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明晰夢

「――おい。アキ。アキ?」

 ――誰かが俺のことを呼んでいる?

 俺を取り囲む三つの影。俺は、彼らを知っている……。そんな気がする。しかし誰かは思い出せない。

 そもそもここはどこだろう?

 何やら古い小屋のようだ。木でできている。よく掃除されているためか黴臭さはない。部屋の広さは大人が三人ギリギリ寝転がれるかというくらい。でも俺は今、何故かそんなに狭苦しさは感じていない。どうしてだろう。

「アキ。おいって」

 そこで俺はようやく、俺の前にいる三人が中学生であることに気づいた。なぜか小学生でも高校生でもなく、中学生だと分かる。

 俺は自らの手のひらを眺めた。そうしてようやく気づく。

 縮んでいる。

 思えば視線も低い。狭苦しい小屋に四人もいられるのも、自らの身体が小さくなったからなのだ。

 俺はその事実をすんなり受け止めた。

 なぜなら、これは夢だと脳が理解していたからだ。

 明晰夢。

 夢を夢だと理解して見る夢。

 知識として知ってはいたが、実際に見るのは初めてだ。

 明晰夢といえば、魔法のように思い浮かべたことが現実になると聞いたことがある。俺は固く目を瞑り、空を飛ぶイメージをしてみた。しかし残念ながら、身体は全く浮く気配を見せなかった。

「だから、何やってんだって。頭おかしくなったのか?」

 俺の正面にいた男が呆れたように言う。

 どうやら俺は魔法は使えないらしい。仕方がないので、夢の状況を把握することに専念しよう。

 目の前にいるのは三人の中学生。男が二人、女が一人。見たことがあるような気がするが、思い出せない。中学時代の同級生なんて、もう十三年も前の話だ。覚えていなくても無理はない。そもそもこいつらは本当に俺の同級生なのだろうか? 夢だから、他のところで出会った人や見た人などが中学生という設定で出演していてもおかしくない。何かの俳優だったりしないだろうか?

 俺に話しかけてきた男は、短く刈り上げられた頭髪にタンクトップといういかにもスポーツ好きな中学生男子らしい出で立ちだった。

「悪い、頭おかしくなったかも。自己紹介してくんない?」

 試しにそう言ってみる。いくら夢の中だけの付き合いとはいっても、名前が分からないのでは不便だからだ。

「え? アキくん、記憶喪失になっちゃったの? 大丈夫?」

 唯一の女子が心配そうに俺に話しかけてきた。中学生なので当然かもしれないが、化粧っ気はまったくない。でも染めていない自然な茶髪や、カラコンをつけているかのようなブラウンの虹彩、丸っこい目に小さめな口など、男子ウケが非常に良さそうな顔をしている。俺も素直に、可愛いと思う。感性まで中学時代に戻ってしまったのだろうか?

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