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ストレンジフィールド  作者: 大犬座
3章 ストレンジャー・サークルとコロニーの悪意
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3-5 勝手なトカゲとドラゴン

既に仄かに明るい夜になった世界を、街の灯りが照らしている大通りを五人が練り歩く。


「あ〜……どうすっかなぁ」


そんな中で急にアフタレアがソワソワし始める、そして自宅と思われる家の前でボールを一人弾ませる少年を見つけると舌舐めずりをして近づいた。


「おーいそこの僕ぅ?ちょっとお姉さんと楽しいことしないかぁ〜?」


「え……な、なんですか?」


「なにちょっとそこの裏路地ですっごい気持ちいいことをするだけだよ?さあ早く」


「コロニーガードさーん!ここに変質者がいまーす!早くきて下さーい!」


アフタレアの危険な誘いとそれに戸惑う少年のやりとりを見てシャラムが大声で叫ぶ。


「お、おい!何やってんだよ!」


シャラムの行動に動揺するアフタレア、その隙に少年は家へと入っていった。


「いや、その言葉そっくりそのまま返したいんだけど、あんた急に何やってんの?」


「いやさ〜もしかしたらエンロニゼちゃんが夜のお相手をしてくれるかもしれないからさ、弾の補充でもしようと思って」


「……サイテーだね、本気でくたばって欲しいんだけど、というかまだみんながいるのに誘うって頭おかしいでしょ」


「あの〜……弾の補充ってなに?あの子から弾丸でも恵んでもらうつもりだったの?」


二人の会話を理解できないミエリが純粋な目で質問する。


「そうか、その尻尾を持ってると言うことはアフタレアはルナルドネスなんだな、そしてミエリはルナルドネスの生態を知らないのか」


エンロニゼがアフタレアの尻尾を見て納得するように呟く。


「エンロニゼさんは知ってるの?」


「もちろん、というかルナルドネスはストレンジフィールドじゃ繁栄している種族だから皆知っているぞ」


「へー、そうなんだ」


「で、この者たちがどのような生態をしているかと言うと彼女らは女性しかいないんだ」


「え?女性しかいないってじゃあ子供は……」


「アタシたちはある年齢に達すると他の種族の男から精液を取り込んで自分の遺伝子に書き換えて溜め込む器官が成熟するんだ、それを使って他の女を孕ませる、それ以外じゃアタシたちは身籠れないんだよ」


「ええ!?」


それを聞いたミエリの顔に驚きが溢れる。


「まあ驚くよね、男だったら年齢種族関係ないらしくて繁殖がしたくなったら(たね)目的で魔物とかでも関係なく襲うみたいだよ」


「す、すごい種族だ……」


「だから繁殖が活発になる時期や伴侶がいるヤツの中には娼婦をやるヤツもいるらしい、お互い気持ちいいから男どもからも結構ありがたがられてるぜ」


「それって恋人から怒られたりしないの?わたしだったらキレるけど」


「ん〜そんなこと言われてもこうやって生きてきたからな、それにアタシたちは男を恋愛対象としてみないし」


「え!そうなの!?」


「当たり前だろ、男とは子供作れねえんだからさ、でも中には男と恋愛するヤツもいるな、変わってるけどそれもアリなんじゃねえの?」


ミエリの目から鱗が落ちる、同性としかカップルにならず、男との恋愛は異端とされている種族……そんなものがいるという事実にミエリの固定概念が崩壊していった。


「まあこういうクソみたいな種族だからさ、ミエリもあんまり関わらない方がいいよ、こいつら女性だったら他種族でも孕ませてくるから」


「このストレンジフィールドじゃこんなものは珍しくない、あまり引くような態度はやめとけよ、とはいえ新参者はすべからく驚くんだがな」


あまりの衝撃で固まるミエリに見慣れた様子でシャラムとイサオが忠告し、気を取り直したミエリはそれを聞いて感心するように頷いた。


「へー……え?ちょっと待ってよ!今のかなり幼い子だったよ!?」


「まあ確かにな、でもアタシたちは本能で相手の繁殖能力が分かるんだ、あのガキも人畜無害そうな顔して元気一杯だぜ、アタシが並の女じゃ満足できなくなるくらい指南してやらねえとなぁ……」


そう言ってニヤリとするアフタレアの姿にミエリがドン引きする、種族の違いではなくもっと根本的な部分の問題点は流石に受け入れられるわけもなく軽蔑の眼差しを向ける。


「シャラム、やっぱりこいつはコロニーガードに突き出そう」


「ミエリも分かってくれたみたいで嬉しいよ」


「待ってくれよ!冗談に決まってるだろ!」


「冗談にしては本気の顔で子供に話しかけてたじゃん」


「うっ……」


シャラムに容赦ない詰め寄りに対し言葉を詰まらせるアフタレア、そんなやりとりの中見知った姿が前から歩いてきた。


「あっ……ミエリ、それにみなさんも……」


「あ!ビルセティ!無事だったんだね!」


ビルセティの姿を見つけたミエリはすぐに駆け寄り彼女を抱きしめる。


「ただいま戻りました、ミエリ心配かけましたね」


「彼女は……何者だ?」


今いる人数がパーティのフルメンバーだと勝手に思っていたエンロニゼがビルセティを訝しげに見る。


「この子はビルセティ、あんたと一緒にミエリが沼地で拾った子だよ」


「沼地で?いうことはこの子も解明者ということか」


「うーん、まあその……ちょっとそこらへんがややこしくてぇ〜……」


そう言ってシャラムがエンロニゼに周囲を確認したあと事情を耳打ちする。


「なんと!まだギルドも把握していない謎の種族だと!?」


驚きのあまり大声で復唱するエンロニゼの頭をアフタレアが思いっきり引っ叩いた。


「あだぁ!?」


「バカ!声がデケェよ!ギルドが把握してないどころかアタシたちが接触してることすら話してねえってのに、なんでシャラムがこっそり言ったのか分かんねえのか!」


大声で戒めるアフタレアの鳩尾に今度はシャラムが前蹴りを打ち込む。


「おごぉ!?」


「あんたも声がでかいよ、まあそんなわけだからお金の問題は気にしなくてもいいけどこういう外に出せない話もあるからさ、パーティを抜けることは出来ないとおもってね、あんたはまだ信用できないから」


「うっ……はぁ〜分かった、どうせ私も行く当てなどなかったのだ、金の心配をしなくていいならどこまでもついていこう」


軽口を叩いてパーティに加入したことを今になって後悔したのかエンロニゼが苦虫を噛み潰したような顔になるが、すぐにいつもの表情に戻って決意を口にした。


「みんなごめん、なんか話が大きくなってしまったね……」


「別にお前が謝ることじゃねえだろ、それにアタシも暇してたからな、こんな面白そうなことならいくらでも付き合うぜ」


「俺はこの人形の正体を見極めるまで手を引くつもりはない、安心しろ、もしもの時は守ってやるからな」


「みんな……」


「よし、今考えられる用事はひとまず完了したね、じゃあさっさと戻って寝よう」


そういうと今度こそ邪魔されたくないのかシャラムが翼を広げて飛び去る、どうやら我慢の限界だったようで両脇にはミエリとビルセティを抱えて他のメンバーはその場に放置している。


「あ!おい待てよ!」


「勝手な奴だな、お前たちはあんな身勝手なのと一緒にダンジョンに潜っていて大丈夫だったのか?」


「いや、普段のあいつは悪い奴じゃない、沼地の調査で心労が祟ってるだけだろう」


「だがアフタレアへの態度も辛辣だった、それに先ほど蘇生院で会話した時もどこか距離感を感じたぞ」


「別に種族の相性が悪くて喧嘩ばっかしてるだけでマジで嫌ってるわけじゃねえよ、気にすんな」


そう言ってアフタレアがエンロニゼの肩を叩く。


「でも距離感あるってのは分かるぜ、なんかアイツってアタシたちに対してどこかドライなんだよなぁ〜……まあどうでもいいか、さっさと戻ろうぜ!」


アフタレアがしばし考える素振りをするがすぐに考えを切り替えて大手を振って歩き出した、そんな姿にこれからのことを考えるのを控えたエンロニゼと黙って聞いていたイサオもついていく。


一方、シャラムに抱えられているミエリは急に凄まじいスピードの世界に放り込まれたせいで気を失いそうになっていたが、ふとビルセティがそんな彼女の頬を触手でつつき気を取り直す。


「ミエリ、大丈夫ですか?」


「ふぁ?え、あ、大丈夫……」


「急にごめんね、これくらいしないとまた道草食っちゃうんじゃないかと思ってさ」


「勝手すぎるよ……けどわたしも疲れてたからこれはこれで楽だから悪くないね」


スピードにちょっと慣れたミエリが震えながら強がりを言うとシャラムが小さく笑った。


「そうだ、ちょっとミエリに付き合って欲しいところがあるんだけど、明日大丈夫かな?」


「え?別に問題ないけど、なにがあるの?」


「それは秘密、悪いことじゃないから警戒しなくていいよ」


「分かった、その代わりビルセティも一緒でね、一人にはしたくないから」


「そ、そんなミエリ……」


沼地でスライムにダイブしたり、死体の山を作り出したりするビルセティの姿を思い出しながらミエリが提案をする、それを聞いたシャラムが微笑みビルセティは顔を赤らめている。


(あれ?なんか勘違いされてる?)


「焼けるね〜でも良いよ、それじゃ決まり!さっさと帰るよ!そろそろ重力が強くなるからね!」


「ひえ……!」


そう言ってさらにスピードを出すシャラム、その高速の世界はミエリには未知の領域でついにミエリは気を失ってしまった。

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