3-15 ゼノルという青年
『ガードナーのイサオ様、危険物ナシ、認証完了、お疲れ様です』
「いたな……何やってるんだ……?」
ギルドのゲートをくぐり、中に入ったイサオの視界に見慣れた男の異様な姿が目に映った。
「んほぉぉぉぉ!!このテントしゅごいのぉぉぉぉ!!」
ギルドのロビーの中心で例のポーター、ゼノル・アーチランドがボタン一つで展開するテントを見て絶頂していた。そばではアマユがため息をついてその様子を見ている。
「はぁ……あ、イサオじゃない何か用事?」
「どうやらこいつは噂通りの変人みたいだな、おいここで騒ぐのは迷惑だから外に出るぞ」
「え?その感じ……ゼノルのこと知ってるの?彼は元々いたウォッテンベルグ区域でしか話題になっていなくて、最近この区域にやって来たばかりだから意外だわ……」
「説明ありがとうな、いや、俺も一昨日こいつの絡まれて存在を知ったんだ、おい!ゼノル聞いてるのか!?」
イサオがゼノルを知っていることにアマユが説明くさく驚く、そんなアマユにイサオは軽く返答すると、その横を通ってゼノルの方へと向かいながら叫ぶ。
「んあ……?あ!!イサオさんじゃないですか!パーティ追い出されて僕と組みに来たんですか!?」
「え?貴方ゼノルとそんな約束してたの?というかミエリ達のパーティ追い出されたってどういうこと!?」
「こいつの言葉を間に受けるな、確かにそんな話にはなったが、俺はパーティを抜けてないしそもそもこの話をミエリ達は知らん」
ゼノルの言葉に酷く動揺して声を上げるアマユに、イサオが眉間に皺を寄せながら否定する。
「お前の事を端末の総合チャットで調べたが随分と有名人らしいな、ダンジョン内での生活水準を上げる名目でパーティの共有財産を勝手使って道具を買っていたと、それを理由に追放したという書き込みが何件もあったぞ」
「全く失礼な話ですよね、普段のポテンシャルを保つためには必要な経費だとちゃんと理解して欲しいものです」
「失礼なのはお前だ、必要だとしても仲間と相談してからだろうが、それに資金の殆どをそれに注ぎ込んでいたんだろ?当然の扱いだ大馬鹿者」
悪評を全く悪びれないゼノルに対しイサオが静かに怒る、そんな様子を先程から戸惑いながら眺めていたアマユが困惑の表情のままイサオに近づく。
「一体どういうこと……?説明してイサオ」
「大した話じゃない、実は……」
事情を説明されたアマユは聴き終わると微妙な表情でイサオに同情の目を向けた。
「あなたも散々ね、こっちとしては引き取り手がいるのはありがたいけど、その人好しな性格は損ばかりするわよ」
そう言いつつも、アマユは呆れた表情を自然な微笑みへと変える。
「でも、あなたのそういう相変わらずなところ、私は嫌いじゃないわよ」
「フッ……そうか、それはそれとしてこの珍獣を外に出すぞ」
そう言ってイサオがゼノルの腕を掴んだ時、突如イサオの端末が鳴り響いた。
「なんだこのタイミングで……もしもし?」
「イサオさん?ちょっと大変なの!」
応答すると端末からミエリの声が聞こえてきた。
「なんだ?一体何があった?」
「さっき路地裏に入っていく怪しい人たちを見つけたんだけど、人攫いだと言ってエンロニゼが捕まえるために一人で突っ走って行ったの!」
「なに!?場所はどこだ!すぐに行く!」
「えーと、西の商業地区って地図に書いてある!そこの三階建の武具屋とアクセサリーショップの間!」
「分かった!こっちでコロニーガードを呼ぶからその場に待機しろ!すぐ行くからな!」
それだけ言うと端末を切り出口へと急ぐ。
「ちょっと何があったの!?」
「ミエリたちが商業地区でゴロツキを見つけて追いかけているらしい、すぐに向かうからそっちでコロニーガードに連絡してくれ!」
「あっ!待ってくださいよ!」
アマユに簡単に説明して急いでギルドから出ていくイサオをゼノルが追いかけていった。




