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第14話 イタコ・シャークは不敵に笑う! 天才軍師の計略が忍者を絶望の奈落へ突き落す!!!

「ンフフッ……惜しかったですねぇ、忍者のお子様」


「っ!」


 いきなり背後から聞こえてきた声に反応し振り向きざまに手裏剣を見舞う忍之介!


 キン!


 難なく弾き返される!


「イタコ・シャーク……毒で死んだんじゃ……」


「残念。この私自身に影響が及ぶ前に“御霊”を切り離しました。よって“ヨーゼフ・メンゲレ”は消滅しましたが私はこのようにピンピンしておりますよ……ンフフフフッ!!!」


 それは絶望的な宣告だった!

 あれほど苦労して倒したと思ったのに蓋を開けてみたら無傷!

 イタコ・シャークは想像していたよりも遥かに強敵だった!


「この私を倒したくば、あのような時間のかかるやり方ではダメです。一瞬で、“御霊”を切り離す間もなく仕留めなくてはね」


「なるほど……じゃあ次はそうさせてもらうよ」


 ここでこの難敵から逃げるわけにはいかない!

 忍之介はイタコ・シャークに駆け寄ろうとする!


 しかし!


 ビュオオオオーー!!!!


 イタコ・シャークの背後からいきなりの突風が吹く!


「くっ! 何だ!?」


 その風の勢いは忍者の前進を阻むほどに強い! そして超自然の突風が止んだ後、そこに立っていたのは!


「風は、必ず吹きます」


 ゆったりとした道服を着、頭巾を被り、そして右手に羽扇(うせん)を持った優雅な佇まい。

 鬼神や天候をも自在に操り、人心を察知・掌握する術に長け、高い知略を持って三国時代の中国、蜀の国の治世に尽力した天才軍師。


 我が国においても、あまりにも有名なその男の名は、諸葛亮(しょかつりょう)孔明こうめい


「三顧の礼をもって迎えなさい」


 諸葛亮はちょっと偉そうに羽扇をパタパタさせた。


「天才軍師が相手か……だが忍者とて戦いの天才! 相手にとって不足無しだな!」


 変幻自在の“口寄せ術”を行使するイタコ・シャーク。その次なる変化は中国の伝説的な軍師とは!

 しかも史実ではなく恐らく『三国志演義』の方の御霊だ。これは強敵!


「何を仕掛けてくるかわからないな。油断せず、慎重に行こう」


 じりじりと距離を詰める忍之介。先ほどのように天候まで自在に操られては、無策で突っ込むのは危険すぎる。


 パシッ。


 その音は、いきなり忍之介の頭上から発生した。高い天井を持つ体育館。見上げるとそこに、無数の氷柱(つらら)! 天井から剥がれた鋭利な落下物が忍之介に迫る!


「大気を!?」


 急激に天井付近の気温を低下させて氷柱を生み出したのだ! 危ない!


 忍之介は、その場で停止! 見る見るうちに氷柱と彼との距離が詰まってゆく!

 このままでは頭部にヒットし、致命傷を負うことになる!


 が、忍者は転んでもただでは起きない!

 自分目掛けて落ちてくる氷柱をギリギリまで引き付けておき、


「シャアッ!」


 寸前で回避、氷柱を掌底で叩いて軌道を逸らし、諸葛亮に投げ返した!

 攻防一体、まるで揺れる柳のようなしなやかさを持った反撃!


「その動き、読んでいますよ」


 涼しげな諸葛亮の声。


 羽扇が、閃いた。


「っ!」


 忍之介は咄嗟に、その攻撃をアクロバティックな背面棒高跳び的モーションで避ける!

 ギュン、という音と共に氷柱を容易に粉砕して忍之介の真下をレーザー光線が通過していった!


 ドオォン!!!


 体育館の壁に当たったレーザー光線がそこに巨大な穴を穿つ!

 恐るべきその威力!


「光学兵器、だとっ!?」


「軍師の(たしな)み、ですよ」


 見れば諸葛亮の手にした羽扇が眩く光を放っているではないか!

 この羽扇からレーザー光線を発射したというのか!?


 と、ここで解説をしよう!

 筆者がいくつかの参考資料をあたったところによれば、この時代の中国の高名な軍師は皆、羽扇や呪符からレーザー光線を放って戦っていたようである。

 諸葛亮はもとより魏の司馬懿も、後漢末期に活躍した仙人である左慈も、何らかの光学兵器を使用していたという比較的信憑性の高い映像資料がある。


 しかし当然のことながら現代、レーザー光線を放つことの出来る得物を製造する技術は失われている。これは古代インドのダマスカス鋼や日本刀の製造方法などと同様の失われた技術(ロストテクノロジー)の一種であると考えるのが自然だろう。


「私の計算によればあなたは、ここで死ぬことになります」


 光学兵器も充分に恐ろしいが、天才軍師はそれに加えて未来予知の才能すらあったという。諸葛亮は忍之介に対し、さらりと死刑宣告にも等しいことを言った!


「僕が、ここで?」


「定めです」


 羽扇が再び輝きを強める。もう一度、あのレーザー光線を放とうとしているのか!


「自然現象を操り、光学兵器まで搭載しているとは……近頃の軍師はオシャレだなぁ。その上、未来予知まで。これはちょっと勝てそうにない、かな」


 やや弱気なことを言いながら、忍之介は諸葛亮を中心として円を描くようにじりじりと横移動。正面に立てばあのレーザーの直撃を受けてしまう。可能な限りかわしやすい状況を作りつつ、少しずつ距離を縮めてゆく作戦だ。


「勝てそうにない、と言いつつもその目は何です? この天才軍師諸葛亮孔明に対し、やけに挑戦的な視線を向けてきますね。勝算あり、というわけですか」


「さぁ……どうだか」


 すっと、懐から手裏剣を取り出す。しかし掌の中にうまく握り込み、その存在を諸葛亮には見えないように隠す。


「狙っていますね。一発逆転の好機を」


「試してみようか」


「是非とも」


 忍之介は駆け出す……と見せかけてフェイント! 手裏剣投擲!

 対する諸葛亮は羽扇を振るって放射状に拡がるレーザーを放出!


 その攻撃を忍者の経験則によって察知していた忍之介は跳躍して回避しようと……


 その時! 忍之介の足が何かに引っかかった!

 体育館の磨きこまれたフローリングの床面に小さなささくれ! これが忍之介のジャンプを阻害したのだ!

 偶然にしても不運過ぎる! ちょうど飛び上がろうとしたその場所にささくれが起こっているなんて!


 いや、これは実は偶然などではない! 天才軍師は戦闘フィールドのありとあらゆる要素を掌握し、忍之介をこの地点へと誘導したのだ! 計り知れぬその深謀!


 (つまず)いた忍之介の胴体を、レーザー光線が貫通!


「ぐわぁ!!!」


 忍者が、悲鳴を上げる!

 忌まわしき死刑宣告が現実になってしまった!

 忍之介よ、君が倒れたらこの世界は一体どうなってしまうんだ!?

 誰がシャーク・テロリスト達と戦えるというんだ!?


 絶体絶命のピンチ!

 次回へ続く!

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