力の代償
【前回のあらすじ】
《レン》
ノエルとオルフェウスの戦いが始まった。
あのノエルの連撃を軽々と受け流すなんて、魔王にも凄いのがいるもんだね。あ、魔王って元々凄いのか。
それにしても、ノエルの使った技……。なんか、嫌なエーテルの流れを感じる……。
妖刀抜剣……。僕の過剰強化よりも反動がすごそうだ。
ノエルは、オルフェウスが構えた事を確認すると、すぐにオルフェウスに向かって斬りかかった。オルフェウスは両手剣で受け止めたが、その刃は先ほどよりも重く、鋭くなっていた。
(……っ!!この力の上がりは……!)
オルフェウスがそう思ったのも束の間、今度はオルフェウスの両手剣の下からノエルの蹴り上げが飛んできた。あまりの蹴りの重さにオルフェウスは思わず、両手剣が上がってしまった。
(しまった……!胴体がガラ空きに……!)
(ようやく奴の守りが崩れた!)
「これで終わりにしてやる!!『人殺剣・刺極』!!」
そう言うと、ノエルはオルフェウスの胸部にめがけ、刀を突き刺そうと構えた。それと同時にノエルの刃には紫と黒の光を纏った。
その様子を見ていたレンは、驚きを隠せなかった。
(あの技は……!こんな所で正気なのか!?いくら決勝に上がりたいからって流石にその技は……!)
「オルフェーー!!気をつけろーー!!」
レンはオルフェウスに向かって叫んだ。
(あのレン・フリューゲルがそこまで言う程の技とは……。なら……!)
それを聞いたオルフェウスはそう思い、一か八かの覚悟で、
「液状化!」
と言った。そして、ノエルの刀はオルフェウスの胸部を貫いた。観客席はざわつき、実況役の兵士も困惑した。
「こ、これは……!なんと言うことだ……!!ノエル・フリューグント選手、オルフェウス選手の胸部を貫いてしまったぞー!?勝利したい気持ちが先走りすぎてしまったか……!?」
そして、審判がリングへと上がろうとすると、
「心配する事はない!俺は無事だ!」
とオルフェウスは闘技場全体に響き渡るように大声で言った。
実況役の兵士は、どういう訳かを探るために、スコピの千里眼を使って、オルフェウスの身体を見た。実況役の兵士の視線がオルフェウスの貫かれた場所に向くと、実況役の兵士は思わず叫んだ。
「あぁーーーーーっ!!」
その叫び声に、思わず観客席は静かになった。
「オルフェウス選手!なんと液状化で致命傷を免れていたぞ!!なんという奇跡でしょう!!リングが血塗れにならなくて良かった〜〜!」
実況役の兵士がそう言うと、観客席はまた騒がしくなった。
「何……だと……!?」
ノエルは思わず、その場で固まってしまった。
「神聖な闘技場を血で汚したくないからな」
オルフェウスはそう言いながら、ノエルを殴り飛ばした。ノエルはリング外スレスレの場所で止まった。
「液状化という魔法は聞いたことがない……。貴様…、まさか魔王か?」
ノエルは恐る恐るオルフェウスに聞くと、
「そうだと言えば?」
オルフェウスはそう言った。
「やはりな。無から新たな魔法を一瞬で創り出せるのは魔王の特権だからな……」
ノエルはそう呟くと、オルフェウスからこう聞かれた。
「だが、なぜそれを気にする?」
「これで貴様を倒す理由が出来た……!」
ノエルがそう言うと、観客はざわついた。
「俺を倒したところでお前の気は晴れるのか?」
「あぁ、少しはな……」
すると、オルフェウスはため息をついた後に、こう言った。
「故郷を失い、魔王レグルスに唆され、倒すと誓ったレグルスを横取りされ、行き着いた先が魔王を殺し続けるという事……という解釈でいいか?」
「ああ、そうだ……!俺は真の仇がレグルスだと分かった時、一度は心に酷い傷を負った。だが、それがあって俺はレグルスを殺すと誓った……!だが、そいつはただの人間に殺された!!だから……、だから俺は、全ての魔王を殺し続ける!!そうしなければ、俺の気は……!!」
ノエルが俯きながら強く刀を持った手を握ると、
「それでお前の気は晴れても、お前の家族や仲間の気はどうだろうな?」
と、オルフェウスは聞いた。
「知るか!!母はとっくの昔に死んだ!自分の弱さを捨てるために俺は仲間をも捨てた……!」
そういうノエルに対し、オルフェウスは
「そうか」
と言いながら両手剣を地面に突きつけた。
「お前が討とうとしている仇はあくまで、『故郷』の仇、というわけか。青いな」
オルフェウスがそう言った後、ノエルはオルフェウスに向かって刀を構えて突撃した。
「何とでも言え!!どの道、貴様の敗北は決まっている!!」
そして、ノエルの刀がオルフェウスの身体を斬り裂こうとした時、
「……ッ!!」
ノエルは急に苦しみだし、膝から崩れ落ちた。
「やはり……、な」
オルフェウスは両膝をつくノエルを見ながら呟いた。
「ハァ……、ハァ……、な、何故だ……。急に、身体…が……」
ノエルは胸を押さえながら、息を整えようとしたが、
「うぅっ……、ぐっ…、ううあぁぁっ……!!」
ノエルの身体には激痛が襲っており、とても息を整えるどころではなかった。さらには目から出血し、吐血までする程にノエルの身体はボロボロになった。
「貴様……、わざと話を長引かせて……」
「そうでもしなければ、お前は[妖刀抜剣]のデメリットを机上の空論とみなしたままにするかもしれなかったからな」
「デメリット……だと……?」
ノエルはもはや、声を出すのがやっとにまで弱っていた。
「言ったはずだ。妖刀抜剣は自身に爆発的な強化を付与と引き換えに、自らの命を削る技だと」
ノエルは吐血が止まらない口を手で押さえながら聞いていた。
「それが、なんだ……?」
「お前は最初から妖刀抜剣を最大出力で使いすぎたんだ。それは俺と話している時も同じだった。それだけ長い時間使ったんだ。お前の身体は今、至る所で悲鳴を上げてるはずだ」
オルフェウスがそう言うと、ノエルは既に地面に倒れており、上体を起こしながら刀を再び握り締めた。
「まだだ……。まだ決着はついていない……」
「おとなしく降参しろ。ボロボロのお前と戦う意味はない」
「……ッ!!ふざ、けるな……。ふざけるなぁぁ……!!」
ノエルはなんと、苦しみながら立ち上がり、再びオルフェウスに刀を構えた。
「ハァ……。降参しろと言ったはずだが……、仕方ない」
オルフェウスはそう言いながら、ノエルに猛スピードで近づいた。そして、ノエルの目と鼻の先で止まると、
「目の前を見過ぎるな」
と言いながら、ノエルの首の横を手刀で叩いた。
ノエルは気を失って倒れそうになると、オルフェウスが倒れるノエルを受け止めた。審判が確認しようとノエルに近づくと、オルフェウスはすぐにその場から離れた。
「安心しろ。神聖な闘技場で殺生なんて愚かな真似はしない」
そう言うと、オルフェウスは入場口に戻っていった。
「しょ、勝者……。オルフェウス選手……」
審判の判定で、オルフェウスの勝利が決まった。だが、依然として観客席はざわついたままだった。
入場口で試合を見ていたレンは、戻ってきたオルフェウスとすれ違った。
「いいの?オルフェ、自分が魔王だって事バラされて」
とレンが聞くと、
「別に構わない。ただ、『魔王』としての咎を背負わなければならなくなったがな」
と言いながらオルフェウスはその場を去っていった。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
もっと……、もっと語彙力を……!




