春子が好きだから、春子がいるっていえば、急いで来てくれると思ったんだよ!!!」


「別に、好きじゃねえよ!ただの友達だよ!なんだ!じゃあ、帰るわ!!!」


「おい、縄跳び大会の練習しようぜ!せっかく来たんだから!!!10分でも練習してけよ!」


「やだよ。僕はどうせ優勝できないから!!!意味ないから!」


「春子!出てこい!!!」


木の陰から現れたのは春子だった。


「えっ!春子、そこにいたの?アキラ!どういうつもりだ?」


「ごめん!虹くん。わたしがいるから来てくれたんでしょ!」


「そういうわけじゃないけれど……」


「虹は頑張ることが大嫌いだよな?苦手だからって練習しない。でも、苦手でもなんでも一生懸命 に努力したことは絶対に無駄にならないから!!!だから、一緒に練習しようぜ!」


「虹くん!わたし、なんでも逃げて逃げて逃げまくる男は大嫌い!」


「どうせ、また最下位になるのに、なんで練習しなくちゃいけないんだ。優勝なんてありえないし、 虚しいだけだろ?」


  僕は逃げるように公園を後にした。


 僕は小さいころから運動が苦手すぎた。


 初めのうちはたくさん練習した。


 でも、一向に、うまくなら なくて、努力は報われないんだっていう、努力嫌いになってしまった。


  春子の言っていたことが頭から離れない。


 逃げる男は大嫌いか! じゃあ、立ち向かう男は大好きってことか?


 学校に登校して、アキラと春子はなぜかイチャイチャしていて、僕は腹が立った。


 2人は僕を無視した。


 公園を後にしてから、アキラと春子は僕と関わろうとしない。話しかけても来ない。


 二人の距離が急速に縮まった気がする。


  僕はいてもたってもいられなくなった。


  昼休みに教室でアキラと春子に僕はついにこう宣言した!!!


「おい、アキラ!僕は今から練習しまくって、必ず縄跳び大会で優勝する!そしたら、春子は僕のものだ!!」


「ハハハ!無理だよ!練習嫌いで、運動が苦手なのに、俺に勝てるわけないだろ?」


「あきらめなさいよ!強がったって仕方ないわ。私はアキラ君が好きだから……」


「そんなの関係ねえよ」


  そう、僕は春子が好きだった。 アキラに取られまいと必死になっていて、ついにそんな爆弾発言をしてしまった。


 アキラと春子は冷たく受け流したし、周りで聞いていた同級生は、僕を馬鹿にして笑っていた。


 でも、僕は決めたんだ!


 「一生懸命やってみよう!今までやったことがないほど、一つのことに集中して頑張ってみよう」と。


  春子が言っていたから。


「逃げまくる男は大嫌いと」


 僕が練習から逃げて逃げて逃げまくっているから、春子は僕が嫌いになり、アキラも僕に呆れて、 冷たくなってしまったのだ。


  だから、 見返してやりたい!


「逃げずに戦ってみる」


 どんな景色がその先に広がっているのだろうか。


 僕は見てみたくなった。


 あと大会まで3週間。


 僕の縄跳び大会の練習が始まった。


 大森公園でひたすら練習していた。


 前回し飛びが大会の種目だ。


 初めは5分も耐えられなかった前回し飛び。


  しかし、今までまともに運動してこなかったので、ハードな練習に体が耐えられるわけなかった。


  初日は30分、前回し飛びの練習をしたら、もう筋肉痛で飛べなくなった。 縄跳び大会で優勝するには、20分以上ミスなく飛ばなくてはならない。5分も飛べなかった人が、わずか3週間で20分も飛べるようになるわけがなかった。


「ああ、つらい。運動ってつらい!!!こんなにもつらいのか!!!やはり、僕には無理なのか!!!」


 でも、僕は春子が好きだった。振り向いてほしかった。せめて、逃げないで立ち向かったという 姿勢を見せたかった。


「最善を尽くそう!優勝できなくてもいい!僕は逃げないという心を手に入れるんだ!」


 僕は3週間、とにかくひたすら練習した。 雨の日でも、サボらなかった。


 そうして、縄跳び大会の当日を迎えた。 僕は筋肉痛でまともにスラスラ歩けないほど、疲労困憊していた。 大会前日は、体を休めたけれど、それでもウォーミングアップで体を動かすのもやっとだった。


 学年主任の橋本先生がきて、校庭の前に立ち、大会開始のホイッスルを吹いた。


  みんなが前回し飛びを開始した。学年約100人中の頂点は誰になるのだろう。 僕は筋肉痛の痛みで顔を歪めながら、飛んでいた。 僕としては10分が目標だった。とにかく、10分は飛べるようにと!!!


 しかし、筋肉の疲労が練習のしすぎでしっかりと取れてなくて、記録はたったの6分だった。


  アキラは25分飛んで3連覇を果たした。


  僕は縄跳びが足に引っかかったと同時に、その場に倒れこんだ。 今までの3週間という短いようで、今ままで一番、濃い時間だった。 まさにこの3週間は僕にとって「戦争」だった。 自分との闘い! 本当に苦しかったし、しんどかった。 結局、優勝はできなかったな。 運動音痴は伊達じゃない。


  でも……


「全力でがんばったぞー!」


僕は万歳のポーズをして、そう叫んだ!!! いつもの小心者の僕なら、そんなセリフは周りの人を気にして、叫べなかったはず。 でも、そんなことは思う余裕がなかった。


 「結果はどうであれ、最後まで全力で戦い抜いた感動に僕は打ちひしがれていて、心から出た叫びだった」


  春子は僕をどう見ているだろうか? 春子を見返してやりたくて、僕は、僕は、人生で初めて 「逃げないで目標に向かって立ち向かう」 というチャレンジをしたんだ!!!


 大会後、アキラと春子が僕に話しかけてきた。


「虹、お前、生まれ変わったな!あんなに努力嫌いだったのに、毎日、練習して!」


「優勝できなかったことなんて関係ないわ!逃げないで目標に突き進んだ虹くん、今のあなた、 最高にかっこいいわ!!!」


「俺たちは、わざとお前に冷たくしていたんだよ。ごめんな。でも、そうすることで、きっと お前が反抗してくると思ってさ。練習して、見返してやるってなるんじゃないかって思っていたら、 本当にそうなってくれた。単純だよな」


「そうだったのかよ。でも、僕は努力する面白さを実感することができたよ。これは、一生の 財産だな」


「おい、春子。お前、虹に渡すものがあったんだろ?」


「ああ、はい!」


春子が僕に渡したのは、大森公園で必死に練習している僕の写真だった。


「いつの間に隠し撮りしたの?お前ら、僕のこと気になっていたのか?」


「当たり前だろ?友達だからな!」


「そう。そして、写真の裏を見てみて!!!」


そこには、赤い文字でこう書かれていた。


「大好き!」

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