魔王城のヘンリー。
「君、大丈夫…?」
ヘンリーは苦虫を噛んだ顔をしているメイドに言う。
彼女は知人に似ていたのだ。
「申し訳ありません、ヘルグラム様…でよろしいでしょうか?」
メイドは我に返ると跪き言う。
きっと、さっきの会話を聞いたのだろうとヘンリーは思った。
「私はナリス、アムネシアとフィルズを両親に持つ者です」
メイドはナリスと名乗る。
二人の子という事実に驚き、聞き覚えがある名に更に驚く。
「アムネシアは子がいたのか?それにしても、ルディを守って?」
率直な問いを投げるとナリスは頷く。
「はい、ルディ様の専属メイドです」
「ルディはどこですか?」
「ルディ様は、安全な場所にいらっしゃいます」
ヘンリーはその言葉に胸をなで下ろす。
「案内して下さい」
「それは…」
「できない」
できない、そう言ったのは魔王だった。
「ルディを帰すことはできない」
再度言う。
それは決意の現れでもある。
「魔王の言う事が聞けないのか?」
魔王はルディを攫おうとする者、ヘンリーを睨む。
「生憎人間なんで、魔王の言う事は聞けないよ」
憎まれ口を叩き、その後真面目な顔をする。
「こちらの世界に来ないかい?」
それは、夢にまで見た事だった。
「私は魔王だ。だが…」
魔王はヘンリーをじっと見る。
「いいのか?お前には魔王の素質が…あって当たり前か」
前世で魔王をしていた者、それを思い出しそう呟く。
迷い、揺れる。
「お前が魔王になってくれるのか?」
それは希望だった。
ヘンリーとナリスはその言葉に驚く。
「人間に魔王はできないよ」
「いくら何でも無茶です!」
ヘンリーは苦笑いし、ナリスは慌てるのだった。




