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ストレンジフィールド  作者: 大犬座
3章 ストレンジャー・サークルとコロニーの悪意
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閑話2 逆鱗

時系列では3-22と3-23の中間、夜の間の出来事です。

食堂での食事が終わり、ミエリは自分の部屋に戻ってレガナの入った籠を机に置き、疲れた体が誘うままにベッドへと倒れ込む。


「はぁ……もう寝よ」


「ミエリ、大丈夫ですか?」


すると、いつの間にか側に立っていたビルセティが、心配そうに顔を覗き込んできた。


「わあっ!?ビルセティいつの間に!?」


一人で入ってきたと思っていたミエリは、急に横から顔を覗き込んできた陶器人形に驚き跳ね起きる。


「驚かせてしまい申し訳ございません。その……今回こと、どのように弁明すべきか分かりません。どのような罰でもお受けいたします」


「ちょ、そんな大袈裟なことじゃないって!ていうか、ビルセティは何も悪くないんだから!」


今回の事件を気にしたビルセティは、何かしらの形で償う事を申し出るが、当然ミエリは全力で拒否する。


「そんなことよりもさ、沼地でシャラムとアフタレアと三人だったんでしょ、そっちは大丈夫だったの?」


「あ、えーと……概ね大丈夫でした」


「それって少しヤバかったってことだよね……?何があったの」


「実は……」


………………


クルルメウの沼地、その中で鎧と盾を捜索する為にやってきたシャラム、アフタレア、ビルセティの三人は、同行していたジェインズのパーティから離れ、当時の道のりを思い出せる範囲で再現して移動していた。


「ったく、どっかの世界には「干し草の中から針を探す」って言葉があるらしいが、今の状況は正にそれだな」


「でもこのダンジョンにあるのは確かだから、そういう意味ではビルセティの探し物よりはマシでしょ」


一向に見つからない目標に不満を漏らすアフタレア、それにシャラムが気晴らしにもならない言葉を返す。


「いや、アタシだって真面目に探してるさ、でもこのダンジョンって目印になるモンが一つもないだろ?なんかだんだん不毛に感じてきてさ」


「ある程度目星がついているなら私が触手を這わせて広範囲を探せるのですが、この広大さで全くヒントが無いのは流石に無茶です」


「そうは言ってもさ、あの状況じゃ置いた場所に目印とか付けてる時間なかったし、そもそもあんたを乗せる為に脱いだんだから文句とか言わないで欲しいんだけど?」


どうしても文句の止まらないアフタレアに、シャラムは苛つきが溜まっているようで、段々と語気が強くなっていく。


「まあそうだけどさぁ……と、どうやら人ん家に来ちまったみたいだな」


そう言ってアフタレアが足を止める、先頭で二人の方を向いていたシャラムも前を見ると、そこは至る所でボコッボコッと音を立てて多彩な液体が流動している地帯だった。


「スライムやウーズが集まる巣みたいな場所だね、こんな所通った記憶無いし引き返そう」


「そうしたいなら、とりあえずこの囲まれてる状況をなんとかするしかねえな」


そう言われてシャラムが周囲を見回すと、既に通ってきた場所もスライムで浸水しており、逃げ場の無い状況になっていた。


「大丈夫です。私が吸収して道を作りますから」


触手を出しながらそう進言するビルセティを、何故かアフタレアが手で制してシャラムの前に出た。


「まあ待てよ、こんなに集まってるなら一網打尽にした方がいいだろ、そう思わねえか、ドラゴンちゃん?」


「何?ブレス吐くなんて疲れるから嫌なんだけど」


「でもせっかくならストレス発散も兼ねてしようぜ?な?」


そう言って、アフタレアはシャラムの前に立つと、彼女の首を撫でてその顎下の位置にある一際輝く逆さについた鱗を弄る。


「……ッ!?」


その瞬間、シャラムの瞳孔が細長く見開き、口から黒煙を噴き出す。その眼の形はドラゴンの瞳と言うに相応しいもので、その恐ろしさを剥き出しにした眼光は、ミエリが見たら腰を抜かすだろうとビルセティは考えた。


「オイ……テメェ何しやがる……」


「へぇ〜……お前もそんな風に怒るんだな、てかドラゴンってキレ方がワンパターン過ぎねえか?」


「あ゛ぁ゛!?ふざけた事抜かしやがって!そんなに死にてえのか!?」


「おうおうやってみろ!アタシ達の皮膚も焼けねえお得意のバーナーを噴いてみろよ!」


「ッ!!?テメェはぶっ殺す!!!グォ゛ラ゛ル゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!」


激怒したシャラムが口から自分よりもデカい炎の波を吐き出す。アフタレアは上着を脱いでそれを遠くに投げると、迫り来る波を両腕で受けようと構えた。


沼地を真っ赤に染める炎の波は、真後ろにいたビルセティの表面まで焼き、彼女の全身をひび割れさせるほどの威力だった。


「ふぅ〜、中々の手ごたえだったぜ」


炎の波が終わり、所々燃える大地の中でアフタレアが腕をさすりながら減らず口をのたまう。


「ぜぇ……ぜぇ……クソッ、あんたに舐められるのは最高に腹立つけど、流石にもう限界……」


シャラムは疲労困ぱいになり、荒く息をして猫背になりながらもアフタレアを睨む。そこまでして出した彼女の全力はダンジョンを遠方まで焼けた不毛の地にしており、アフタレアの言う通りスライムやウーズを一網打尽にしていた。


(これが狙いだったのですね、ですがそれにしてはダメージを負いすぎてます)


残ったスライムを吸収しながら、ビルセティがアフタレアを見る。余裕そうな態度を見せていた彼女だが、その腕は酷い火傷を負っており、上着を拾っても袖を通さず、肩に掛けるだけに留めていた。


「私にもあんたにも負担にしかなってないのに馬鹿じゃないの?もう付き合ってらんない、私はさっさと行くから」


そう言ってさっさと焼けた大地を進んで行くシャラム、そんな様子を見ながらアフタレアが頭を掻く。


「あ〜あ、イケるかもと思ったんだが、流石にまだ無理だったか」


「……?何の話ですか?」


「いや〜、ドラゴンマンやドラゴンメイドには本物の竜みたいに喉元に逆鱗ってのがあるだよ、んで普通のヤツがそれ触ると今みたいにブチギレるんだ」


「普通の人が触ると?どういう人が触るとどう違うんですか?」


「なんか一部の世界のドラゴンマンやドラゴンメイド限定らしいけど、心許した人が触ると逆に敏感な性感帯に変わるんだと、まあ股間とか胸みたいなもんなんだろうな」


「なるほど、それなら怒るのも当然ですね」


「結構話す間柄になったからワンチャン?と思ったけど、全然だったな。あーあ、アイツのしおらしくなった姿を一度は見てみたいぜ」


そんな事を言いながら、アフタレアはシャラムの向かった方へと歩き出す。残されたビルセティはそんな彼女の不可解な願望を理解できず立ち尽くしていた。


「……こういう事は理解した方が良いのでしょうか、帰ったらミエリに聞いてみましょう。……ん?おや、これは」


そんな事を考えつつ、なんとなく火を触手で消しながら歩き出したビルセティのその触手に何か鋭いものが刺さる。見ればそれは、収まっていた剣は剥き出しのままだと察せられる片手剣の鞘が付属した、竜の角の様なスパイクの付いた盾と、豪華な儀礼的な装飾の施された鎧だった。


「……どうやら、藁山から針は見つける事ができるようですね」


………………


「へ、へぇ〜……なんというか、二人らしいと言えば二人らしいね、でもシャラムってそんな風に怒るんだ……」


「ただ、その前からアフタレアによる挑発もありましたし、逆鱗を触らなければあのように怒らないかと」


ビルセティの回想から仲間達のなんとも言えない一面を垣間見たミエリが、すごく微妙な表情を浮かべる。


「しっかし性感帯かー、股間や胸と一緒にするのはあんまりだけど、なんかみんな不思議な生態してるよね」


「そういう意味では、アフタレアが興味を惹かれているのも理解できますね。ミエリはどう思いますか?」


「いや、あれは理解しなくていいよ」


「かしこまりました」


そうして、なんとなく始まった会話はミエリの気晴らしとなり、緩やかに夜は更けていった。

逆鱗の謎設定ですが、これはたまたま見かけたオメガバースの派生設定のドラゴンバースから引用したものです。

あとアフタレアの服が燃えないのは漫画的表現ということで……多分耐火性のすごい服だったのでしょう。

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